文:小松信夫
並大抵のタフネスさじゃ許されないフィリピンの実用車
いよいよネタ切れ気味のこの連載、今回はローカルモデル最後の楽園かもしれないフィリピンのネタを何とか搾り出しました。「困ったときのフィリピン」な気もしますが。
このホンダ「TMX SUPREMO」が今回のネタなんですけどね。3rd GENERATIONだそうで、結構な人気なんでしょう。なんということのないネイキッドというかスタンダードバイク。異形ヘッドライト周りとか、タンクやサイドカバー、シートあたりはちょっぴりモダンな雰囲気で、押し出しの強い堂々とした感じもします。
とはいえ前後18インチ径のスポークホイールと飾り気のないダウンフェンダーあたりから、隠しきれない実用車感が漂ってますねぇ。
それもそのはず、コストパフォーマンスと実用性と耐久性に大変厳しいユーザーの声に応えるために開発されたビジネスモデルなんでね、「TMX SUPREMO」は。シンプルな構造の150ccのOHC空冷単気筒エンジンは、62km/Lという超好燃費を叩きだすように開発。扱いやすくて信頼性も高そう。
18インチホイールを採用しているのも、高い最低地上高を確保して悪路の影響を受けにくいようにするため。オフロード風味を盛り込んで独自進化したカブ的モデル「XRM125」が人気のお国柄ですから、実用車もそういう造りになるということのようで。
カタログの表紙を見ると、稲妻が光る暗い空をバックに屋根とホンダのネーム入りのフルキャビン構造サイドカーをくっつけた「TMX SUPREMO」トライシクルタクシー仕様が思い切り出てくる。以前紹介したフィリピン・ヤマハの「YTX125」みたいな?
「SUPREMO,TUNAY NA LAKAS!」というメインのキャッチコピーはタガログ語で、これを訳すと「スプレモ、本当に強い!」となる。ちょっと荷物を運ぶとか、移動のための足なんて生易しいもんじゃなく、リアルに稼ぐために使い倒すワークホースってことらしい。
トライシクル運用では避けられない超高荷重のサイドカー対応のため、車体の右側にはサイドカーを装着するためのしっかりとしたアタッチメントが、最初から3ヶ所用意されてるのね。少々のことじゃ壊れないように、ひたすら頑丈に開発されてるんだろうなぁ。
「YTX125」みたいな4本リアサスでこそないけど、「ウチは2本サスで平気さ!」ってこと? この辺、激しい開発競争があったりするんだろうか。
ちなみに、こちらは「TMX SUPREMO」の弟分「TMX125α」。世界中に広がってるホンダ実用車のベストセラーである「CG125」系のモデルのようで。こちらのタガログ語コピー「ANGAT KA!」は「あなたを運ぶ」という意味みたい。パーソナルユース重視ってことなんでしょうね。多分。
文:小松信夫