競技志向の強いエンデューロマシンなど、オフロードモデルを得意とするイタリアのメーカー、ファンティック。近年はオフロードモデルと並んで、レトロなスクランブラー風スタイリングと、現代的なオフロードモデルのメカニズムを合体させた個性的モデル、キャバレロシリーズでも注目されている。
 
2022年モデルでそのキャバレロシリーズのラインナップに加わったのが「キャバレロ500エクスプローラー」。パワフルな449㏄水冷単気筒エンジンを積み、あらゆる地形に対応可能なキャバレロ500ラリーがベース。フロントアップフェンダー、エンジンスキッドプレート、ヘッドライトガード、タンクバッグ、サイドバッグなどを装備することで、レトロな雰囲気のアドベンチャーモデルに変身させたものだ。
文:アドベンチャーズ編集部/写真:柴田直行

ファンティック「キャバレロ500エクスプローラー」インプレ

画像: FANTIC CABALLERO 500 EXPLORER 総排気量:449cc エンジン形式:水冷4ストOHC4バルブ単気筒 シート高:860mm 車両重量:150kg 税込価格:140万円

FANTIC CABALLERO 500 EXPLORER

総排気量:449cc
エンジン形式:水冷4ストOHC4バルブ単気筒
シート高:860mm
車両重量:150kg

税込価格:140万円

カテゴライズされない、自由で冒険心を駆り立てられる個性

たとえば都市の中で、レトロさを感じさせるスタイリッシュなシティスクランブラーとして、移動の手段だけでなくライフスタイルを豊かにするアイテムになる。

たとえばワインディングならば、コンパクトで細身の車体による軽快なフットワークで走り抜ける。

たとえば旅に出たいならば、後ろのキャリアとシートに大きな荷物を積んで、自分が知らない場所を探して日が落ちるまで進む。

たとえば荒野を走りたくなったなら、キャバレロラリー譲りの走破性が道を選ばず、大いなる自然と自分しかいない世界に突入。

イタリアのファンティックを代表する機種であるキャバレロシリーズに新しく加わったキャバレロ500エクスプローラーから、これまでのカテゴライズに収まらない自由さを感じてしまう。我らの悪いクセで、すぐに分類してグループ分けしてしまう。それはときに正しく用途をあらわすけれど、その型にハマらなければネガティブな要素になりかねない。

ファンティックがアドベンチャー=冒険ではなく、エクスプローラー=探検家と、未知に挑戦する行為ではなく、それをやる人としたことが興味深い。アドベンチャーツアラーでは定番の、大きな燃料タンクや大きなフロントフェアリングがないことをポジティブな特徴と捉えている。

画像1: ファンティック「キャバレロ500エクスプローラー」インプレ

重い上着を脱いだような視界と、ダートバイク的なアップハンドルよる軽やかな動作。ステップ荷重に素早くリアクションする。ストローク感のある前後サスペンションとデュアルパーパスタイヤの組み合わせ。ホイールは前が19インチで後ろが17インチのワイヤースポーク。当然ながらロードスポーツみたいなクイックさはないけれど、乾燥重量150kgと軽いことと、1435mmと長すぎないホイールベースから、素直に倒れて見た目から想像したより向きが変わりやすい。

そのパターンから接地面がロード向けより小さく、剛性もそれほどでもないこのタイヤでも、路面に接地しているのがライダーに伝わり、滑り出しを感知しやすい。突然の破綻でドキッとすることはなかった。

この足はいざ本格ダートでもかなりやれる。1960年代テイストを感じる丸い形状の燃料タンク(実際はインナータンクで外側は樹脂カバー)や、オーバルのゼッケンプレート風サイド外装、スクランブラーモデル風2本出しアップマフラーなど、レトロなデザインから、スタイルを主体にしたモデルと思われるかもしれない。されども実際はもっと欲張っている。

倒立フォークのストロークは200mmとオンロードモデルより明らかにトラベルが多く、伸び縮みの減衰調整が可能なフルアジャスタブル。軽量で高剛性な長めのアルミスイングアームとボトムリンク式リアサスペンションによる柔らかくても抑制のきいた動き。

画像2: ファンティック「キャバレロ500エクスプローラー」インプレ

燃料タンク(カバー)は前後が短く、サイド部分がシートのサイド面へと引っかかりなくつながっていることで、ライダーが体を前後に移動させての荷重変化を瞬間的にできて、凸凹道でのコントロールを楽しくする。

21/18のオフロードで定番のホイールサイズよりひとまわり小さいながら、走破性はなかなかだ。公道を走ることができる市販オフロードモデルに大きくひけをとらない。生半可なアドベンチャーモデルは道を譲らなければならないかも。舗装された道と、ギャップが多い石の道で走りの釣り合いがいい。アンダーガードも標準装備しているし、2チャンネルABSは独立したスイッチでキャンセルしてからダートに突入した。

車名の数字は“500”となっていても、水冷シングルカムの4バルブ単気筒エンジンの排気量は449cc。パワースペックとしては最高出力40HP、最大トルク43Nm。アロー製マフラーから出てくる乾いた排気音はエンデューロレーサーのような迫力がある。

けれども運転すると尖った印象はどこにもなく、低回転域から中回転域までじわーっとした粘りのあるトルクで、さらに回して高回転に入れると加速に拍車がかかる。その間には機敏で神経質に感じるところはない。違和感や角がない特性。入門したてのライダーでも大胆にスロットルを開けて乗れると思う。

画像3: ファンティック「キャバレロ500エクスプローラー」インプレ

それだから、濡れた舗装路から柔らかい土の上でも、リアタイヤを滑らせにくく、簡単にトラクションを得て前に進む。エンジンや車体で構成されたバイクという機械は、組み上げられた結果ではなく、作り手がこうしたいという意思が大きく反映されたもの。日常で使えるオールラウンド性能を持たせながら、エキサイティングな気持ちになれる部分がちゃんとある。このへんはイタリアメーカーらしさか。

キャバレロ500エクスプローラーは、様式や常識、環境にとらわれず、どんな乗り方も受け入れてくれる全方向に向いた探検家。きっと新しい世界、バイクライフへとたどり着ける。

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