文:小松信夫
実用性と走破性を持つ日本の現行モデルには見当たらないタイプの125cc
ヤマハの125cc実用車、YB125系の一族は以前この連載でも紹介しました。実用重視のシンプルな空冷単気筒エンジンを積んだ、実にオーソドックスな造りのネイキッドっていうか、ザ・スタンダードというべき存在。
使い勝手が最高のようで、世界各地で現地生産され、長らく幅広く売られててですね。地域によって名前が微妙に違うし、仕様や装備が異なるし、メカ的にもいくつか系統かあるようで、その全貌は良くわかりません。
前回YB一族を紹介した時、そのバリエーションとして、アップフェンダー、オフロードタイヤ、ガード付ヘッドライトを装着したパキスタン向けマルチパーパス仕様のYBR125Gもちょっと紹介しました。
東南アジアとか、南米では道路環境的にこの手のロードモデルをベースに、オフロードも何とか走れるようにした、実用スクランブラー的モデルが結構見られましてですね。そんな中でもYBR125Gは、比較的実用車感が薄いというか、多少遊び心を感じさせる部分が特徴。ヘッドライトガードのデザインとか昔のTT250Rレイドみたいだったり、ゴロワーズカラーっぽいボディカラーも設定したりとかね。
しかし、そんな軟弱レジャー路線とは一線を画した、ハードコアなまでに実用スクランブラー感を醸し出しているYB125系モデルが、ペルーのヤマハには存在していました。それがこの、YB125チャカレーラなのです。ちなみにチャカレーラという車名は、アルゼンチンの民族舞踊に由来するそうな。
チャカレーラはYBRの洗練されたデザインとは異なり、そもそも原型のスタイルがクラシカルな雰囲気なんだけど。さらにキャリアを兼ねた無骨な造りのヘッドライトガードがどうしようもない実用車感を演出。ハンドガードもシンプルなパイプ構造。前側はアップタイプ、後方はダウンタイプを組み合わせたYBRの機能的なフロントフェンダーに対し、70年代のオフ車みたいなマッドフラップ付きのフロントフェンダー。シート周りやリアキャリアも70年代風。タイヤもオフロード寄り、というんじゃなくて、思いっきりゴツゴツしたブロックパターン。レトロ感以上に、枯れ切ったプロの道具感というか、ユーザーの声に応えた結果という感じがするねぇ。
でもどちらもYBの一族らしく、エンジンとかサスペンションとか、ベースとなってるメカニズムは概ね共通な造りなんだよね。目立つ違いはYBR125Gのフロントブレーキがディスクになっているくらいか。ディスクブレーキあたりの造りは、ペルーで売られてる普通な方のYB系モデル・YBR-Zが、YBR125Gと同系統だね。
こんなYB125チャカレーラですが、ペルーのヤマハはオフロード車のカテゴリーに分類してるんですよ。XTZ125とか150、250とかの普通のトレール車とかとね。
さらにテネレ700とも同じ扱いですよ。YB125チャカレーラが、それだけオフロードでの実用に耐えるタフなモデルだ、という自信があるのかなぁ。私も、個人的にはYBR125Gよりチャカレーラが好きだな。
文:小松信夫