文:小松信夫
ビジネスバイクのホンダCDが、パキスタンでド派手なバイクになっていた!
前回のXV250ビラーゴの末裔である「V STAR 250」に続いて、今回取り上げる車種も「昔は日本でも売ってましたね」系のロングセラーモデルでして。ホンダのパキスタンにおける二輪車生産・販売合弁会社、アトラスホンダのラインナップの中でも、長年根強い支持を集め続けているという人気モデル「CD70」がテーマです。
トップ画像は現地で配布されてる「CD70」のカタログの中の1ページ。サングラスと髭とスカーフという、独特のファッションが目立つパキスタンの「典型的CD70ユーザー」男性が、近代的な建築と農村風景をバックにCD70の後ろに仁王立ちするという画像は、日本人の視点でもインパクト絶大です。パキスタンの公用語・ウルドゥー語で書かれた、エスニックな宣伝コピーや解説もエキゾチック!
「CD70」という車名のモデルは、日本でも2007年まで販売されてた原付ビジネスバイク「CD50」の排気量を拡大した原付二種仕様として、1970年〜1980年に存在してました。さらに排気量を拡大した「CD90」まで含め、プレス成形されたモナカ構造のスチール製バックボーンフレームに、信頼性抜群のスーパーカブ系の空冷単気筒エンジンを搭載し、フルカバーチェーン、ドラムブレーキなど、質実な装備を採用。
1960年代の香りを感じさせながら、熟成を重ねた抜群の信頼性を備える基本メカニズムで、ビジネス用途で長〜く使用されておりましたな。
2021年の今もなお絶賛発売中なパキスタンの現行「CD70」も、基本的にメカニズムはかつての国内向けCDシリーズそのままの、古典的な造り。ただし、基本的にシングルシート+キャリアを装備し、クラシカルなスタイルに地味なカラーリングだった国内向けCDに対し、「CD70」は国内向けよりも大容量の燃料タンクや、快適にタンデムするためのロングシートで、タンデムステップも装着するなど、パキスタンでの使われ方に合わせたローカライズを施されている。
スタイリングもヘッドライトを角型にしたりで、1980年代風くらいまで近代化。さらにカラーリングは、ひたすら地味だった国内向けCDとは大きく異なり、なにやら神々しい縁起の良さそうな鳥が羽ばたく姿を、今時なタッチと派手な色使いでデザイン化したグラフィックが、タンクからサイドカバーにかけてデカデカと入れられているのが特徴。
「CD70」にはバリエーションモデルとして、「CD70ドリーム」も存在する。軽快な雰囲気のビキニカウルを装着し、タンク、シート周りのデザインをより現代的でスポーティさを感じさせるものに変更するなど、スタイリングをモダンに変更したモデル。とはいえ、エンジンやフレームなどのメカニズムは「CD70」と全く同じだが。
この「CD70」のタンク後方、鳥の羽の下あたりに何やら小さく書かれているのが分かるだろうか。画像上では判読できないが、実は「Cash Deposit 70」と書かれている。そう、これが「CD70」という車名のパキスタン的な解釈(?)らしい。
英語の「Cash Deposit」を直訳すれば「現金預金」。「CD70」はとにかく信頼性が高く実用的で人気があるので、購入してしばらく乗った後でも、そこそこの価格で転売することができる、と。だから、「CD70」を買うのは預金をしているようなものだ、という意味が後から付いてきたようだ。
ご存知のように、ホンダ的にはCDという車名はビジネス向けモデルの意味で、特に意図もなくそのままパキスタン向けにも採用されたんだろうけど。もはや「CD70」人気というか、ある種の信仰に近いんだろうな。あの派手な鳥も「Cash Deposit」の神様なのかね。
文:小松信夫
ホンダ「CD70」の主なスペック
全長×全幅×全高 | 1897×751×1014mm |
車両重量 | 82kg(乾燥) |
エンジン形式 | 空冷4ストOHC2バルブ単気筒 |
総排気量 | 72cc |
ボア×ストローク | 47×41.4mm |
圧縮比 | 8.8 |
燃料タンク容量 | 8.5L |
変速機形式 | 4速リターン |
タイヤサイズ(前・後) | 2.25-17・2.50-17 |
ブレーキ形式(前・後) | ドラム・ドラム |