1992年に初代が華々しく登場してから30年。CB400SFとCB400SBの「ヨンヒャク4気筒」シリーズは、時代の変化にしなやかに呼応し、その姿、メカニズムを進化させながら発展してきた。若者からベテランまで、多くのライダーの「青春の1ページ」だったCBの魅力を、改めて振り返ってみよう。
文:太田安治/写真:西野鉄兵

いつの時代も「最高のヨンヒャク」であり続けた傑作

「世界一の400」のまま去っていくヒーローに拍手

CB350フォアから始まったホンダの4気筒エンジン搭載の中型スポーツは、CB400フォア、CBX400F、CBR400F、CB-1と、時代ごとにその形を変えながら走りの性能を高めていった。しかし、1989年に登場したカワサキのゼファーが、時代に逆行するような穏やかな乗り味と端正なデザインというパッケージングで、レプリカのカウンターとして大好評を得る。

それを受けホンダが投入したのがCB400スーパーフォア。スポーツ性能の高さが魅力だったCB-1に代え、乗りやすさと重厚なデザインを前面に出したモデルだった。

画像: Honda CB400 SUPER FOUR

Honda CB400 SUPER FOUR

ただ、CB400スーパーフォアがデビューした1992年当時は、まだレプリカブームやバブルの匂いが残っていたこともあり、僕がCBに初めて乗ったときの印象は「乗りやすいが地味なオートバイ」というものだった。販売面でも、発売と同時に即大ヒットしたわけではなく、レーサーレプリカの衰退、生産終了を埋めるように人気が高まっていったと記憶している。

CB400の凄さは、マイナーチェンジとモデルチェンジを短期間で繰り返し、ユーザーの要望、開発者の技術をシンクロさせながら着実に進化したこと。ネイキッド車をベースとしたレースの盛り上がりを受けてバージョンRが登場したのもその一例だ。

当時、富士スピードウエイでの最高速トライであっさり200km/hオーバーを記録し、その速さに驚くと同時に再び性能競争に向かうのかと戸惑ったが、1999年のフルモデルチェンジではハイパーVTEC採用の新エンジンで低中回転域での力強さとスムーズさを高め、ハンドリングも安定性重視の設定に戻ったときは、違う形での進化を見せ付けられた気がした。

個人的にはこの時点で「誰でもどこでも乗りやすいが、スキルのあるライダーも満足させるスポーツ性能も秘めている」というCBのキャラクターが固まったように思う。

画像: Honda CB400 SUPER BOL D’OR

Honda CB400 SUPER BOL D’OR

2007年には吸気がFI化され、ハイパーVTECも進化したが、速さよりも乗りやすさを前面に出したキャラクターは基本的に変わることはなく、その後も重箱の隅をつつくように、乾いた雑巾を絞るように細かな改良を重ね続けた。2017年のマイナーチェンジでパワーは56馬力にアップしたが、これは速さを狙ったのではなく騒音規制改定に合わせたマフラー変更の結果であって、コンセプト自体はまったくブレていない。

過去に何度も「世界一の400ccスポーツ」と評してきたCB400だけに、個人的には生産終了は寂しい限りだが、世界一という称号を保ったまま「最高の400」として去ることには、むしろ一種のすがすがしさすら覚える。デビューから30年に渡って進化を続けたCB400というオートバイに、そして地道にその開発を担ってきたエンジニアの方々に心から拍手を送りたい。

文:太田安治/写真:西野鉄兵

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