以下レポート:三橋 淳
「1週間林道ツーリング」最終日にして最難関
その林道は頂上付近から京都の街を見下ろせるというから、最終林道にふさわしいではないか。ちょうど時間的にも夕焼けに染まる京の都が見られるかもしれない。
そうしてたどり着いた林道の北側。これを南下すれば最後だ。
とはいえ分岐が3つ。一番左は何かの施設っぽいので違うだろうから、真ん中の道をチョイス。
するとどうだ。すぐに道はダートになった。ほら、こういう分岐を選ぶ嗅覚は俺にはあるんだよ。なんて自信満々に進んでいく。
こちらも道はフラットで、よく整備されていて走りやすい。ネットでは道が崩れていて通行止めという情報も見かけたが、これは取り越し苦労だな。気持ちよく最後の林道を締めくくるか!
森の木々は手入れがされていた。この林道は林業の道として、現役なことが分かる。
沢沿いに道が伸びていく。苔の具合と水と光の具合がなんとも美しい。京都っぽくなってきたじゃないか!
進んでいくと再び分岐が現れた。これがどちらか分かりにくい。ひとまず左手を選ぶが、すぐいったところで道が崩れていて、通行止めとなった。
こりゃ違うな。というわけで右の道をチョイスして先を急ぐ。
しばらくすると道の様子がだんだんと怪しくなってくる。じわじわと道幅が狭くなり、うっそうとした感じが増してくるのだ。
そして突然現れた倒木!
やっぱりネット情報で荒れているという噂は本当だったのか。でもなんのなんの。この程度の倒木ならば下をくぐれば通過できるから、大したことないわ。
ところが倒木は1本だけではなかった。次に現れたのは、下をくぐるにもスペースが足りない。バイクでリンボーダンスをするかのように倒して進まなければならない。
この程度では負けん! 何しろゴールはもうすぐなのだ。こんな倒木程度で諦めてなるものか。
しかし、今度は道が完全に流されてしまっている!
道だったであろうその痕跡はかろうじてあるものの、見事に洗い流して岩と岩盤が剥き出しになっている。それだけではなく、道の下にあった土管までもが露出している。
こ、これは、いける、のか?
昔取った杵柄が疼き出す。現役のラリーストだった頃はこの程度の道は何度も走ったし、行けるはず。というまさに昔の栄光にすがった栄光のライディングイメージだけが浮き上がり、今の自分の実力との違いを忘れた思考回路に支配されてしまう。
こうなるともう止まらない。
やってやるぜ! とアフリカツインと一緒に走り出す。なんのなんの、これくらいクリアしてみせるぜ!
調子に乗って登り始めたものの、リアタイヤが土管のへりに捉まりスリップダウン。ガシャーンと大きな音を立ててアフリカツインの巨体が横たわる。
あああ、オレのアフリカツインがぁ~。
岩剥き出しの路面での転倒はよろしくない。急いでバイクを引き起こして、破損状況を確認する。
ZETA製ハンドガードが傷ついてしまった。だがそのおかげでサイドパネルはほぼ無傷。よかった。
そして自慢のアンダーガードも仕事をしてくれた。少し捲れてしまったが、この程度なら叩けばすぐに直る。問題ない。転んだ場所を考えればダメージは軽微だ。
ホッと胸を撫で下ろす。
くそーこうなったらタイヤの空気を抜いて本気モードで走ってやる!
ん? タイヤの空気を抜く? ここでふと我に帰る。
最後の林道だということと、だんだん険しくなる林道に我を忘れて戦闘モードになっていたのだ。
「これはもはや林道どころか、道にあらず!」
無理せず、勇気ある撤退だ!
レポート:三橋 淳