全日本ロードレースに参戦するAstemo Honda Dream SI Racingのレースクイーン“楠瀬るり”が、ピットからレースの舞台裏を発信中。初心者目線でライダーや監督、メカニックの皆さんを直撃し、伺った話や感じたことを中心にお届けします!

レース1で今季チーム初の表彰台を獲得した作本選手! でもレース2の4位の方が嬉しそうなのは…なんで?

皆さん、こんにちは!
日立Astemoレースクイーンの楠瀬るりです。

6月4日(土)、5日(日)に、2022MFJ全日本ロードレース選手権シリーズの第4戦『スーパーバイク in SUGO』が、宮城県のスポーツランドSUGOで開催されました。
今回もAstemo Honda Dream SI Racingの熱い想いを、私なりにお伝えして参りますので、ぜひ最後までご覧ください。

チームを率いる伊藤真一監督の地元であり、チームにとってのホームコースでのレースとなった第4戦は、開幕戦以来の全クラス走行でした。
私は「レポートするぞ!」という意気込みは熱いのですが、まだまだ二輪レース初心者から抜け出せないもので、今回も詳しいレース展開はチームの公式レースレポートをご覧ください。

ですが今回は各レース終了後に、チームライダーの皆さんにお話を伺うことができました。
まずJSB1000クラス、#27の作本輝介選手ですが、土曜日の決勝レース1は3位となり、今季チーム初の表彰台を獲得! 私は作本選手が前回のレースまでとても悔しい表情をされていたのを見ていたので、3位表彰台を獲得された時は本当に感動しました。その瞬間はチームの皆さんもみんな拍手されていて…。特に印象的だったのは、作本選手がピットに帰ってくる前に、伊藤監督がチームの皆さん一人ひとりに『ありがとうございます』と伝えながら、笑顔で握手されていた姿です。その姿を見ているだけでチームの絆を感じ、レースは本当に大勢の皆さんの力で成り立っていることを実感しました。

画像1: レース1で今季チーム初の表彰台を獲得した作本選手! でもレース2の4位の方が嬉しそうなのは…なんで?

しかし…表彰台での作本選手はほとんど笑顔がなく、チームの広報スタッフさんとも「どうしてだろう?」と話題になったほどでした。レース後のインタビューでは、思い切ってその理由を聞いてみたのですが…。『トップとの差が開いていたため、悔しい気持ちが勝って笑顔になれなかった』と作本選手。今回、初めて作本選手の笑顔や嬉しいコメントが聞けると思ってワクワクしていた私からすると、思いもよらないコメントで、内心「えっ!?」と驚いてしまいました。このコメントからも、作本選手は本当にトップしか見ていないこと、そして勝負の世界の厳しさをあらためて感じられた気がします。

画像2: レース1で今季チーム初の表彰台を獲得した作本選手! でもレース2の4位の方が嬉しそうなのは…なんで?
画像3: レース1で今季チーム初の表彰台を獲得した作本選手! でもレース2の4位の方が嬉しそうなのは…なんで?

日曜日の決勝レース2は、4位を獲得。本当にハラハラドキドキするレースで、最終ラップは激しい3位争いを繰り広げながらゴールし、惜しくも0.01秒差での4位でした。私は作本選手が最終ラップで前の選手を抜かした瞬間、「3位だ!」と嬉しくて、思わずコントローラーさんに抱きついてしまったほど(笑)。この接戦のレースは、観ている皆さんの心も揺さぶったのではないでしょうか? 
ピットの中も大盛り上がりでしたし、レース後の作本選手の表情も、前日に比べてたくさんの笑顔が見受けられました。レース後のコメントでも、この日の4位がトップグループについていけた前向きな順位であることをおっしゃっていたので、私は昨日、表彰台を獲得されたことにウキウキしすぎていて、着目点が浅はかだったと反省しました。これからのレースでは結果だけでなく、トップとのタイム差などにもきちんと注目して見ていきたいと思います。

画像: #27 作本選手

#27 作本選手

ST1000クラスでは、#1の渡辺一馬選手がポールポジションを獲得しました!

画像1: ST1000クラスでは、#1の渡辺一馬選手がポールポジションを獲得しました!

予選後にお話を伺ったところ、『プロとして、期待されないライダーではいけない』とコメントされていた一馬選手は、ゼッケンナンバー1番を背負う重みを誰よりも理解し、自分が期待されている成績を残すために走られているのだと感じます。開幕戦では、作業違反のペナルティによりトップでゴールしたのにも関わらず6位という悔しい結果となりましたが、そこから今回に向けてどう気持ちを切り替えたのかを伺ったところ、「前回のことは忘れられないし、忘れてはいけないことですが、もう今日のレースには関係ない。切り替えて、今日は皆様に期待されている事に応えるよう最善の努力をするだけです」とおっしゃっていて、自分が何をするべきかを明確にし、努力されている姿にカリスマ性を感じました。
そして一馬選手は、気分転換は家族と過ごすことだと教えてくださいました。息子さんがとても可愛いくて、癒されるそうです。一馬選手のインスタグラムは、息子さんを背中に乗せて腕立て伏せをしている写真などもアップされていて、とても仲睦まじさが伝わってくるんですよ。

日曜日の決勝では、スターティンググリッドのポールポジションで傘を持たせていただくことに、私はすごく特別な感情を抱きました。1番スタートラインに近くて、観客席のファンの方々の注目がたくさん集まるこのポジションに、トップという実感が湧きました。日立Astemoの旗やシャツを着て応援してくださるファンの方々の姿もよく見えて、手を振ったら優しく返してくださったのがとても嬉しかったです。

画像2: ST1000クラスでは、#1の渡辺一馬選手がポールポジションを獲得しました!
画像: 一番右手前のポールポジションが渡辺一馬選手です。

一番右手前のポールポジションが渡辺一馬選手です。

グリッドでの一馬選手というと、スタート7分前くらいにバイクから降りて屈伸をするルーティンがあります!(また、走行前は必ずお手洗いに行くのもルーティンといえばルーティンだと教えてくださいました(笑)。でも本当に、ついさっき行ったばかりでもあらためて行くそうです!)。そしてお隣に立っていると、レース開始前の集中力が計り知れないと感じます。スタート前とゴール後の表情が全然違いますし、精神統一されているのが私にも伝わってきます。

しかし決勝は、スタートしてすぐに大きな転倒があり、赤旗中断に。タイムスケジュールの入れ替えもあり、再スタートは18周から16周のレースに変更になったため、集中力の継続が大変だったと思います。その状況にも負けず、一馬選手は素晴らしいスタートでした。ゼッケンナンバー1を背負う一馬選手がトップを死守して走る姿を見て、心に熱いものが込み上げてきました。
結果は4位入賞。一馬選手は「悔しい結果」だとコメントされていましたが、もうすでに次戦を見据えて、自分のやるべきことを考えていました。レース後にエンジニアの方々と和気藹々とされている姿からは、チームととても信頼関係があることが伝わってきましたし、2レース制となる8月の第6戦では、必ず素晴らしいレースを見せてくださると私は確信しています!
つねに目標に対して何をすべきか明確にし、努力されている一馬選手。今回お話を伺って、その姿にあらためて感動しましたし、私もこれから7月に薬学部の試験が2回あるので、自分が何をすべきかを考えて、冷静に努力しようと思いました。急に自分の話になって申し訳ありません(笑)。

また、今回のST1000クラス決勝は、一馬選手を幼い頃から知っているというチームのメカニックさんに、いろいろ解説していただきながら観戦しました。メカさんは『一馬選手にとって、自分は親戚のおじさんくらいの関係だ』とおっしゃっていて、前回のレポートでご紹介させていただいた、今年からチームの荷物を運んでいる臼杵運送株式会社さんも、従業員の方が一馬選手とお知り合いだったご縁でトラックを提供されていることを思い出しました。もともと一馬選手とお知り合いだった方達がチームを支えるスタッフに加わっているのは、一馬選手が周りの方を大切にされていることの証でもあると私は思います。

先日、日立Astemo福島工場にチームで伺った時も、一馬選手は私に「英語話せるなら、ムック(ムクラダ選手)に話しかけてあげてね」と声をかけてくださいました。ムクラダ選手はタイから1人で日本に来ていて、言語も通じないし、心細いと思うから…とおっしゃっていた一馬選手。今回のレースでムクラダ選手が5位入賞された時も嬉しそうに握手を交わしていて、そんな一馬選手の姿からも、チームの仲間を大切に想う気持ちがすごく伝わってきました。

画像3: ST1000クラスでは、#1の渡辺一馬選手がポールポジションを獲得しました!

ST600クラスのムクラダ選手も好調です!

そして今回、ST600クラスの決勝レース1で見事5位入賞を果たした#39のムクラダ・サラプーチ選手は、公式予選13番手スタートから見事な追い上げを見せました。SUGOはまだ2回ほどしか走ったことがないというのに、最終ラップでは誰よりも速く、ベストタイムを記録していたムクラダ選手。その素晴らしい走りに、チーム全体が盛り上がりました。
ムクラダ選手は本当に気さくな方で、スターティンググリッドでも観客席に手を振ったり、ファンサービスが素敵です。タイ人のムクラダ選手は仏教徒で、いつも走る前にお祈りをされるのですが、それは『安全第一』を祈願しているそうです。皆さんも、スタート前のムクラダ選手にも注目してみてくださいね!

画像: ST600クラスのムクラダ選手も好調です!

ムクラダ選手はチームの皆さんとは通訳の方を通してコミュニケーションを取っています。マシンの調整を進めるのも大変なのでは? と尋ねてみたところ、やはり『言葉の違いがあって難しいです』とのこと。ですがその壁をカバーすべく、通訳さんも含めたチームの皆さんで力を合わせ、ムクラダ選手に合ったバイクの調整を進めています! 走り慣れていない日本のレースでも素晴らしい走行を披露したムクラダ選手のことは、伊藤監督もその実力を認めていて「タイで人気のライダーでとても速い選手だから、必ず結果は付いてくると信じています』とおっしゃっていたのが大変心に響きました。
日曜の決勝レース2では、残念ながら転倒リタイアという結果に。コースのオイルに乗ってしまった不運な転倒でしたが、幸い大きなケガはなかったとのこと。次戦、元気なムクラダ選手にお会いできることを、私もまた楽しみにしております!]

画像: #39 ムクラダ選手

#39 ムクラダ選手

私が1番感動したことは『チームとライダーの信頼関係』でした

毎戦、チームスタッフの皆さんはお忙しい時間を縫って、本当にたくさんのことを私に教えてくださるのですが、今回は特に、サスペンション担当エンジニアの高野さんにお話を聞かせていただきました。
私は“エンジニア”というお仕事の内容をよく理解していなかったのですが、ライダーに合った最適なバイクを調整するために、走行後のライダーの意見を聞いたり、タイヤを見たり、ECUデーターモニターを見て、メカニックの方に修正の指示を出したりされているとのこと。そしてライダーとエンジニア、メカニックの絶対的な信頼関係がないと、ライダーに合ったマシンは作ることができないそうです。
また、今シーズンのエンジニアチームは、一馬選手が「組みたい」と申し出たメンバーで結成したのだとか。そして一馬選手は「一緒に組むからには絶対に1位を獲得する」と、エンジニアの方々と約束をしているそうです。このエピソードだけでも、とても胸が熱くなりませんか!?

画像1: 私が1番感動したことは『チームとライダーの信頼関係』でした

しかもお話を聞かせてくださった高野さんは、なんと全日本モトクロス選手権にも出場されていた元ライダー。自分もレースを走っていた分、より選手の気持ちが分かるとおっしゃっていました。ST1000の決勝を一緒に見させていただいたメカニックさんも、元ライダーだと教えてくださいましたが、レース中も走りを見ているだけで、一馬選手の気持ちや様子を把握できている姿に、心が通じ合ってることを感じました。

また、私は毎戦スターティンググリッドに立たせていただいていますが、グリッドではチームの皆さんが、スタート前の選手にさまざまな応援の言葉をかけます。ほとんどの方が「頑張ってね」と声をかけるのですが、高野さんは「落ち着いて。大丈夫だから! 俺を信じて!」と声をかけていたのが印象的でした。その言葉の意味を尋ねると、「速く走ることができるように俺が調整したサスペンションを信じて、全力で走って」という意味を込めているそうです。
私がピット内でレースを見ている時も、高野さんは、作本選手が初の表彰台を獲得した時はすごく笑顔で喜び、0.01秒差で4位ゴールとなった時は目に見えて分かるほど肩を落とされていたり、一馬選手の4位には「勝たせてあげられなかった…」とうっすら涙を浮かべるほど悔しがったりと、ライダーの走りに一喜一憂されていました。現状に満足することは絶対になく、より速く走るバイクを作るためには、たとえ1位を獲得した後でも、毎戦毎戦全く同じサスペンションを使うことはないそうです。チームの皆さんが「選手はエンジニアの方を100%信頼してる」と教えてくださいましたが、トップを目指すマシン作りのために、エンジニアの皆さんがこれだけ全力を注がれているからこそ、その信頼関係は生まれるのだと伝わってきました。

画像2: 私が1番感動したことは『チームとライダーの信頼関係』でした

さらにエンジニアの方々は、レースウィークやテストで選手と打ち合わせするだけでなく、日頃からLINEで密に連絡を取り、より選手に合ったバイクが調整できるよう相談を重ねているそうです。レースがない日もチームの皆さんが、より速いバイクを作るために努力を極めていることを知り、感動してしまいました。
第2戦のレポートでも書かせていただきましたが、Astemo Honda Dream SI Racingはプロの集団であり、それぞれの仕事に対する絶対的な信頼関係で成り立っています。溢れ出すほどの勝利への熱い想いを全員が持っているこんなに素敵なチームで、レースクイーンを務める機会をいただいたことを、私はあらためて光栄に思いました。

そして最後に、レースクイーンとしての大切なお仕事についても

今回はオートバイ女子部のRurikoさんがいらっしゃり、特別ステージで行なわれたPRタイム『ギャルオンステージ』にも一緒に出演してくださいました。Rurikoさんは大型バイクに乗られていて、バイクで約1ヵ月もの旅をしている途中にSUGOに来てくださったそうです。
細くて美人なRurikoさんは優しくて、声がとても可愛い方です。なんとも癒やされる話し方と佇まいに、YouTuberとしても人気の理由がすごくよく分かりました。それでいてとても落ち着いていて、『ギャルオンステージ』でのトークを、ほぼアドリブで盛り上げてしまう姿が素敵でした。ちなみに私は、第3戦終了後は毎日ドライヤーの時間に原稿の練習をしていたのに、やっぱりガチガチでしたが…(笑)。

画像1: そして最後に、レースクイーンとしての大切なお仕事についても

RurikoさんはAstemo Honda Dream SI Racingのチーム名にちなんだ“A”ポーズを考えてくださって、不器用な私に直前までポーズを修正してくださいました。Rurikoさんのおかげで、いつもは緊張してしまうPRステージもすごく楽しくできました。本音を言うと、この先のレースでもずっと一緒にステージに上がって欲しいくらいです…(笑)。
でも! そんな贅沢なことを言ってはいられないので、次戦から私1人で盛り上げられるようにさらに頑張ります! 皆さんも、チームにちなんだポーズの案がございましたら、ぜひ教えてくださいね。

画像2: そして最後に、レースクイーンとしての大切なお仕事についても

また今回のピットウォークも、日立Astemoのシャツや旗を持った方々が大勢来てくださいました。先日訪問した日立Astemoの福島工場の方々が挨拶してくださったことも、とても嬉しかったです。いつも皆さんとお会いできることが嬉しくて、自然と笑顔になってしまいますが、今回も素敵な時間を本当にありがとうございました。
直接お渡しすることはできなかったのですが、ピット前のテーブルで配布していた日立Astemoのファイルに、皆さん気づいてくださいましたか? じつは私も頂いて、大学の特に大切な資料を入れて愛用しています!
今回もとても長いレポートになってしまいましたが、最後までご覧いただきましてありがとうございます。
レースを重ねるたびに、Astemo Honda Dream SIRacingがさらに大好きになり、熱い想いを持つチームの皆様への尊敬を新たに抱きます。私のつたないレポートで、少しでもチームの魅力を伝えることが出来ていたらとても嬉しいです。

全日本ロードレース選手権の後半戦は、8月27日(土)、28 (日)に大分県のオートポリスでスタートします。そしてその前に! 今年は3年ぶりの “8耐” が、8月4日(木)~8月7日(日)「2022 FIM世界耐久選手権 “コカ・コーラ” 鈴鹿8時間耐久ロードレース第43回大会」として開催されます。
私は8耐は未経験ですが「いつもクールなチーフメカニックの小原さんも、8耐では感動の涙を流す」と風の噂で聞きました(笑)。
見応えのあるレースになることは間違いなしですので、皆さまぜひ、
Astemo Honda Dream SI Racingの応援を宜しくお願いいたします!

画像3: そして最後に、レースクイーンとしての大切なお仕事についても

写真/南孝幸

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