買いたくても買えない「新車不足」
いま、新車/ユーズドともバイクの販売が大変なことになっている。折からの新型コロナウィルスの感染拡大によって、主に海外生産のバイクが、生産工場が操業停止に追い込まれたり、生産が終わっても海外運送手段が縮小し、日本になかなか入ってこない、という状況が続いているのだ。
もちろん、これはバイクに限ったことではなく、クルマも、電化製品も、パソコンもスマホもゲームも、みんな世界的「モノ不足」なのだ。
バイク&クルマも、昨年の春ごろからモノ不足がスタート。新車が不足すれば、バイクが欲しいという人はユーズドバイクにも目を向けることになる。しかし、ユーズドバイクは「以前に新車で売られていた車両」なのだから、新車販売ができなければユーズドバイクの在庫が増えなくなってしまうのだ。
しかもコロナ禍の影響で、新たにバイクが欲しい、という人が増えたから、限られたユーズドバイク在庫にたくさんの人が集まるという状況が起こっている。
今回は、そんなユーズバイクの状況を販売ショップに聞いてみた。
買いやすいユーズドバイクとは?
全国規模のユーズドバイクネットワークの中でも、バイク館SOXは、ユーザーフレンドリーを第一に考えているショップだ。コロナ禍な今の時期だけでなく、通常の時期でも、価格高騰が見られる希少人気モデルはもちろん、もっと身近な、買いやすいユーズドバイクをメインに扱っているショップなのだ。
いま、ユーズドバイク市場にあふれている価格高騰の希少車はもちろん、いわば「現役世代」のユーズドを多く取り扱うからこそ、ユーザーに信頼もされる。
「あくまでユーザー目線で、通常のユーズドバイクの販売を心がけています。特にこの1年ほどのコロナ禍の状況では、ベテラン年齢層のリターンライダーだけでなく、免許取り立てのビギナーの来店も多く、若いファンも増えている印象ですね」(SOX営業本部 商品部部長、瀬尾隆久さん)
問い合わせが多く、人気が高いのは、やはり原付ニ種や普通二輪免許枠のミドルクラス。その中でも、瀬尾さんはひとつの傾向に気づいたのだという。
「のんびり乗れるモデルの人気が再評価されていると思います。ビギナーだけでなく、リターン層のベテランのお客さんも、スーパースポーツモデルではなく、ネイキッドやアメリカンを探していらっしゃる。コロナ禍で時間ができて、のんびりバイクを楽しもう、という考えかもしれないですね」
「数年前のベストセラー」が狙い目!
瀬尾さんが言う狙い目モデルがある。それは“少し前のベストセラー”だ。
「ユーズドバイクのパターンは、新車として売れて、3年や5年が経って買い取りや下取りでユーズドバイクとして再び店頭に並ぶ、ということが多い。なので、その3年や5年前に新車としてよく出ていたモデルが、ユーズドとしてタマ数が多く、価格も安定していることが多いですね」
たとえば2016年頃に販売ランキング上位だったモデルと言えば、ニンジャ400やCB400SF、YZF-R&MT25/3といったモデル。現在のユーズドバイクの主力機種だ。それから少しさかのぼってドラッグスター400やニンジャ250あたりも人気モデルなのだという。
「こういった『少し昔』のモデルは狙い目だと思います。2010年以降ならばインジェクションモデルが多く、トラブルも少ない。うちでは販売車両に最大12カ月/距離無制限の保証をつけていますから、安心して乗り出していただけると思います」
「少し昔」という条件も1年ごとに更新されるから、この先ユーズドバイク市場に増えるモデルが見える。それが「少し前の人気もモデルが数年後の人気ユーズドバイク」ということになるのだ。
「この先しばらくは、YZF-R&MT25やセロー、Vストロームやホンダの原付ニ種なんかが増えそうですね。大型モデルものんびり系、ネイキッドの中でも、いま空冷CB1100なんかは伸びています。これも気になったらすぐに買わないと、なくなっちゃいます」
取材にお邪魔した日も、販売車両に触わって、またがって、エンジンかけてOKですよ、と声掛けするスタッフたちが目についた。普通、ユーズドバイクの店内在庫車には、触らないのが、勝手にまたがらないのがお客さんのルールやマナーだが、SOXでは「どんどんどうぞ」な姿勢。
「だって、気に入ったバイク、気になっているバイクだって、触ってみなきゃ、またがってみなきゃわからないことが多いですからね」と瀬尾さんは笑う。SOXって、そういうユーザー目線なショップなのだ。
取材・文/中村浩史