文:小松信夫
日本ではホンダ製になったヤマハの50ccスクーター、海外ではいまも健在
ヤマハの国内向け50ccスクーターといえば、往年に比べてラインナップが減ったとはいえ、今でも「ジョグ」と「ビーノ」と「ギア」の3車種が存在してますよね。
一般ユーザー向けの「ジョグ」「ビーノ」は、ホンダとの歴史的な「原付一種における協業」の結果、2018年からホンダからのOEMになったのは記憶に新しいところ(業務用の「ギア」はヤマハ製のままだけど。あと電動だけど「E-ビーノ」もか)。
現行モデルではホンダ製になったとはいえ、スタイリングはヤマハ製最後のモデルのイメージを受け継いでいて、ちゃんとヤマハらしさは感じさせてますけどね。
でも、多くの人たちに長年愛されてきた「普通の人に向けた」ヤマハ50ccスクーターの歴史は終わってしまった…と、思いこんでたらですね、実はそうじゃなかったのでした。
そう、驚くべきことに海外にはまだ存在しているのです、ヤマハ最後(多分?)の50ccスクーターが。それがこの「Aerox4」と「Neo's4」の2台!(他にもあったらごめんなさい!)
ヤマハ「Aerox4」の特徴
ヨーロッパではスポーツスクーターとして名高いエアロックスシリーズの最新50cc版である「Aerox4」の特徴は、なんといってもこのスポーティといいますか、押し出しの強いスタイリング。YZF-Rシリーズ的なディテールを盛り込んでるらしいですが、もはやそういう問題ではない強烈な存在感で、とても50ccとは思えません。
足回りは前後13インチホイールにディスクブレーキ、ゴツいサスペンションとこれも本格的な造り! このあたりはエアロックスシリーズの伝統というやつでしょうか。
そしてエンジンは水冷シングル。ボア38xストローク43.5mmで排気量は49.45cc、最高出力2.2kWというんで約3PSというところだからさすがに非力だろうなぁ。ただし車重は97kgと割と軽いから、乗ってみると意外に元気なのかもしれない。ユーロ4もクリアしている。
こんな尖ったスタイリングの割に、シート下にはヘルメットが収まる収納スペースもあって、使い勝手にもちゃんと配慮されてるのが50ccスクーターらしいところ。
ヤマハ「Neo's4」の特徴
一方、ちょっと地味だけど憎めない個性的スタイルで、コンパクトで実用性重視なベーシックモデルが「Neo's4」。
エンジンは微妙にスペックは違うものの、基本的に「Aerox4」と同じ水冷単気筒で、最高出力も同じく2.2kW。ホイールサイズはちょっと小さな前後12インチで、車重もやはり軽量な95kg。
メーターは円形の液晶パネルを使用した凝ったデザインだったり、各部の仕上げもしっかりしてるなど、単に実用的なだけのモデルではない上質なコミューターだということが分かる。
ちゃんとシート下にも収納スペースはあって、もちろんヘルメットも入るような構造だ。シートも造りのいい、ゆったりとしたサイズ。ん? ゆったりしたサイズ? そう、そこが国内向け50ccスクーターと一番違うところ。ちゃんとタンデムすることを考えられたシート形状だし、しっかりしたタンデムグリップだってある。当然、タンデムステップも。もちろん「Aerox4」も同様です。
50ccの「Aerox4」と「Neo's4」が今だにヨーロッパで生き残ってるのは、結局日本と同じ理由なんですね。免許制度上、取得が用意な50ccまでのAM免許があって、ランニングコストも低いミニマムコミューターとしての50ccスクーターの需要が根強いと。でないと、この2台がヨーロッパの16もの国で販売されないよね(片方だけの販売国を含む)。それなりの台数が見込めるから、両車ともきっちり造り込まれてるという訳でしょう。
あとまあ、日本では原付キラーになってる「電動アシスト自転車」の普及が、ヨーロッパではまだそれほど進んでいない、というのが大きいんだろうなぁ。
文:小松信夫
ヤマハ「Aerox4」「Neo's4」の主なスペック
Aerox4
全長×全幅×全高 | 1870×705×1155mm |
ホイールベース | 1275mm |
シート高 | 817mm |
車両重量 | 97kg |
エンジン形式 | 水冷4ストOHC単気筒 |
総排気量 | 49.45cc |
ボア×ストローク | 38×43.5mm |
圧縮比 | 12.0 |
最高出力 | 2.2kW/7250rpm |
最大トルク | 3.3Nm/4500rpm |
燃料タンク容量 | 6L |
変速機形式 | CVT無段階変速 |
タイヤサイズ(前・後) | 120/70-13・130/60-13 |
ブレーキ形式(前・後) | φ190mmディスク・φ190mmディスク |
Neo's4
全長×全幅×全高 | 1840×663×1125mm |
ホイールベース | 1275mm |
シート高 | 790mm |
車両重量 | 95kg |
エンジン形式 | 水冷4ストOHC単気筒 |
総排気量 | 49cc |
ボア×ストローク | 38×43.6mm |
圧縮比 | 12.0 |
最高出力 | 2.2kW/7000rpm |
最大トルク | 3.15Nm/7000rpm |
燃料タンク容量 | 5.4L |
変速機形式 | CVT無段階変速 |
タイヤサイズ(前・後) | 120/70-12・130/70-12 |
ブレーキ形式(前・後) | φ190mmディスク・φ110mmドラム |