第2ヒートの最後、会場中から上がった悲鳴の理由
第2ヒートの最終アタッカー、A級・冨永選手。実は、その前を走っていた中嶋選手のタイムが、第1ヒートの冨永選手のタイムを上回れなかった時点で、冨永選手の優勝は確定したんです。しかし、そのことを知ってか知らずか、冨永選手は全力で会心のアタックを決めて、一気に約0.8秒もタイムを短縮して見せました。
そのタイムが読み上げられた瞬間、会場中で比喩ではなくて「あ〜あ…」という、悲鳴のようなどよめきが聞かれました。その理由は、ジムカーナのシード昇格システム。ご存知のない方に簡単に説明すると、ある大会のトップタイムを100%として、自分のタイムが何%なのか? で昇格が決まります。
ノービスがC2級に上がるには115%、以下C1級になるには110%、B級になるには105%のタイムを切ることが必要(A級昇格には別の基準がある)。そう、今回の冨永選手は最後の最後で昇格圏内にいた選手たちの希望を一気に打ち砕いた、ということ。それが、あのどよめきの理由なのです。こういうのをジムカーナ界隈では「虐殺タイム」なんて言ったりしますね。ちなみに今回、仮に冨永選手が第1ヒートのタイムのままだったとして、昇格できたのは3人だったそうですが。
ダンロップ杯は何年ぶり!? 作田選手、ZRX1200Rで参戦の秘密
今シーズンのダンロップ・オートバイ杯も、総合トップを狙ってニンジャ400で走っていたA級の〝キング・オブ・ジムカーナ〟作田選手。しかし第3戦では、以前SB級をターゲットとしていた時のマシンで、作田選手の大のお気に入り、今も時々走らせているというZRX1200Rを久々に持ち込んでいた。
それは、ダンロップから新たに発売されたばかりの、ジムカーナライダーも注目のハイグリップラジアルタイヤ「スポーツマックスQ5」を、実戦でテストするため。Q5は会場で現物もタイヤ単体で展示されて注目されてましたね。
そのQ5は今回A級で冨永選手&NSR250Rが総合優勝してジムカーナでのデビューウインを飾り、さらにSB級でもA級・辻家選手&GSX-R1000がクラス優勝して、その高いポテンシャルを証明。作田選手は久々のマシンに新しいタイヤの組み合わせということもあって、A級17位、SB級7位。
大会終了後、作田選手にQ5のインプレッションを聞いてみると、「足回りのセッティングそのままで、Q4と同じ空気圧で走らせたら、なんかグニャグニャで全然ちゃんと走れなくて。そしたら、タイヤの空気圧を相当高くしなきゃいけないっていうから、第2ヒートはかなり高くして走ってみたんだよね」
「そしたら最初の悪い感じは消えたけど、今度はリアがグリップする分、フロントが逃げちゃうようになって。結局、今日はあんまり上手く行かなかった。でもQ5はグリップ力が本当に強烈だし、足回りまで含めたセッティングが決まれば文句なしに速くなるよ」と、手応えは掴んだ様子。テストとかいいつつ、次の大会もZRXで走ってたりして?
自走エリアに並んだ「沖縄ナンバー」ジムカーナマシンの謎
二輪ジムカーナは自走参戦も珍しくない。だからトランポの駐車スペースとは別に、自走参戦組向けの二輪駐車エリアが用意されています。しかし今回は、そのエリアにずらりと「沖縄ナンバー」のマシンが5台並んでました。何と沖縄から自走? と思いきやそんな訳はなく、マシンを船便で東京・有明に送り、ライダーは空路移動。港で引き上げてから自走してきた、と。なーんだと言うなかれ、わざわざ沖縄から来るだけで十分凄いんですから! 3泊4日の強行軍だって。
実はこの5台、沖縄・宜野湾市にあるバイクショップで、沖縄でのジムカーナイベントなどにも関わっている「アウトバン」御一行様。昨年のダンロップ杯第2戦へ遠征するつもりが中止となってしまったので、1年以上越しになる念願のダンロップ・オートバイ杯参戦。この記念写真には、アウトバンのイベントに参加している作田選手や、当日エントリーしていた沖縄出身選手も加わって賑やかでですが、この日彼らの周りは終始こんな感じでした。せっかくなんで、沖縄から遠征してきた5人の走る姿も紹介しましょう!
レポート:小松信夫