以下レポート:三橋 淳
ここは廃道か? ビギナーにはおすすめできない四阿屋林道
しばらく舗装路を走って辿り着いたのは、これもまたほとんど知られていない名も無き林道。違った、名前はあるのだ。
四阿屋林道という立派な名前が。四阿屋と書いて「あずまや」と読む。四阿屋山の西側をぐるりと回る林道だから、そういう名前がついたのだろう。しかし、これ、ネットで検索すると「ほとんど舗装路」とでてくる。それはこの林道が途中の集落で2つに分断されているから。みんなだいたい南側からアプローチするので、すぐ舗装路になって集落にでてお終い、と思うのだろう。いやいや違うのだね。この林道のメインは北側の方なのだ。
北側からのアプローチは目印がないのでわかりにくい。そして、いきなりゲートが出てくる。といっても鹿よけゲート。畑を動物に荒らされないようにするために柵を作っているのだ。だから開けたら当然閉める。これを怠るととんでもないことになる。
その昔、オーストラリアで行われていたラリーでは、競技中に牧場内を通るので、競技者がいちいちゲートを開け閉めしなければならなかった。1分1秒を争っている競技中にゲート開閉なんてストレス以外の何物でもない。で、パリダカで有名なライダーが参戦したものの、そんな面倒なことやってられるか! と無視して走ってペナルティもらうのだが、それを不服として途中で帰ってしまった。そんなエピソードがあったような。
鹿ゲートは出入りOKなのだが、この林道は入った途端に入山禁止の看板がオンパレード。「え、入っちゃいけないの?」と一瞬たじろぐが、そういうことじゃない。
この山は松茸の山だったのだ。つまり松茸泥棒がいっぱいくるのだろう。松茸よりも林道が楽しみな私たちには関係ない。実際ゲート内で作業している林業の方とすれ違ったが、何も言われなかった。
ようは道から外れなければいいのだ。ここでは道を外れる事すなわち人の道を外れることと同義語と考えよう。でないと大変なことになる。
入山禁止の看板は新しいのから古いのまでたくさんあった。
さて、そんな林道だが道を走る分には問題ない。ここからいざ林道へと突き進む。最初はフラットだが、だんだん草が増えてきて、手入れされていない感が満載な道へと変貌する。
一応4輪の轍があるので走りやすいが、それにしても雑草がすごい。道は山をぐるりと回り込む感じなのでアップダウンは少なく、適度に気持ちの良いコーナーが続く。
生活道路として使われているわけではないし、林業としての重要度も下がっているのだろう。山も荒れ放題だ。そんな荒涼とした林道ではあるが、看板があるのできちんとした林道だということは確認できる。
途中遭遇する切り通しの壁が、ひとつのアクセントというかハイライトだ。
考えてみればこういう道の作り方は舗装路含めると当たり前にあちこちあるのだけれど、林道だと一瞬オーって思う。その壁にコンクリートなど何の施工もされていないからかな? 大地が剥き出しだと自然を感じる。削っているのだから自然じゃないんだけどね。
さて、荒れている道を進んでいくと、目の前に看板が。え、ここまで来て通行止め? と思ったが、落石注意の看板だ。「今さらですか!?」と1人ツッコミしてしまう。
今までだってかなり荒れてたよ。今さら通行注意っていわれてもねぇ。と思いながら100mほど進むと、道に石が鎮座していた。
石というより岩だね。バイクならなんてことないけれど、車じゃ大変だ。軽トラやジムニーならなんとか行けるだろうけれど、ランクルクラスだと石をどけないと無理じゃないかなぁ。なるほど。確かに落石注意だわ。
こういう時はバイクの機動力がものをいうよね。意気揚々と走り抜けるが、今度は倒木に行く手を阻まれてしまった! これはアドベンチャーバイクだと、ちと厳しい。
軽量オフロードバイクならひょいとフロントタイヤを浮かせてしまえばなんて事なくクリアできるのだが、私のアフリカツインはDCT。クラッチレバーがないのでクラッチ操作でフロントを浮かせることができない。かといって根っこから倒れている木はとても人力で退かせられる状態ではない。困ったなぁ。
しかし、元ダカールライダーとしての自負がある! ここは華麗にクリアしてやるぜ! うりゃ!
どうよ越えたよ。大したもんだろ? まだまだ捨てたもんじゃないぜ。
なんていっているけれど、これテクニックでフロントタイヤを浮かせたわけではない。タネがある。実は、アプローチ側の木の前に石をたくさん積んでスロープを作ったのだ。腕ではなく土木作業のおかげでこの難所をクリアできたというわけ。
いいんだよ、越えさえすれば! そうすれば先に進めるんだから。前進か撤退か、それが一番大きな違いなんだ。方法なんてどうだっていいのだ。
そんな荒れ放題の林道は7km進むと舗装路になった。見晴らしがいいのはこのポイントだけ。
反対側にもしっかり獣避けゲートがあるので、通り抜けたらしっかり閉める。
四阿屋林道はまだまだ続いているのだが、この先はほとんど舗装路なのでパス。ここからは四阿屋林道と並行する大洞林道を目指す。
朝から何も食べていない昼時。お腹がすいた。国道にいったん降りたものの、さして目につくお店もなし。不本意ながらコンビニで立ち食いである。本当はコンビニは使いたくなかった。非日常を求めて旅をしているのに、全国どこ行っても変わらないコンビニで食事をするのは避けたかったのだ。
しかし背に腹は変えられない。あくまでエマージェンシー。緊急ピットインだ。仕方ない。塩おむすびを食べて、再び山を目指す。
レポート:三橋 淳