以下レポート:三橋 淳
万沢ストレートを目指す
群馬県において有名な林道のひとつ、万沢林道。その理由は超フラットダートのロングストレートの存在だ。1kmにもおよぶストレートがあるのというのだから、そりゃ走ってみたくもなる。総距離は20km以上らしい。
〈この先通行止め〉
満を持して到達した万沢林道の入り口には、無情にも工事中の看板が鎮座していた。万沢林道を抜けられないのは非常に辛い。遠回りしなければならない上にダートの距離が稼げなくなってしまう。
しかし、看板にはこうも書いてあった。
〈白砂川大橋で通行止め〉
この橋までは走行できるのか。通行できるかどうかは分からないけれど、もしかしたら工事していなくて渡れるかもしれない。というのも、秋鹿林道で先行していたグループもこの林道を走っているはずで、彼らが戻ってきている気配はない。
希望的観測を胸に、万沢林道へと入っていった。
ちなみに、林道起点となるところにはダートの分岐があって、一瞬そっちかな? と勘違いしやすい。巧妙なトラップが仕掛けられている。正解は真っ直ぐの舗装路。私もそのトラップに引っかかってしまった。
この林道も、先ほどまで走っていた秋鹿林道と同じように、やや荒れ気味の森の中を抜けていく。木漏れ日が気持ちいい。
しかし、内心はそれどころじゃない。白砂川大橋ってどこにあるのよ? すぐ近くで通行止めになっていれば引き返すのも楽だが、行だけ行って通行止めは悲しすぎる。工事が中断していて通行できたらラッキーだが、ダメなら戻らなければならない。
そうこうしていると路面は舗装路になり、これが7km近くも続く。20km越えのダートってこの舗装路も入っての話なのか? となれば実質15km程度ということか。それでも十分な長さではあるのだけれど。
なんて思っていたら、秋鹿林道で何度もランデブーしたオフロードバイクの集団が前からやってきた。ということは、やっぱり通行止めなのか!?
しかもこんなに奥に行ってから出会うなんて、タイミングが悪い。どうせならもっと手前で出会えればUターンする距離も少なくて済むのに。なんて思いながら慌てて手を振って彼らに止まってもらった。
「この先の橋で工事中なんですけど、今は通れますね」
なんてラッキーなんだ! つまり万沢林道完抜けできる。ヤッホーと心の中で叫びながら彼らにお礼を伝えて前へと進む。するとどうだ、工事が中断していて、白砂川大橋が渡れるじゃないか!
もちろん、工事が行われていたら通れなかったわけで、今回は本当にラッキーだった。2日目にして「この旅はいいリズムでいけるんじゃないの?」と思う。テンションアゲアゲだ。
工事現場を抜けると、ダートだが道幅が広くなり、路面も恐ろしくフラットに。これぞ正真正銘のフラット林道、という道だ。いくつかのカーブを抜けると、まっすぐ伸びる道が現れた。
これが「万沢ストレート」と呼ばれる道だ。
確かにストレートが長い! これは貴重な林道だ。記念写真を撮る。
北海道にでも行けば林道ダートのストレートを堪能することができる。しかしここは関東。人気が出るのも頷ける。幅が広いのもいい。トラック同士がすれ違えるほどの道幅だ。
と思っていたら、実際にトラックがよく通るようだ。トラックが踏み固めるからこんなに路面がフラットなのか。納得。
万沢ストレートを抜けると、すぐに舗装路に出た。
万沢林道を走破しようとすると初心者には手厳しいかもしれないが、万沢ストレートだけなら野反湖方面から入ればすぐだ。だからみんな来るんだね。逆にいえば路面も多少荒れているし、通行止めの時期も多いから、完抜けはある意味貴重な体験なのかもしれない。
壮観! 草津温泉の湯畑
ここで悩む。時間はまだ昼過ぎだ。ここからすぐ近くに日本一の温泉自然湧出量を誇る草津温泉がある。一泊したい。でも、まだ昼過ぎ。宿に入ろうにもチェックインできる時間じゃない。
そう思いつつ訪れた草津温泉は、やっぱりすごかった。湯畑は壮観だ。轟々と湯気やしぶきを上げて流れ落ちるお湯!
涙をのんで次に駒を進めることにする。あー草津温泉、生きていたらまた来るぞ!
しかし、温泉街を後にしてからはたと気がついた。ダカール・ラリーの時って早いステージだとこのぐらいには走り終わってビバークに着く日もあったよな。そもそも近代ダカールで暗くなるまで走るなんて、そうあるもんじゃない。
そんな甘いささやきに気がついてしまったものの、すでに温泉街を出てしまったし、次を走り切るぞと言う覚悟を決めてしまったのでもう後には引けない。一度決めたらもうそこに後悔はないのだ。この選択、かっこいいだろ? と1人で悦に入る。ソロツーリングだからそれでいいのだ。
さて、草津温泉からは南下して目指すは浅間山にある絶景の「湯の丸高峰林道」。あの山の向こうに林道があるんだ!
あ、昼飯食べてないや。
レポート:三橋 淳