文:太田安治/写真:南 孝幸
アールエスタイチ「リキッドウインド」テスト&レポート
走行風+専用リキッドでライダーを冷やす「水冷」アンダーウエア
ライダーは走行風を浴びることが身体を冷やす唯一の手段だが、体温超えの熱風を浴びても涼しくはない。ウエアに水を掛けて濡らす荒技もあるが、真夏だとすぐに乾いてしまう。
これまで電動ファンを使ってウエア内を換気するタイプやペルチェ素子で部分的に冷やすアイテム、シャツとパンツに水路を設けて水や冷却ガスを循環させるシステムなどを試してきたが、電源が必要だったり、大がかり、あるいは高価で、僕個人は導入していない。
だがアールエスタイチが今シーズンに発売開始した『リキッドウインド』は、電気もガスも使わず、価格も手ごろ。興味津々で一週間ほど試用してみた。
基本的な使用手順は、❶送水チューブを専用アンダーシャツの首前後2カ所にあるループに通してエンドキャップに差し込む→❷ジョイント側のチューブを肩と脇腹にあるループに通す→❸スプレーボトルにリキッドウインドウォーターを入れてベルトで腰に固定し、スプレーボトルにチューブを接続する→❹スプレーボトルのトリガーを握って送水する、という流れ。
この上からメッシュジャケットを着ることで走行風を取り込んで気化熱による高い冷却効果が得られるのだが、別売のエアフローベストを着用すればジャケットとアンダーシャツの間に空間ができて冷却効率が上がり、色移りも防げる。
アンダーシャツを着るところからチューブのセッティング、冷却水の補給、アウタージャケットを着終えるまでを計測したところ、最初が4分半、手順を覚えた2回目が3分半、慣れた3回目は3分を切った。チューブを首のループに通すときと、ボトルへの給水に手間取るので、あらかじめシャツにチューブを通し、給水も済ませてから身に着けたほうがスムーズ。5回ほど使って手順に慣れると、面倒とは感じなくなった。
肝心の冷却性能だが、トリガーを数回握ると首元がスッと冷たくなる。さらにトリガーを引くと胸と背中が濡れる感触が伝わり、リキッドウォーターの清涼感ある香りも立ち昇ってきて鼻や喉まで涼しく感じる。
外気温32℃の日にテストしたところ、走行中の涼しさは想像以上。アールエスタイチのテストデータでは室内温度35℃、風速6m(20km/h相当)でアンダーウエアの表面温度が5.2℃も下がったという。一般道の60km/h走行中は外気温32℃とは思えない涼しさで、高速道路では寒く感じるのでは? と思ったほど。
冷却性能はアンダーシャツが濡れる面積に左右されるので、暑ければトリガーを引いて送水量を増やし、冷た過ぎれば乾くまで待てばいい。この調整がトリガーを引く回数だけで行えるのは大きなメリットだ。
推奨されていないことを承知で、水道水も試してみたが、エタノール配合リキッドウォーターのようなキリッとした清涼感はない。それでも一定の冷却効果は得られるが、一日使うとシャツとジャケットから生臭い匂いが出た。匂いの元となる雑菌の繁殖を防ぐためにも、リキッドウォーターを使うべきだ。
ハイテクではないが、使いやすくて低価格、というのが最大の魅力。炎天下でも走るライダーなら、熱中症になる前に導入すべきだと思う。
テスター・太田安治の欲張りリクエスト
首部分に送水チューブを通す際にチューブ先端がループ内に引っ掛かりやすいので、先端の形状を工夫してほしい。スプレータンク内蔵の専用メッシュジャケットがあれば見た目もスマートになりそう。
文:太田安治/写真:南 孝幸