以下、レポート:三橋淳
旅の最終日に気づかされた大切なこと
荒れ果てた道に苦戦を強いられ汗だくになった。体を冷やすことでようやく頭も冷静さを取り戻した。
「空気圧を下げれば登れるかも……」なんて考えた自分は間違っていた。
指定空気圧から下げなければ走れないような場所は、道じゃない。自分でもそういった内容の記事を幾度も書いてきた。何をやっているんだ、俺は。
ここは諦めて撤退する。
そうは言っても、こんな荒れた場所では方向転換するのも難儀だ。一度転んでいるだけに、慎重にバイクを押して向きを変える。
ウエアを脱ぐと体から蒸気が昇り立った。バイクは押すもんじゃなく乗るもんだね。こういう場面では心底思う。
無事にUターンはできた。呼吸が落ち着いたところで今来た道を引き返す。「あと少しで抜けられるはず」と思い、いくつもの難所を越えてきた。頑張った分がそのまま裏目の結果となる。
つまり、そういう道には安易に入り込まない方がいい。戻ってくるのに苦労するし、最悪は戻れなくなる場合もある。
そう考えると、私がこの道を登るという判断をしたことが、どれだけ間違っていたかがよくわかる。この旅の最終日、最後の林道ということから、テンションが上がったのだろう。いかんいかん。
こういう判断ミスが事故を起こすのだ。気をつけなければ。
苦労して舗装路まで出てきてホッとした。無事生還。危ないところだった。
でも待てよ。ここ、一番右側の道をなぜ選ばなかったんだろう? もしかしてこっちが正解だったんじゃないのか?
ダメ元で行ってみよう。今度は無茶はしない。ダメならすぐに引き返す。
最後の林道、京都市内を見渡す雲心寺谷線
そうして一番右の道を走っていくと、こちらもしばらく走った先でダートになった。いい感じのフラットダートである。
しっかり手入れされていて走りやすい。すると、車が止まっていた。林業の方だろうか。何かしらの作業をしているようだ。
「すみません、この道って向こう側抜けれますか?」
「ああ抜けれるよ、道もこんな感じで登っていくから」
まじかー!
つまりさっきの分岐で、私はミスコースしていたということだ。
なんということだ、最後の最後でこんなミスをするなんて。さっきの苦労はなんだったんだ。ほんと自分の失敗に思わず笑ってしまった。
でもこれで最後の林道にたどり着けたぞ。そう、ここは京都の街を見下ろせるという林道・雲心寺谷線だ。見つかってよかった。
そうして登っていくと林の間から京都の街が見えた。
しばらく走ると分岐があったのでちょっと登ってみると広場があった。京都の街が丸見えだ。これぞフィナーレにふさわしい景色じゃないか!
最後にポカミスをしてしまったけれど、無事にたどり着けてよかった。
1週間林道三昧の旅は、こうしてみるとあっという間だった。でも初日に埼玉県狭山湖の林道を走ったのを思い出すとずいぶん昔のことのようにも感じる。なんとも不思議な感覚だ。
しかし、まだ終わりではない。ここから降りて京都の街に行かねばならぬ。まだ明るいが太陽は山の向こうに沈んでしまったから、真っ暗になるのは時間の問題だ。急いで下山する。
降りていくとしばらくはダートだったが、林道はすぐに舗装になった。ダートの距離は約4km。短かったけれどなんだかえらく時間がかかった気がする。ミスコースしたせいなんだが。
ゴール地点で記念撮影
山から降りたらコイン洗車場へ。ホテルに入る前に洗車だ。
ゴール前に綺麗にする、というのはダカールラリーのスタイル。実際ダカールラリーでも最後のポディウムに上がる前に綺麗に洗車するのだ。晴れ舞台だからね。
1週間分の泥を綺麗さっぱり落として、いざ京都の中心地へ。
最終日は贅沢をして老舗のホテルを予約した。といっても今のご時世なので思いのほか安かった。
せっかくのいい部屋が荷物まみれで残念なことになっている。おっさんの一人旅なのだから仕方ない。
シャワーを浴びた後は、京都の街へとご飯を食べに繰り出すが、この日は京都の知り合いに声かけておいたので、彼の案内にお任せ。京都だからどんなご飯が食べられるのか?
連れて行かれた店先は京都っぽさがあっていい感じ!
暖簾には「やきにく」と書いてある。京都で焼肉……。和食食べたかった。
にしても久しぶりにガッツリ肉を食べた気がする。そしてこれが美味しかった!
そんな最終日の夜を迎えておしまい……とはいかない。というのも翌日、本当のゴール地点へと向かうからだ。
スタートしたのが東京駅だったことを考えれば、グランドゴールは京都駅、もしくはその前にそびえる京都タワーがふさわしいと思う。
ちなみに京都タワーは灯台をモチーフにデザインされたというのが正解らしいが、どう見てもロウソクにしか見えないし、ずっとロウソクだと思ってたよ。
さて、京都駅に向かったが、バイクを止めて撮影できる場所がなかった。
作戦変更。京都御所をゴールとする!
今回のコンセプトは東京-京都。つまりMIYAKO to MIYAKOを考えれば御所は立派なゴール地点になる。
そう考え向かった京都御所は入口が駐車場になっていた。これで本当にゴール!
通りかかるお爺さま方に「写真撮ってやろうか?」と声かけられること多数。京都の人は優しいね。
これで無事に東京-京都・1週間林道ツーリングの旅が完結した。
楽しかったー。またやりたいな。
で、無事にミッションが終わったので、京都御所の前にある和菓子屋さん「とらや」でおやつタイム。甘いのに目がないんですよ。この旅ではスイーツタイムがほとんどなかったので、一目散に駆け込んだ。
なんて素敵なテラスなんでしょう。ライディングギアで佇む姿が完全に浮いているけれど。そしてひとつに決められずあんみつと栗粉餅のダブル注文。
おいし~。久しぶりの甘いもの。締めに最高のデザートです。
これで本当に完結。長い間お付き合いいただきましてありがとうございました。
またどこかでお会いしましょう!
おしまい。
レポート:三橋淳