以下レポート:三橋 淳
高崎の街から榛名湖へ、朝の1本目は杏ヶ岳林道
久しぶりのツーリングとあってか、お酒も入ったせいか、前夜は22時前には就寝して、起きたのが6時。8時間も寝ていれば睡眠バッチリなんだが、なかなか布団から出られない。そうこうしているうちに7時を過ぎてしまったので、ゆるりとベッドから這い出る。
「よーし、準備するかぁ」
部屋に広げた荷物を収納バッグに入れ、ウエアを着込んでバイクの元へと向かう。朝8時、高崎の街は通勤ラッシュを迎えていた。
お腹空いていないのでそのまま出発。人間1日2食も食べれば十分。というか日本人は本来そうだったのが江戸時代後期から1日3食になったらしい。
どうせ朝ごはんを食べようにもコンビニかファストフード店になってしまう。それらの朝食は日常生活で十分味わっているので、旅先ぐらいいいものを食べたい。だから昼飯に期待しつつ出発する。
とはいえ、人間は良くてもバイクはそうはいかないから林道入る前にガソリンを満タンにする。大体1日250km程度なら1日1回の給油で済むはずだから、朝か夕方に入れて追えば問題ないはずだ。
朝イチに向かうのは榛名山の南側にある杏ヶ岳林道。約6kmのダートを走破した後、榛名湖に抜けるルートだ。
橋を渡ったところからすぐに林道が始まる。
よく整備された道で、アップダウンも少なくとても走りやすい。展望はあまり望めないけれども、植林の中を抜けるルートは気持ちがいいものだ。
ところが! わずか2.5kmを走ったところで舗装路に!
しかも最近できたようで舗装が新しい。そんなぁと思わずため息を漏らす。気持ちいい道とはいえたった2kmかよ。寄った甲斐がないじゃないか。
しかし、それは我々ライダーの理屈だ。林道は基本林業のための道で、舗装されていた方が林業の方々には便利だろう。維持費も安いらしい。舗装するときは補助金で賄い、維持は地元が行うのが基本だと聞く。雨で道が削られてその度に重機を入れて直すことを考えれば、舗装にしたほうが自治体はコストを抑えられる。それは仕方がないことなのだ。
だから、走れるうちに走っておいた方がいい。
そう納得させながら舗装路を行くと、突然泥が一面に広がっているエリアに出くわした。またダートが始まったのか? と一瞬思ったがそうではないらしい。このエリアだけ泥が乗っかっているのだ。
その脇の細い山道をバイクが彫った轍を見つけた。どうやらそこから流れ出ているようだ。
「バイクで山を走るな」とか私はいうつもりはない。なぜならそれはその土地の持ち主がいうことであって、部外者がとやかくいう問題ではないからだ。でも一ついえるのは、こんなに泥が道路にまで出てしまうような痕をつけてしまうと、山は荒れる一方だということ。自分達の行為で自らの首を絞めるようなものだ。もう少し考えたほうがいいんじゃないのかな? とおじさんライダーは思うわけです。
秋のライディングジャケット選びは難しい
さて、榛名湖に到着だ。
寒い。標高は1100m、この週から入り込んだ寒気のせいで、長野の山の方では冠雪したらしい。そりゃ寒いわけだ。
後ろに見えるのが榛名富士。ロープウェーで山頂まで行けるようだが、今回スルーである。次の林道に向かうべくさらに北上を続ける。
榛名湖周辺の道路は道幅が広く、気持ちいいワインディングロードが続く。高度を下げるにつれ暖かくなってきた。
10月のツーリングなら冬用のウエアか3シーズンかで悩むところだが、今回は3シーズン用のウエアを着用してきた。理由は林道での動きやすさを重視したかったから。暑ければ脱げばいいし、寒ければ足せばいい。そういうレイヤリングで対応しようと考えていた。
だが、山の上が予想以上に寒かった。もしこれ以上寒くなれば、本格的に対策を考えなければいけない。
群馬県の随一ともいえるロングダート 秋鹿林道~万沢林道
次に向かうのは四万温泉周辺の林道群だ。有名な万沢林道をはじめ、秋鹿林道、高田山林道。この3本を走りたいのだが、3本の林道がT字型に並んでいるため、高田山林道はピストンせざるを得なくなるので却下。秋鹿林道と万沢林道の2本に集中して突き進むことにする。
ネットでは秋鹿大影林道と呼んでいる人もいるが、Googleマップには秋鹿林道と出てくるし、ここでは秋鹿林道で通すことにする。
秋鹿林道は万沢林道の方が有名すぎて陰に隠れてしまいがちだが、単独で13kmものダートがあり、なおかつ万沢林道合わせれば30km越えにもなる貴重なダートだ。
群馬には栗原川林道という40kmにもなるロング林道があった。あったというのは今や廃道となってしまったからだ。2019年の台風19号の影響で道が崩れてしまい、自治体は修理を断念してしまった。
にしても台風19号の爪痕は恐ろしい。千葉の林道をはじめ、埼玉の有名林道群も全滅。林道が少なくなったという昨今、とどめを刺したのが2019年の台風19号だと言ってもいい。
それでもまだこうして走れる林道があることを、今は喜ぼうではないか。
その秋鹿林道入り口、手前の車寄せの広場で、5台くらいほどのバイクが集結していた。ビッグオフから250ccのオフロードバイクまでさまざまだが、皆タイヤの空気圧を調整しているようだ。きっと私と同じで秋鹿林道に行くのだろう。
ちなみに私は林道に行ったからといって空気圧調整はしない。その辺は以前のコラムで書いているので、そちらをご覧いただきたい。
集落の細い道を言ったらそのままダートになるという、なんとも目立たない入り口だこと! こりゃ分からないよね。しかし道はすこぶるフラットで気持ちがいい。
するといきなり分岐。なんの標識もないので真っ直ぐを選ぶが、次に出てきた標識は真っ直ぐがキャンプ場。左に地名が書いてある。ならば左でしょうと曲ってみると、舗装路に。ん? と止まっているとさっきの集団が真っ直ぐの方へと駆け抜けていく。
あっちかよー。Uターンして戻る。
徐々に山の奥へと入っていくと、道がじわじわと荒れ出してきた。こりゃアドベンチャーバイクだと初心者は手こずるか? と言う感じ。オフロードバイクならなんてことはないが、四輪の乗用車だと下回りを気にするくらいの荒れ具合だ。
写真では分かりにくいが、石が結構出ている。それでも荒れ具合がちょうどいいので、楽しくなってくるのも事実。ところどころに残るフラット林道とのリズミカルなセクションは、走っていて飽きない。
先ほどの集団が休憩していた。軽く会釈して先を急ぐ。「あれ、先に行ってたんじゃないの? なんで後から来るの?」といったリアクション。すみません道間違えました。
ちなみに、こちらの集団とは撮影の間に抜いたり抜かれたりとしばらくご近所付き合いすることになる。向こうは私のことを何しているんだろうと思うだろうね。1人で来て、道端で止まったり、走りだしたりを繰り返すんだから。
大きく登りはなく、一気に標高を稼ぐ道ではない。谷間を沿うように走り続ける。展望は開けず、いい景色は拝めない。ただちょい荒れ林道を延々走るだけなのだ。あくまでダートの距離合わせ。そういう意味では人気がないのも頷ける。一応、霧峠を越えるのだが、特徴がないので通り過ぎてしまった。でもオフロードの凸凹走行にハマってしまったライダーにはこれはこれで楽しいだろう。私も嫌いじゃない。
そして標識も何もない、素気のない分岐に到着する。こりゃ知ってる人しか分からんわ。でもそれがいい。とはいえ休日にもなればライダーはいっぱいくるのだろう。なにせ万沢林道とセット。実際先のツーリンググループも万沢林道に向けて走り去っていった。
それにしても彼らはとてもマナーがよかった。バイクを停めるときは必ず他の通行の邪魔にならない広いエリアを選んでいた。林道でも一般道でも。さすがだなぁと思う。
さて万沢林道は秋鹿林道出口から数キロ走ったところから始まる。
しかし、その入り口にはなんと工事通行止めの看板が! なんてこった! どうする!?
レポート:三橋 淳