文:小松信夫
2022年8月発表の新型車「フェーザーFZ15 ABS」、販売戦略が露骨!
今回は珍しく、ついこのあいだ、8月の末に発表されたばっかりというバリバリのニューモデルですよ! ブラジル・ヤマハの、なんですけど…「フェーザーFZ15 ABS」というんでございます。
これ、「フェーザーFZ15 ABS」公式ホームページのトップ画像。右側にポルトガル語で書かれてるキャッチコピーは「工場を出た時から凄ええええええ!」的な意味のようで、写真も頑張って「凄ええええ」感を表現してますが、ライダーの顔のスマイルマークの出来損ないみたいな処理が全てをぶち壊してるような気が。もう少し格好良くできるだろうに…。
えー、要するに「フェーザーFZ15 ABS」は、ブラジルでも人気になってるらしい150〜160ccクラスで、スポーティで使い勝手が良く、しかもカッコいいのが欲しい! というユーザーの欲張りな要求に応えるオールラウンドなネイキッドスポーツである、と。
すでにそのクラスをカバーする「フェーザー150UBS」というモデルが存在してるんですが、その上級版なのね。
十分な動力性能に加え信頼性も高い149cc空冷単気筒のエンジンは「フェーザー150UBS」と「フェーザーFZ15 ABS」はスペックまで共通で、ブラジルでは広く普及しているエタノール燃料に対応できるのも同じ。
しかし前後ホイール径は実用性、安定性重視の18インチから、軽快な17インチに変更、タイヤもラジアル。フロントフォークは同じ正立でも250 クラス並のインナーチューブ径が太いものになり、リアサスもツインショックからプリロード調整もできる堅牢なモノクロスサスに。ブレーキも前後連動UBSからより安全性の高いABS(フロントのみ)を採用するなど、「フェーザーFZ15 ABS」の車体周りは大幅グレードアップ。
しかし、そういう走りを支えるメカニズムより、おそらくブラジルのライダーが注目するのは、そのモダンなスタイルのような気が。タンクからシートにつながるボディラインは、力強さを感じさせるマッシブな造形。マフラー、フェンダーといった細部まで手抜きなく「カッコ良く」仕上げられててですね。
そして、その個性を際立たせるフロントマスク。LEDプロジェクターヘッドライトにLEDポジションライトを組み合わせた、最近のMTシリーズなんかにも通ずる先鋭的で軽快なデザイン。吸気口? らしきものを備えたタンクと合わせて、存在感は強烈で150ccとかいう感じがしない。
このスタイリングは、「フェーザーFZ15 ABS」の兄貴分である250ccモデル「フェーザーFZ25 ABS」と共通なイメージで仕上げられているのは一目瞭然。その共通性もウリになってるんだろうなぁ。
メーターはコンパクトなサイズでも使いやすい、液晶パネルを用いてギアポジション、燃料計などの多彩な情報表示を実現したもの。タンデムも含めて快適性の高いデザインのシートや余裕のあるポジション設定などなど、使い勝手に関わる部分も手抜きなし。
この新しい「フェーザーFZ15 ABS」、すでにインドでは販売されてた「FZ-FI」をベースに、ブラジル向けに仕立直されたモデルってことで、基本メカニズムは共通。だけど細かくデザインが違うし、タイヤはピレリのディアブロ・ロッソllを標準装着してたり、以外に独自性が発揮されてますな。
とにかく、この「フェーザーFZ15 ABS」って、ブラジル・ヤマハがえらく力を入れてる。なんでこんなに力が入っているのか? それは強力なライバルがいるから! そう、ブラジルで人気の150〜160ccクラスで根強い人気を誇る、ホンダ「CG160」シリーズ、中でもスポーティバージョンである「CG160タイタン」を強く意識してるんですねぇ。
「フェーザーFZ15 ABS」の公式ホームページを見ていると、こんな表が。
ポルトガル語の「COMPARATIVO」って「比較」ですから…そう、ライバルである「CG160タイタン」と、その上級モデルである「CB250ツイスター」と、「フェーザーFZ15 ABS」の装備や機能を比較してる! こっちの方が上だよ、って自信の現れ。雑誌やWebならともかく、公式ホームページ上でこんなことが許されるのか、ブラジル! 現代の日本じゃ考えらないけど、そんだけバチバチな販売競争が今も展開されてるのね、地球の裏側では。
文:小松信夫