文:小松信夫
北米向け2022年モデルも登場、南北アメリカ大陸を制覇!?
ホンダのちょっと変わったスクーターとして、知る人ぞ知る存在であるナビ。インドで生産されているコンパクトなスクーターなんですが…ご覧のように、足をフロアボードに下ろして「座る」スクータースタイルではなく、シートに「跨る」スポーツバイクのようなライディングポジションが特徴。
で、そのニーグリップをするためのタンク部とか、ヘッドライト周りとかに、初代グロム風のデザインを採用している。そのことでも分かるように、軽量コンパクトでお手軽に楽しめる、グロムの弟分的なオートマチック・ファンバイクという位置付け。この構造だとタンクの下、本来ならフロアボードである部分がデッドスペースになるのを、荷物の収納に使えるストレージボックスにしてます。
ちょっと世代の古い空冷109.2cc単気筒エンジンでパワーもそれなり、ブレーキも前後ドラムだけど、その分価格も抑えられてる。かつてのスズキ・ストリートマジックも似たようなロードスポーツ風スクーターだったけど、ナビはコンセプトもスタイルも価格も、もう少し親しみやすい雰囲気。
ところでナビは、2022年モデルで新たにアメリカやカナダでも発売開始(日本ではたまに並行輸入車を見かけるくらい)。というかインドとその周辺諸国以上に、なぜだか知らないけど中南米でえらく人気なんですよ、そもそもが。そしてついにアメリカ上陸で南北アメリカ大陸を制覇! ということらしい。でね、ナビを売ってる中南米諸国の中でも、一部の国ではスタンダードモデルに加えて、新たな要素をちょい足ししたバリエーションモデルまで用意されてるのも興味深いところで。
その代表が、コロンビアやチリなどで販売されてるナビ・アドベンチャー! ヘッドライトガード、ハンドガード、エンジンガード、アンダーガード、ミニスクリーン、リアキャリアを装着。専用のグラフィック入りカラーやツートーンシートも組み合わせて、ナビの小さなボディを頑張ってアドベンチャー風に仕上げてます。これが結構凝ってて、完成度高いんだよね。
同じような仕様のモデルはメキシコでも販売されてるみたいで、こちらはスタンダードのソリッドカラーがベースだったり。
そうかと思えば、こういうポップなグラフィックもあったりして。さらに、装備的には似たような感じなんだけど、スクリーンがもっとショートになってるナビ・トラベルとか、他にも何だかいろいろあるみたい。各国の現地法人のホームページを見てても説明不足で、正直その全貌がよく分かりませんな。
そもそも、ナビはスタンダードモデルのカラーバリエーションからして豊富なのが、いろんな意味でゆるい、独特なキャラクターに合ってるのですよ。仕向地とか年式によってもラインナップは違うんだろうけど、まあ、なんとも目に鮮やかな色をチョイスすること。
最新のアメリカ向けモデルでもこの通り、グラスホッパーグリーン、レッド、レンジャーグリーン、ナットブラウンの4色が揃うんだから。
スペックやメカニズムが特に凄いわけではないナビ。しかし、グロム風のユニークなスタイルとスクーター的な扱いやすさ、優れた実用性や経済性を兼ね備えていることと、そしてなにより全体を貫く遊び心にあふれたコンセプトが、根強く支持されるポイントなんでしょうかねぇ。
それでも、異常なほど中南米で支持されてる理由はよく分からんです。ラテン気質に合うのかね、コレ? 価格の問題っていうのはあるとは思うけど…アメリカで1807ドルだから約20万円、これは確かに今時安いもんね。
文:小松信夫
ホンダ「ナビ」(アメリカ仕様)の主なスペック
全長×全幅×全高 | 1806×739×1044mm |
ホイールベース | 1285mm |
シート高 | 764mm |
車両重量 | 107kg |
エンジン形式 | 空冷4ストOHC2バルブ単気筒 |
総排気量 | 109.2cc |
ボア×ストローク | 55×55.6mm |
圧縮比 | 9.5 |
燃料タンク容量 | 3.4L |
変速機形式 | CVT |
キャスター角 | 27.5° |
トレール | 82mm |
タイヤサイズ(前・後) | 90/90-12・90/100-10 |
ブレーキ形式(前・後) | ドラム・ドラム |
※インチ・ガロンなどの単位を編集部により換算済 |