極めてスムーズなフィーリングと強力なパワーを両立させる、二輪車としては珍しい並列6気筒エンジンを搭載したグランドツアラーであるK1600GT。
 
排気量1648㏄でDOHC4バルブ、160PSを発揮するエンジンを横置きし、駆動系はシャフトドライブを採用。モダンなデザインのフルカウルは、Kシリーズらしいスポーティさも感じさせながら、ラグジュアリーな雰囲気も表現した魅力的なデザインだ。
 
しかも最新の空力技術を積極的に活かすことで高いレベルの防風性能も実現。ABS、ESAといったライディングを支援するデバイスや、300kgを超える巨体の取り回しをサポートするリバース・アシストをはじめとする充実した装備類と合わせて、街乗りから超高速走行まで、状況を問わず快適にライディングを楽しめるようになっている。
文:葉月美優、ゴーグル編集部/写真:柴田直行

BMW「K 1600 GT」試乗レビュー(葉月美優)

画像: BMW K 1600 GT 総排気量:1648cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列6気筒 シート高:810-830mm 車両重量:350kg 税込価格:335万5000円~

BMW K 1600 GT

総排気量:1648cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列6気筒
シート高:810-830mm
車両重量:350kg

税込価格:335万5000円~

主張はないのに力強い、穏やかなのにド迫力!

大型フェアリングやパニアケースなどの装備品により、大きく見えるバイクは数多く見てきましたが、明らかに今まで見てきたバイクとは違う……。カウルを押しのけてエンジンが横に張り出して、存在感をアピールしてきます。誇らしげに刻まれた「6」の文字が6気筒であることも主張しています。

BMWといえばボクサーツインエンジンで、真横に張り出したエンジンもインパクトが大きのですが、6気筒エンジンのギッシリ詰まった感じの圧力、重量感(見た目ですが)は他とは格段に比べ物になりません。

ボクサーツインエンジンもそうですが「BMWはエンジンの主張が強い!」そう思わざるを得ません。でも、この主張こそが、BMWらしさであり、BMW独自の世界観を作るために必要なものなのかな、と思ったり。

画像1: BMW新型「K 1600 GT」を徹底解説|葉月美優の試乗レビュー&各部装備を細かくチェック(2022年)
画像2: BMW新型「K 1600 GT」を徹底解説|葉月美優の試乗レビュー&各部装備を細かくチェック(2022年)

今、他メーカーも含め販売されている現行モデルで、6気筒モデルを唯一ラインアップするBMWって素直に凄いなって思います。6気筒の良さはあるのに、どこか市販するのにハードルが高かったりするのかな? とはいえ、私が今まで所有する選択肢の中に6気筒モデルがあったかというと、ありませんでした。実際にK1600GTを前にしても、その大きさに圧倒されて、とても乗りこなせる自信がありません。

まず、一番の問題は足着き性です。シート高が800mmを軽く超えています……。ところが、シート高800mmを下回るGTLやグランドアメリカやバガーモデルがあるというじゃないですか。「できるなら、ソッチの方が良かったな~」というのは、私の心の声です。とはいえ、欧米人サイズにデザインされ、6気筒の贅沢エンジンに触れる事や乗る事は滅多にありませんから、楽しむしかありません!

画像1: BMW「K 1600 GT」試乗レビュー(葉月美優)

今回の試乗を前に、足着き対策として5cmの厚底ブーツを持参して挑みました! バイク用のブーツ製造メーカーのものなので、操作は普通にできる安心の品物です。実際に跨ると、身長155cmの私(5cmプラス)の足着きはツマ先ツンツンといった具合です。しかも、シートの幅があり、股が開き気味で足出しが若干ハの字になり、足着き&足出しの両面においては良好となりませんでした。

跨ったまま、やっとこ車体を垂直に起こしサイドスタンドが払えるので、その一連の動作に支障や癖がなかったのが救いでした。

なんだかんだ発進するまで長くなってしまいましたが、350kgもの重量級の車体が進み出すと不思議な世界が広がっていて、少々戸惑ってしまいました。まず発進時のグイグイと押し出す感じがしないのに、スルリと押し進めてしまう感覚。下り坂でブレーキを離すと勝手に前に進んでしまう感覚に近いかな? エンジンのチカラ、エンジンの仕事に頼っていないような滑らかさがありました。ただ、エンジンの鼓動感や振動はないものの、轟々とした大排気量エンジンの唸りのようなものは感じます。

画像2: BMW「K 1600 GT」試乗レビュー(葉月美優)

いざ走り出すと大勝利です! この貴重でスペシャルな6気筒バイクの本領発揮です。あの巨体が嘘のように軽やかにヒラヒラと飛ぶように走行できます。エンジン回転数を常に把握していた訳ではないのですが、低い回転でも高い回転でも、ギクシャクすることなくフワ~っと優しくも鋭い加速をしてくれます。

いかにも「頑張ってます!」といった主張がないのに、スッと気を使ってくれる紳士のような優しさに溢れています。これが6気筒エンジンなのか! と感動しつつも、あまりにジェントル過ぎて、すぐに当たり前のように、違和感なく馴染むというか、手の内にできるというか、圧倒されて手に負えないようなことがないのが嬉しかったです。

走行時の私は大きな物体にしがみつく様に見えたかもしれませんが、実はとても一体感があります。大きなシートは身体をドッカリ預けやすく、豪華なソファに座っている様に落ち着きます。大型のバイクにありがちな、足回りのクッションが硬いものが多く、一体感が生まれづらいのですが、K1600GTはその点でも優しいのです。ライダーの体重や積載重量を感知し、自動で乗り心地の良い設定にしてくれるんです! すごいですよね! なので、大きさを感じさせず、フンワリと心地良く走行することができました。

画像3: BMW「K 1600 GT」試乗レビュー(葉月美優)

元々大きなフロントカウルのお陰で走行風から守られているのですが、速度が上昇するにつれて肩より上の風の当たりがキツくなってきます。ところが、左ハンドルスイッチ操作だけで、電動でスクリーンの高さを調整できるんです。それはもう、無風状態と言っても良い感じで、快適すぎます!

6気筒を堪能すると意気込んでいたのですが、あまりにも紳士的過ぎて、そしてあまりにも快適すぎて拍子抜けしてしまいした。それだけ大らかで、扱いやすくて極上の一体感が真のラグジュアリーマシンなんだな~、と実感しました。ひょっとして、K1600GTなら、どこまでも疲れ知らずで走行し続けることが出来るかもしれません。

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