文:八代俊二、オートバイ編集部/写真:赤松 孝
カワサキ「Ninja ZX-10RR」インプレ・解説(八代俊二)
リニアなレスポンスで意外にも快適に走れる
スーパーバイク世界選手権で6連覇中のカワサキが、7連覇を期してモデルチェンジしたZX-10Rのレース用ホモロゲモデルがZX-10RR。今回、そのRRに試乗するチャンスに恵まれたが、サーキットでの試乗ではないので、その実力の片鱗しか味わうことができなかったことは予めお断りしておきたい。
今回の試乗車はほとんど新車の状態。アタリが出ていないせいかサスペンションの動きが固く、マシンの挙動も予想よりもシャープに感じられた。車重は同じなのに10Rよりシャープに感じられたのは、RRだけに採用されているチタンコンロッドや軽量ピストン、専用カムシャフトによりエンジンのレスポンスが鋭くなったことの効果が少しは出ているからかもしれない。
以前、SPA西浦サーキットでZX-10Rに試乗したが、最終コーナーからの加速で本当にトラクションコントロールが効いているのだろうか? と思うくらいリアタイヤが滑り続けたのに対し、条件が違うとはいえ、このRRはリアタイヤが10Rよりもしっかり路面を捉えているように感じられた。
意外だったのはライディングモード。本来アクセルコントロールが楽なはずの「ロード」モードよりも「スポーツ」モードの方がエンジン特性がフラットで安心感が強く、加速もスムーズだったのだ。
一般道ではアクセルの開け始めにエンジンが過敏に反応しない設定の「ロード」モードの方が楽に感じるはずだが、一本調子で加速を続けるような走行条件下では「スポーツ」モードの方が加速がスムーズ。「ロード」モードは低速側の反応が鈍い分、逆に低中回転域から高回転域にかけて急激に吹け上がるように感じられ、むしろピーキーに感じられてしまうのだ。
改めて言うまでもないが、このRRが本領を発揮できるステージはサーキット以外にはない。ただ、低中回転域から分厚いトルクを伴う「スポーツ」モードの方がストリートでも快適なのだ。的確にアクセルコントロールができる上級者にとって、アクセルレスポンスがリニアで、かつ唐突感のないRRは、意外にも一般道でも走りやすいのだ。
ただ、ZX‐10RRがスーパーバイク世界選手権で連覇できるか? というと、話は違ってくるだろう。ライバル達の猛追を簡単に退けられるほど、ZX-10RRに大きなアドバンテージがあるとは思えないからだ。