文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸/モデル:木川田ステラ
ホンダ「CB400 SUPER FOUR」インプレ(太田安治)
バイクに乗る楽しさを改めて教えてくれる1台
1992年の初代デビュー以来、大小さまざまな改良を加えて熟成を続けてきたCB400SF。2017年にFIのスロットルボディとマフラーが一新されて3PSアップし、ヘッドライトのLED化、ハンドル位置の変更が行われたが、それ以降はグラフィック変更のみで現在に至っていることも高い完成度の証明。10年ほど前に「普段は物静かな優等生だが、いざとなれば高い運動能力を見せる隠れマッチョ」と評したことがあるが、現行モデルは一段と成長して凜々しさまで加わっている。
エンジンはかつての自主規制値上限に近い56馬力。前モデルより3PSアップしたが、市街地でそれを実感するのは難しく、アイドリング+αの低回転域からスムーズに加速する力強さに感心するばかり。図太くて張りのある排気音を響かせ、意のままにレスポンスする特性で、普段1000ccモデルに乗る僕でも物足りなさはまったく感じない。
CB400SFの特徴的な機構が1気筒当たりの作動バルブ数を回転数に応じて2本/4本に切り換える「ハイパーVテックRevo」。1〜5速の場合は6300〜6750回転の間でスロットル開度に合わせて切り換わるポイントが可変するという緻密な制御を採用している。切り換わり時の作動音やショックはないが、排気音が弾けた音質になり、高回転域での加速に勢いが増してハツラツとしたキャラクターに変身するのも大きな魅力。
6速・100km/h時は6750回転だから、クルージング中は2バルブで穏やかな反応と省燃費を実現し、追い越し加速時は4バルブに変わって一気に車速を増す設定になっている。
車体関係はフレームの剛性バランスからサスペンションセッティングに至るまで細かく入念に改良されてきただけに、ハンドリングの素直さも特筆もの。前後タイヤの接地感が高く、コーナーの大きさに関わらずしっかりした手応えを保ったまま素直に旋回し、フルバンク中の安定性も素晴らしい。バンク中に凹凸を通過してもサスペンションとフレーム全体で衝撃を逃がし、車体やハンドルが弾かれにくいこともCB400SFのいいところだ。
出力特性とハンドリングの絶妙なバランスが生む走り、ライダーの体格を問わず長時間走行でも疲れないポジション、実用性の高さ、飽きの来ないデザインがCB400SFが支持され続けた理由。大型車志向のライダーも、乗ればオートバイの楽しさにパワーや車格は関係ないことを実感するだろう。