以下レポート:三橋 淳
大洞林道の罠、フラットダートかと思いきや……
まるで廃道のような四阿屋林道を抜け、コンビニで腹ごしらえも完了。目指すは大洞林道だ。この林道は四阿屋林道の北側部分と平行に走っている道で、四阿屋・大洞は2本セットで走るのが定番だ。
林道の名前と注意事項の看板があると、リーガルな道だと判断できてホッとする。でも無謀な運転は厳禁。クローズドサーキットではないからね。みんなが通る道だから、のんびりと安全に抜けたい。
さして長い林道ではないのだけれど、フラットで走りやすい。それも適度な上り坂なもんだから、アフリカツインだと気持ちいいったらありゃしない! というのもアドベンチャーバイクがダートで走る時のネガティブイメージは、フロントタイヤが滑って転ぶことだ。フロントタイヤの接地圧の依存度が下がる上り坂だとその心配がないので、気持ちよく走れる。
道幅も広いしよく整備されている。本当に気持ちがいい道だ。
ところが、上りきって道が平坦になると、途端に荒れてきた。大洞林道、お前もか! と思わず声を上げる。
走れないことはないよ。でも草が増えてきてそれに乗ると滑って怖いのなんのって。慎重に転かさないように走り抜ける。
そういえば撮影途中で見つけた石の断面がこんな感じだった。これって何? 化石? ただの模様? 詳しい人教えてください。
約8kmのダートを抜けるとそこはトンネルの入り口だった。
トンネル方向に進むと松本。手前側に行くと四阿屋林道へと戻る。狭いエリアをぐるっと回ってきた感じだ。
ちなみにこの林道にはこんな看板も立っている。
巷では新型コロナウイルスで話題は持ちきりだが、ウイルスはいろんなところにいろんな種類のものがある。特に野生動物との接触は病原菌の観点からいうとリスクが高い。この案件は猪なので近づく人は少ないだろうが、「キツネかわいい!」とか「リスかわいい!」とか言って安易に触らないようにしたい。
秋のウエア選びは難しい、イオンとコメリで装備を整える
さて、ここまで来てどうにも我慢できなくなってきた。気温だ。完全に山をなめていた。10月ならスリーシーズン用のウエアで十分だったのだが、さすがに山上はきつい。
それでも林道を走っていればちょうどいいのだが、ここから先は不安だ。予定では、安曇野を抜け、アルプスの林道を走破したら、安房峠を抜けて岐阜入りする。標高1790mの安房峠は間違いなく寒い。
そこで、安曇野のイオンでインナーを買い足して万全を期す。バイク用ウエアで2階の洋服売り場に上がるのは恥ずかしいが、背に腹は変えられない。
そういうことを気にしないでできちゃうようになるのが、オヤジの始まりなんだろうか? その昔、オフロードバイクウエアのまま飛行機に乗った人を見たことがあるが、さすがにそれはできないなぁ。まだ修行が足りないのか?
そもそもバイクウエアはバイクに乗っている、もしくはバイクと一緒にいる状態なら市民権を得ているだろうが、その格好でバイクと無縁な場所に行ってしまうと、途端に目立つ。
さて、次は安曇野の西側にある約3kmの大野沢林道へと向かう。ここはあづみの公園からアプローチするメジャーな林道だが、林道ツーリングでメジャーになっているわけではない。登山のアプローチ道として有名だのだ。そのため乗用車が行き交うので要注意だ。
でも乗用車が走れるということはフラット林道だということ。車高の低い車は通行止めと書いてあるけれど、それはスポーツカー的な意味であって、普通車なら全く問題ない。
予想していた通りやっぱりフラットで気持ちがいい! 3km程度なのであっという間に終わってしまった。
しかし! その後に続く舗装路をつないでいくと、もう一本林道があるのだ。これをつないでいけば距離的にも十分だし、何しろ安房峠に抜けるには、いいアプローチラインになる。この辺りの組み立てに抜かりはない。ざわざわ3kmのためにここまで寄ったりしないのだ。
が! しかしその林道が通行止め!
なんということだ! 実はこの林道の名前は知らない。黒沢の滝方面に抜けることだけはわかっていたし、春までは通行できたことをネットで確認していたのだが、まさか土砂崩れで通行止めとは。今大会2度目のSSキャンセルを食らってしまった。あー無念。
仕方なく舗装路に降りる。安房峠に繋がる国道158号線へと向かうため、アルプスサラダ街道なるのどかな道を走行する。
すると悲劇は再びやってきた。
雨である。
このシリーズの準備編から読んでいただいている読者の皆さんならお分かりだろうが、ワタクシ、レインスーツ持ってないのです。
荷物になるし雨の中走るのは嫌だから、雨降ったら宿に逃げ込めばいいじゃん! そう考えていたので、携行していない。
そのプランで行けば、ここで急きょ予定を変更し、松本あたりに宿を取れば難を逃れるのだが、これがまたタイミング悪いことにどうしても夕方までに岐阜に入らなければならない。
今夜の宿を奥飛騨温泉に予約してしまっているのだ。
宿は林道を走り終わってから決める……当初そんなルールを自分の中で定めていた。
しかし、そのルールだと温泉宿に泊まれない!
夕方日が暮れてから宿の手配をしても、夕飯や朝食が付かない。そもそも予約が取れない。それに今日は金曜の夜なのです。
だからどうしてもいい温泉宿に泊まりたくてフライングしたというわけ。もうひとつ決めていたルールがある。それは「自分のルールには縛られない」ということ。臨機応変こそが旅の醍醐味なのだ。これでいいんです。
本当は名湯の白骨温泉に泊まりたかった。何しろ草津温泉をスルーしているだけに、いい温泉に泊まりたくもなるだろう? ところが探してもどこも満室! ええい、俺も大人だ。限度額の上限を撤廃して検索してやる! と試みるもそれでもゼロ。なんだよ~(もし見つかっても高額すぎて諦めていただろうけど)。
泣く泣く白骨温泉を諦めて、山向こうの平湯温泉を探したけれど、ここも同じで全くない。で、奥飛騨温泉の新平湯温泉に1軒食事付きで確保できたのだ。その値段1万6000円。
決して安くないが、温泉入って2食付きなら、昨夜の別府温泉の宿よりは安かろう。
というわけで宿を取った手前、どうしても奥飛騨温泉に行かねばならぬのだ。それも標高の高い安房トンネルを抜けていく。雨なんかに当たった日には風邪ひいてしまうよ。
そこで急きょコメリに飛び込んでカッパ買いました。ここではレインスーツと言いません。あくまでカッパです。
合羽。3000円なり。痛い出費である。しかしそのカッパはまさに命綱となった。雨は雨脚を強め、みるみる土砂降りに。
CRF1100Lアフリカツインの場合、走ってさえいれば足はほとんど濡れない。タンク形状がいい具合にガードしてくれるからだろう。上半身はさすがに無理だが、小雨程度ならタンクに伏せて走ればそんなに濡れなくて済む。私のはオプションのロングシールドをつけているから。アドベンチャースポーツならさらに濡れないだろう。だからカッパいらないかなとも思ったのだ。
が、しかし! この国道は交通量が多くてノロノロ運転の箇所があり、さらに小雨なんかじゃ済まない土砂降りに見舞われたので、結果的にカッパを買って正解だったな。と胸を撫で下ろした。