GB350シリーズを生み出したのは、どんな開発者たちなのだろうか? 伊藤真一さんがGB350の試乗後、GB350シリーズ開発者の皆さんに単刀直入にお話をうかがいました。
まとめ:宮﨑健太郎/写真:柴田直行

「期待に応える」ではなく「期待を超える!」を目指す

栁澤:結構フィンが大きいので、冷却性能的にはそんなに困っていないです。逆に高回転まで回して耐久性を確認するテストは当然ながら実施しています。

伊藤:あとGB350は、非常に燃費がいいですね。

栁澤:インドでは燃費を意識して、すぐにギアをトップに入れて走る人が多いです。それを考慮して、エンジンはトップスローでちゃんと走れるように、合わせ込んでいます。

山本:インドと日本の物価は6倍くらい違う中でガソリン価格はほぼ同じです。日本の感覚だとリッターあたり、800~900円のガソリンを入れているイメージです。コミューターに乗っている人は満タンにせず、常に1リッターくらいしか給油しなかったり。ただ開発の中で、実は燃費は目標には特に上げてないです。インドの街中で、トップスローでちゃんと走れることを目標にして、それを最優先して開発したら結果的に燃費も良くなった、というのが正直なところです。

栁澤:ギアレシオ配分も結構ワイドに振っているので、それも相まって燃費は良くなっていると思います。インドで使えれば、世界のどこでも使えるという考え方です。

山本:先ほど言った、インドの街中でトップスローで走れる…この辺の解釈が難しくて。そこに「楽しさ」を盛り込む感覚が、インドのサーベイの時はまだなかった。その失敗を経て、ゆっくり走っても「楽しい」にリンクさせることが、車体のディメンジョンを変えたことでできました。エンジンの捉え方も、当初はコミューター寄りに考えすぎていたと思います。コミューター寄りというのは、インドのお客様からすると当たり前のものなので…。

――期待に応えるではなくて、期待を超えるのが大事と?

山本:伊藤さんは先ほど「エンジンの個性が強い」という話をされていましたが、最高出力は20馬力しかないですが、トルクはきっちり出して性能を追求しようという話はエンジン担当の若狭としていました。僕も若狭も趣味で昔のバイクやクルマが好きなのですが、旧い乗り物ってエンジンに乗っている…大きい慣性がゴロンゴロン回っていて、自分の手でそれを操作している感覚があります。味を濃くしよう、と2人でよく言っていたのですが、今の技術で言えばそれはクランクの角速度に関係しているだろうと想像しました。トルクを上げることを追求すれば、低回転での蹴り出し感をきっちり出せるだろうと…。そこを徹底的に追求したので、やりたかったことは完全に表現できたな、と思ってます。

伊藤:GB350に乗ると、昔のバイクっぽさを感じましたが、それは意識しての作り込みなんですか?

山本:いや、旧車は作らない、現代のバイクを作るのがテーマです。でも最終的にできあがったGB350のディメンションやシルエットは、1969年のCB750FOURに近いものになっています。

井口:ベストなプロポーションを求め何度も評価を繰り返したら、あれ? K0と一緒だ…って感じです。

山本:GB350が結局、発売して60年以上経った今でも大事に乗ってくださっているお客さまがいるCB750FOURに近しい諸元になったのは、温故知新というか、私たちにとって、『変わらぬバイクの美しさ』を考える、大きな学びとなりました。

画像: フレーム鍛造パーツについて、アツく語り合う伊藤さんと井口さん。

フレーム鍛造パーツについて、アツく語り合う伊藤さんと井口さん。

燃焼室内のオイル経路はエンジン“外観”へのこだわりから生まれた?

GB350の空冷エンジンは、美しい外観へのこだわりがハンパない! シリンダーヘッド外側にカムシャフト支持部の加工穴が残ることを嫌い、シリンダーヘッド内にカムホルダーを設ける…という方式を採用しているのだ!

その結果、カムシャフトと燃焼室上部の間には大きめの空間が生じることになったが、その空間を冷却のために活用するという発想から、燃焼室上部全体を覆うラビリンス状のオイル通路が与えられることになったのだ。

画像: 高温になる燃焼室周辺を冷やすためのオイル通路。未採用時との比較で、約10%の温度低減効果を得ている。

高温になる燃焼室周辺を冷やすためのオイル通路。未採用時との比較で、約10%の温度低減効果を得ている。


クランクケースの構造は、モトクロッサーCRF譲り!?

外観の美しさにこだわった空冷エンジンを見せるため、背の高いロングストロークの単気筒をいかに車体に収めるか…を、GB350はトコトン追求! インドの悪路を走破するのに必要な、最低地上高を確保するためコンパクトな密閉式クランクケースを採用。この構造はそもそも、戦闘力最優先のモトクロッサー、CRFシリーズ用に考案されたものだが、その設計をベースにし、コスト的にも公道用量産車に採用できるようにデザインされている。

画像: リードバルブを介し、ピストンのポンピングでオイルをクランク室からミッション室に排出する。

リードバルブを介し、ピストンのポンピングでオイルをクランク室からミッション室に排出する。


ブロックパターンのタイヤも装着可能!? ワイドなスイングアーム

150サイズのリヤタイヤを採用するCB350Sを想定して、角断面鋼管のスイングアームは幅広に設計。GB350は部品交換によりスタンダード仕様にも、S仕様にもできる「コンパチ」になっているが、太いタイヤを履けることなどを含め、ユーザーが楽しめる「カスタム性」が高いものにもなっている。なおインド市場には、120/80-18サイズのブロックタイヤも販売しているとか…。GB350のスクランブラー仕様を作るのも、面白いかも?

画像: トルクを路面に伝えるスイングアーム。太いタイヤに対応しているのは、カスタム好きには嬉しいポイントだ。

トルクを路面に伝えるスイングアーム。太いタイヤに対応しているのは、カスタム好きには嬉しいポイントだ。

まとめ:宮﨑健太郎/写真:柴田直行

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