文:松下尚司・時々、井上&佐々木/写真:井上演・時々、松下&佐々木
※この記事は月刊『オートバイ』2021年11月号 特別付録「RIDE」に掲載した記事を再編集しています。
走りに行けたら…じゃなくて、走りに行くよ!
「今度さ、3人でツーリングに行きたいよね~」
仕事で顔を合わす度、口癖のように言っていたセリフ。もう、ここまでくると社交辞令なんじゃないのってくらいお互いに言っていたと思う。でも、断られてしまう(断ってしまう)のは、自分のバイクは今カスタム中でまだ乗れる状態じゃないことが理由の大半を占める。だから、
「行きましょう! 松下さんの(俺の)バイクが出来上がったら!!」
って言葉が続くのも、もはやお決まりのことだった。
軽い気持ちでスタートしたカスタム部の連載は、この号で10回目だから、そろそろ1年になる。完成時期は決めてなかったけれど、春には乗れるかな…、夏には乗れるかな…、秋には……あれ? もしかして、今年もツーリングには行けないってこと?
いや、それは駄目でしょ! こちとらバイク雑誌の編集なんだから。バイクに乗らないで何が出来るってんだい! 決めた! 行く! もう行くために企画だって考えちゃうもんね! そして、いつもの二人に声をかけた。
「3人でツーリング行くよ! いつ空いてる?」
方角だけ決めてひとまず疾走ってみる
この日は、朝から雨が降るかも降らないかもと、天気予報ですら迷っているような天気。暑すぎないから夏の終わりとしては、ある意味、まぁまぁのツーリング日和かも。
ただ、行こうと思っていた目的地の方面は降水確率が上がっていたので、あえて行くことはないねと計画変更。この時点では本当に目的地はまっさらな状態になってしまったが、天気が大丈夫そうな方角へ向かうことは決まってる。
結局、東京からスタートするとある程度の距離を走らせないと何もありゃしないので、高速道路を走らせることになる。つまり、ある程度ルートは決まってくるわけだ。今回はその選択肢の中から関越道を使うことにした。
途中の上里SAで休憩を取り、本格的に向かう方面を決める。SR乗りの井上さんはたばこを定期的に吸わないと、もっと丸くなっちゃう呪いにかかっているので、休憩はゆっくりめ。すきあらば2本3本と連続でたばこに火をつける、高額スモーキング納税者なのである。
「で、お昼は何食べます?」
と、朝ごはんのパンを食べながら井上さんが言ってくる。パンを食べながら、次のたばこを吸う準備をして、昼ごはんの相談をする。なんて忙しい人だ。
「さっきの話でもう口がすき焼きなんですよ~」
さっきの話というは、優太がサシの入った上等なお肉はあまり食べられないという「胃がおじさん」だ話。話の主軸とはズレるが、すき焼きが話に出てきたのだ。
「じゃあ、肉を求めて行きますか」
と、軽井沢方面に行くことにした。長野にはりんごを食べさせて育てる信州牛が有名だからだ。
そこから再び高速を走らせて軽井沢へと向かう。さすがに標高が高くなってくると、空気も冷たくなってきた。夏の暑さから逃げるように避暑地にツーリングで来るなんて、自分も大人になったもんだ。
高速を降りると気持ち良く走れそうなワインディングに入る。ところが、それまで何でもなかった優太が遅れるようになった。
スポーツスターの車高が低いために、スピードに合わせて曲がろうとすると擦ってしまうらしい。そうなると走っていても楽しくないんじゃないかと心配したが、
「確かにXSRで来たかったわ~と思いましたけど、このスポーツスターは真っ直ぐ走ってるだけで楽しいから良いんですよ」だそうだ。