文:小松信夫
日本では評価されながらも短命だったモタードモデル、アメリカでは2022年型が!?
2004年、スズキからデビューしたDR-Z400SM。400ccトレールモデルのDR-Z400Sをベースにしたモタードバージョンという成り立ちのモデルでした。
ただし、単にホイールを17インチ化してロードタイヤを履かせただけじゃなかった。正立だったフロントフォークはモトクロッサーのRM250用をベースにした高精度な倒立フォークに変更。さらにスイングアームも専用のアルミ製とされ、もちろんブレーキも強化するなど足回りを一新してグレードアップ。スリムで軽量な車体、最高出力40PSという強力なDOHC4バルブ水冷シングルエンジンと合わせて、国内向けモタードの中でも屈指の俊敏かつ豪快な1台として注目されたんですがね。
そんな本格的モタードのDR-Z400SM、確かに一部からは熱狂的に支持はされました。しかし、日本では扱いやすく手軽な250ccがモタード人気の中心。ハイグレードな足回りもあって価格もやや高く、しかも400ccで車検があるDR-Z400SMは、ごく普通のライダーにまでは受け入れられなかったのです。販売台数は伸びず、結局2009年モデルで販売を終了することに…。
しかし、生産終了後にDR-Z400SMの人気はむしろ高まって行き、今では新車時を上回るような価格で中古車が売られているのも珍しくないですなぁ。それは旧車としての評価というよりは、性能的に現行モデルにひけを取らず、まだまだ高いレベルにある現役モデル、という意味のようで。
例えば二輪ジムカーナの世界では、DR-Z400SMは今も多くのライダーから愛用され、時にはトップ争いにも絡んでくるだけの高いポテンシャルを備えていますよ。だからジムカーナの現場とかで「再販すればいいのに」なんて話になりますが、今となっては排ガスやら騒音やらABS義務化やら、そのまま売るのは現実的じゃないんでしょうね。
だがしかし! 初代モデル登場から18年を経た今なお、DR-Z400SMはアメリカなどでは現役モデルとして絶賛発売中なのです。アメリカなら、日本やヨーロッパで生産されている、限りなくコンペモデルに近いような最新モタードも選び放題なんでしょうが。そんな中で、どうもDR-Z400SMは「手軽で元気のいい、ストリート向けのファンバイク」として根強く評価されているようで。
この「最新型」DR-Z400SMですが、基本的に日本で売ってたころのモデルとあんまり変わってません。エンジンだってキャブ仕様のままだしね! 外観で違うのは、法規の違いがあってヘッドライトが大型化され合わせてバイザー形状が変わって、テールランプも大きくなって、フロントフェンダーにサイドリフレクターが付いてることくらい。あとサイレンサー形状も変わってるか。メカ的にほとんど変わってないのは、その性能が衰えていないことの証明。毎年グラフィックだけは新しくなってます。
ちなみにモタードのDR-Z400SMだけじゃなくて、ベースモデルになったトレールバージョンであるDR-Z400Sも健在なのです。乗り手が日本人より体格に恵まれてて、車検制度自体がないという条件なら、オンオフ問わず400ccがファンバイクになるわなぁ。
そこに上手くはまったのがDR-Z400系モデルってことなんですかねぇ。なんなら、エンデューロレーサー版のDR-Z400Eまでまだ売ってますよ〜。調べてみるとマフラーとかエンジン周り、外装パーツやらなんやら、DR-Z用アフターパーツも結構充実してますな。
まあ、アメリカをはじめ、今でもDR-Z400系モデルを売ってる国は、日本やヨーロッパとは異なる基準の排ガス規制ってことなんで、残念ながらこの辺のモデルを簡単に日本に逆輸入できないのは残念。とはいえ、アメリカあたりも排ガス規制が今後厳しくなるみたいだから、DR-Zの楽園もいよいよ終焉が近づいてるのかも?
文:小松信夫