889ccの水冷並列2気筒エンジンは105PSという力強さ。極限の状況下でライダーを支えるため、3モード選択式のライディングモードや、リーンアングルセンサー付きのトラクションコントロールなどの電子制御デバイスも標準装備。ハイグレードなWP製のAPEXサスなどの充実した足回りと合わせて高いオフロード性能を実現されている。丸型LEDヘッドライトが目立つスタイリングも個性的な魅力にあふれていて、19Lという大容量タンクなども機能的で快適性も備えている。
文:山口銀次郎、小松信夫/写真:伊勢 悟
ハスクバーナ・モーターサイクルズ「ノーデン901」インプレ(山口銀次郎)
あらゆる道を往くアドベンチャーモデルとして誕生した「ノーデン901」
ハスクバーナ・モーターサイクルズ初となるアドベンチャーモデルは、889㏄並列2気筒エンジン搭載のアッパーミドルクラスとなる。意匠に凝ったLED丸目ヘッドライトを採用し、フォグランプと組み合わせることでシンプルかつ迫力あるフェイスを構成し、個性派揃いのアドベンチャークラスに於いて存在感をアピールするのに十分なものとなっている。
余分な装飾を排除したボディメイクは、コンペティションモデルを彷彿させるストイックさが漂う本格仕上だ。ノーデン901は迫力ある外観からコンペモデル直系と思われがちだが、幅広い行動範囲に耐え得る生粋の一般市販公道モデルとして誕生したのだった。
数多くのオフロードモデルをラインアップし、オフロードモデルの戦闘力に定評のあるメーカーなので、そのノウハウが活かされているのは言うまでもないが、一般市販車が求められる、そしてアドベンチャーモデルに求められる性能を満たしているかが気になるポイントであった。
十分すぎるストローク量を確保した前後ショック長設定や、リッタークラスに迫るエンジンを搭載しているので腰高感はあるものの、分割された燃料タンクがエンジンを挟み込む形状にすることで低重心化を図り、操作感は軽快そのもの。それこそ、操縦性に支障をきたす無駄肉を削ぎ落としたコンペモデルの思想が活きていると実感した。
ただし、圧倒的な軽量化が施されているかといえば、そうではない。風体に見合うズッシリとした筋骨感が頼もしい。メインステージは一般公道なので、ある程度のどっしりとした落ち着き感は安心感に繋がるもので、包容力溢れる前後ショックアブソーバーのお陰で快適な印象が強くなっている。それは、発進時の低速時から高速での一定速走行時まで一貫しているのだ。
エンジンは、タイムを競う瞬発力重視ではなく、ゆったり優雅でトルクフルなチカラの演出がされており、心地良いパルス感とともにエンジンの躍動自体を味わえる設定となっている。長距離トリップに於いても飽きのこない設定であることは明らかで、それでいてアッパーミドルクラスならではのパンチ力も備えている。シチュエーションを選ばずに楽しめる器用なパッケージであることが伺える。
クラッチ操作やスロットルでエンジン回転数を調整しなくてもギアチェンジが可能なイージシフト機能は、ありがちなフィーリング(機械的入力感)が一切なく、通常のシフトチェンジのフィーリングそのままで機能してくれるのが秀逸だ。シフトアップもダウンも対応するので、様々なシチュエーションで恩恵にあやかれるはずだ。
また、とても小さなことかもしれないが、ライド・バイ・ワイヤスロットルを採用することで、スロットル巻き上げ時に徐々に負荷が増すスプリングタイプ(アクセルワイヤー式)と異なるので、操作の負担が軽減されている。
硬めでフラット、そして後端にかけて幅広になるシートは、着座ポイントが多くとれ、自由度が高いものとなっている。長時間走行ではこまめに着座位置の変更をすることでコリや鈍痛を防ぐことができるので、長距離走行に適している。また、左右に分割された燃料タンクだが、シート前部からニーグリップ位置まで太めな設定なので、特にニーグリップを意識しなくても自然とホールドすることが出来るのも疲労を軽減してくれる。
タイヤこそオフロード用タイヤではなかったのでオフロードでの真価に触れなかったが、多少のガレ場でもモノともしないショック吸収&収束機能や車体構成は期待度高めであることは間違いない。ハスクバーナ・モーターサイクルズからのリリースというだけでオフロード走行性能に関しては折り紙つきの設定なので(過剰評価ではない)、多少のチャレンジングな走行も可能にしてくれる。
あらゆるシチュエーションに立ち向かう包容力と器用さがあるので、アドベンチャーモデルの資質を十分備えていると言っても良いだろう。