以下、文・写真:三橋 淳
『ゆるキャン△』『君の名は。』で一般的にも有名になった高ボッチ高原
久しぶりのソロツーリング。一人気ままにバイクに乗って出かけたのは、長野県にある高ボッチ高原だ。
ここ最近夏に訪れる大雨のせいで、いろんな場所で災害が起こって通行止めになっている。特に林道は顕著で、2年前の台風19号による被害から修復できなくなっている。
林道は山ほどある。それにプラスして、毎年の大雨で道が流れてしまい、自治体が修理を諦めてしまう林道も多い。
そりゃそうだ。林道の多くは林業のためのもの。林業で使われなくなっている場合、道だけを直すことはほぼ皆無だ。もちろん、町と町を結ぶ重要な道は工事も行われるが、手が回っていない場所も多い。埼玉県と長野県を結ぶ有名な中津川林道もいまだ通行止めとなっている。
舗装路も例外じゃない。高ボッチ高原も、2本のアプローチ道路があるが、いずれも完全舗装となる。その舗装路がこの夏は両方とも通行止めになってしまっていた。それが9月13日に、松本側からのルートだけが解除されたのだ。
これは行くしかない! なぜなら高ボッチは2つのアニメの聖地! 『君の名は。』と『ゆるキャン△』の舞台になった場所だ。
『君の名は。』では見晴らし台から見下ろす諏訪湖が、まさに劇中で隕石が落ちた場所だと噂されている。
『ゆるキャン△』では、主人公の志摩リンちゃんがスクーターでキャンプをしている。
長い歴史を持つ高ボッチ高原周辺
さて、ここからはくだらない歴史の話なので、読み飛ばしてもらっても構わない。
私の中で高ボッチ高原が登場したのは中学生の時だ。当時チャリダーだった私は、自転車雑誌でこの高ボッチ高原がサイクリストが目指す山道として、よく紹介されていたのを覚えている。だってインパクトがある名前じゃないか!
高ボッチだよ! だいだらぼっちみたいで覚えやすい名前だ。と思ったら本当にだいだらぼっちが腰をかけて休んだという伝承からついた名前というではないか。中学生が適当に連想したのもあながち間違いじゃないというわけだ。
ちなみに、だいだらぼっちとは神話に出てくる国づくりに関わる巨人のことです。
で、この高ボッチ高原。南には諏訪湖があり、日本最古のひとつといわれる諏訪大社があるほど深い歴史を持つエリアだ。
このあたりは、縄文時代から人々が暮らし、さらには古墳も数多く点在していて、昔から重要な場所だったよう。もともと諏訪湖は今の倍くらいの大きさだったようで、江戸時代の開拓によって平地が出来たんだとか。
そして松本側の盆地も、実は大きな湖があったという伝承があり、それを泉小太郎という人物が岩を退けて水を抜いたという話がある。これを裏付けるのに松本と安曇野には崎という突端を意味する地名や、船を繋いだとされる船付という地名が残されているんだという。
ちなみに、安曇野という地名は九州の豪族・安曇氏が奈良時代に移り込んで土地を開いたというのが始まりらしい。しかも安曇氏は海を渡って貿易をしていた海人だったから、大きな湖があったこの地にも馴染みやすかったのではないかともいわれている。
高ボッチ高原を挟んで南北でこんな歴史のあるふたつの土地が交差するというのもまた面白い。
ちなみに、麓にある「塩尻」の名の由来は、日本海側、太平洋側から塩が運ばれてくる終着点だから、らしい。