バイクは趣味だから、好きなものに乗るのが一番。でも、どうせ選ぶなら長く楽しめる相棒が欲しいし、同じ買うならカッコイイ方がいいし、お得な方がいい。そういう点では、ジャンルも選択肢も多い、最近のミドルクラスはハッキリ言って「狙い目」なのだ。ここではミドルクラスの魅力について考察してみよう。
文:太田安治、オートバイ編集部/写真:赤松 孝、柴田直行、南 孝幸、森 浩輔

現在の「ミドルクラス」とは?(太田安治)

画像: 現在の「ミドルクラス」とは?(太田安治)

日本の道にもライダーにも「ちょうどいい」カテゴリー

「ミドルクラス」の区分は時代によって変わってきた。大型スポーツバイクの排気量上限が750ccだった1970年代までは350cc〜550cc、1000ccが区切りになった80年代は400〜600ccあたりをミドルクラスと呼んでいたが、リッターオーバーも多い現在、欧米や日本では600〜900ccあたりがミドルクラスという認識になっている。

興味深いのは、どの時代でも「日本の交通環境下と日本人の体格にはミドルクラスがちょうどいい」とされてきたこと。70年代の350ccと現代の900ccでは比較にならない性能差があるが「ちょうどいい」という評価は40年以上経った今も変わっていない。

画像: ▲ホンダ「NC750X DCT」

▲ホンダ「NC750X DCT」

ただ、そうした評価に反してミドルクラスの販売成績は伸びなかった。免許制度の問題で、1975年に400ccを上限とする免許区分が導入されてからは400cc車が人気の中心。

1996年の免許制度改定により大型二輪免許が教習所で取得可能になると、ライダーの目は1000cc以上の逆輸入車や外国車に向いた。当時のミドルクラスのモデルが、排気量やパワー差の割に大型車との価格差が小さかったことも、その魅力をかすませる一因だった。

画像: ▲左:ホンダ「CB650R」 右:ホンダ「CBR650RR」

▲左:ホンダ「CB650R」 右:ホンダ「CBR650RR」

風向きが変わってきたのは、2016年に排ガス・騒音といった環境規制の「ユーロ4」、続いて2020年に導入された「ユーロ5」が国際基準になったあたりから。

仕向地ごとに性能や装備を変える必要がなくなってグローバルモデルが台頭し、日本や欧州のメーカーが日本を含むアジア市場にこのクラスのモデルを積極投入。コストパフォーマンスに優れたグローバルモデルを中心に、さまざまなカテゴリーに魅力的なミドルクラスのモデルが多く登場したのだ。

そうした変化に加え、ライダー側の事情も変わってきた。リッタースーパースポーツはいまや200馬力オーバーが普通で、本来の性能を引き出せるライダーと場所はごく限られ、かつてのようなスペック至上主義者も少数派になった。加えて、欧米も日本もライダーの平均年齢が高くなり、体力的な問題から大きく重い大型車を敬遠する風潮も年々高まっている。

画像: ▲ヤマハ「テネレ700」

▲ヤマハ「テネレ700」

400ccクラスのラインアップも減った現在、125や250からのステップアップを考えるライダーは、車格やパワーに不安がなく、価格も安い上モデルの選択肢も多いミドルクラスに目が向くのは当然のこと。

作る側と乗る側の事情が見事に合致したミドルクラスは「ちょうどいい」をキーワードに、これから盛り上がりそうだ。

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