カワサキも「水素時代」に向け、4スト水素エンジンを研究中!

画像: カワサキも「水素時代」に向け、4スト水素エンジンを研究中!

こちらは9月2日に川崎重工が出願した、4ストロークエンジンに関する特許の図版の一部。水素ガスと燃料の混焼が可能で、クランクケース内で水素を発火させないための新しい技術が導入されています。先ほど紹介した、トヨタの水素カローラが、構造上ガソリン車とほぼ同じエンジンを積んでいる、ということを考えると、ひょっとしたら近い将来、水素を燃料としたバイク用エンジンが登場するのではないか? という期待もふくらんできますね。

カワサキは内燃機関をあきらめない!

ということで、ここでHySTRA(CO2フリー水素サプライチェーン推進機構)の事務局長も務める、川崎重工業の水素戦略本部 副部長・執行役員、西村元彦さんに素朴な疑問(私が不勉強で素朴な疑問しか出せずにすみません…)を伺ってみることにしました。

画像: 西村元彦・川崎重工業株式会社 執行役員。今回神戸の実証実験施設を見学した際、私たちに丁寧に説明してくださいました。かつてはニンジャH2の開発にも携わっていらっしゃったとか!

西村元彦・川崎重工業株式会社 執行役員。今回神戸の実証実験施設を見学した際、私たちに丁寧に説明してくださいました。かつてはニンジャH2の開発にも携わっていらっしゃったとか!

Q:「水素を使う」という点では、水素エンジンだけでなく、燃料電池など、他の選択肢もありますが、ズバリ、どれが将来残りそうなのでしょうか?

「水素エンジンやガスタービンなどの内燃機関、燃料電池など、使い方次第でそれぞれにメリットがあります。エンジンで言えば、船舶などの大型の内燃機関であれば、水素を使う上では有利です。カワサキとしましては、内燃機関をあきらめておりません」

Q:ということは、将来的にバイク向けの水素エンジンが出る可能性もあるのでしょうか?

「大型の内燃機関で培ったノウハウを活用できるようになれば、モーターサイクルなどのモビリティ向けにも使える小型の水素エンジンも可能だとは思います。ただ、大型の船舶や自動車など、液化水素のタンクを搭載できるスペースが十分に確保できる乗り物とは違って、モーターサイクルは小型ですから、航続距離に必要な分の水素をどう運ぶかというのが課題になるとは思います」

Q:バイク用に水素を使うとしたら、どんな保管・運搬方法が考えられますか?

「いまのモーターサイクル用のタンクぐらいのサイズだと、ごく少量の液化水素しか運べませんから、何か別の物質に水素を吸着させて、燃焼直前にそれを取り出せるようなシステムが必要になるのではないでしょうか」

水素は発火しやすく、保管も難しいため、現在は液化して保管するのが主流ですが、カワサキが開発した独自の水素液化システムの例だと、マイナス253度という極低温で液化させています。バイクのタンクではこの低温での管理は難しそうです。

おまけに、バイクは転倒によるタンク破損のリスクもあるので、液化水素のまま使う、というのは難しいかもしれませんが、西村さんのおっしゃるような吸着などの方法を使った、バイク用の水素燃料が実現できるかもしれません。

水素もH2、ニンジャもH2ということで、最後に、西村さんにニンジャH2開発に携わっていらした当時の思い出を振り返っていただきました。

「私が在籍していた頃は、ちょうど排ガス規制のユーロ3への対応が必要になる時期でした。かつて、CO2削減のために苦戦して、1970年代に多くのスポーツカーが大幅にパワーを落とす事態になったことがありましたが、そんなことにはしたくありませんでした。かと言って、当時のスーパースポーツはパワーを上げるのも大変で、ZX-10Rを例にとると、1PS上げるのに億単位の多大なコストが必要でした。そんなこともあって、パワーを増強しやすく、コスト面でも有利な過給器を使うのはどうだろう、というアイデアが、ニンジャH2開発の始まりだったのです」

内燃機関に情熱を持つカワサキだから、きっとエモーショナルな水素エンジン搭載のバイクを造ってくれるに違いありません。ということで、水素時代の到来を待ちながら、水素バイクを楽しみに待ちましょう!

写真提供:川崎重工、HySTRA、トヨタ自動車

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