いよいよ今週末は3年ぶりに開催されるMotoGP日本グランプリです。先週末、台風がやってきて、ライダーやチーム、使用機材の日本到着はダイジョーブ?と思っていたんですが、ライダー陣はまず、先週末のアラゴンGPを終えて、20日火曜あたりから続々と日本到着。さっそく羽田で、成田でライダー待ちしてくれたファンのみなさんもいるみたいですね。
そして今日21日水曜には、東京・お台場のダイネーゼ台場店で、ドゥカティワークスチームのジャック・ミラーのインストアイベントが行なわれました。事前申し込みのダイネーゼユーザーさんたち、そしてもちろん、一般のファンも参加可能なライダーイベントです。考えてみれば、こういうMotoGPイベントも3年ぶりなんですねぇ。
イベントに先立って、ジャックの個別インタビューもセットしていただきました。もうこれ、即出しなんで、細かいニュアンスは違ってるかもしれませんけど、だいたいこういう流れでインタビューしてきたんです。
――Welcome back ジャックさん。3年ぶりの日本ですね。
「そうだねー、楽しみにしてたんだ。3年ぶりだよ、長かった! 僕、日本大好きなんでね」とニコニコ顔のジャック。
ジャックのイメージといえば、ヤンチャでイケイケ、ちょっとおっかない感じの節度を持った乱暴者(笑)って感じだったんですが、物静かではっきりコメントをくれる、すごいノリのいい物静かな青年。前にお話しした時はもてぎの中で、レースウィークだったから、明らかにテンション上がってましたからね。
だから、上のコメントだって「僕、日本大好きなんでね」って日本語訳していますが、これは「オレ様は日本大好きだぜ、ふふふふ」でもなく「私は日本が大好きですから」でもない、そんなニュアンスでお伝えします。
――もう日本は何回目になるの?
「最初に来たのは、まだ2ストロークバイクの頃だから…、あれが2011年? だから、うーん、すごいいっぱいだよ(笑) スズカで8耐だって出たからね」
――日本のどういうとこが好き?
「まず街がイイよ。シティがコンパクトで清潔、安全じゃない? オーストラリアなんてデカくて、すぐ砂漠だもの(笑)。すごい大きな街があって、すこしクルマで走ればきれいな大自然があるじゃない? そのバランスが好き。昨日も夜、日本の友だちとペッコ(注:チームメイトのフランチェスコ・バニャイア)、パオロ(注:ドゥカティのテクニカルディレクターかな、チャバッティさん)とご飯食べてたんだ。そうそう、日本はご飯も美味しいよね。あとね、これは重要なんだけど、日本のファンのみんな、すごい礼儀正しいよ」
――でもさ、ヨーロッパでドゥカティのファンなんて『ワーオワーオ!フォルツァジャッカース!』ってノリじゃない? ああいうのも熱狂的で、ティフォシっていうんだっけ? ああいうのもいいじゃない!
「度を超えなきゃね(笑)。イタリアとかスペインのファンって、熱狂的なんだけど、すぐ垣根超えてきちゃう。おぉ、盛り上がってるなー、って思うときと、ちょっと勘弁してよー、って時があるんだ。その点、日本のファンはすごく礼儀正しい! ここから超えないで、ってところはきちんと守るし、それでも熱狂する時は熱狂してくれるじゃない? ライダーみんな、日本のファンっていいよなー、って言ってるんだよ」
ジャックさえ何回目か覚えてないほどの日本グランプリ。ここまでジャックは、2015年からの5回のMotoGPで、17年はケガで不参加、予選最上位が18年の3番手、決勝最上位は19年の10位。Moto3では14年に決勝5位になっているけど、うーん、ちょっとイマイチ?
――もてぎの印象はどうですか?
「もてぎはね、ブレーキングとスローコーナーの組み合わせのレイアウトで、実は好きなコースなんだけど、まだ優勝してないし、表彰台にも上がってないよね。すごくチャレンジングなコースで、挑戦し甲斐があるところなんだ。いつも今年こそ、今年こそ、って思うんだけどね」
――そういえば、5~6年前に他のインタビューでケビン・シュワンツに話をしたことがあるんだけど、ケビンはジャックのことを「ナンバー1ブレーキングプレイヤー」だって言ってたよ。アンドレア・ドビツィオーゾと並んでね、って。
「ほんと! ワーオ、嬉しいな! ケビンはぼくのアイドルなんだよ。そんな人に言ってもらえてたのか! じゃぁ頑張らないとなぁ!」
――ドゥカティ・デスモセディチは、今までドライブに強い(日本語で言うと直線番長っぽい表現)って言われてたけど、日本でレースのなかったこの2~3年は違うよね。去年から今年なんかは最強マシンじゃない!
「そうなんだよ、今のデスモは直線も速いし、コーナリングだって速い! あとはそれをどうコントロールするかなんだけど、それはペッコとかエネア(バスティアニーニ)が上手いよね。負けないようにしないと」
――特に今年は、シーズンインの時に、ファクトリーチームは最新のエンジンを使わない、って決定があったじゃない?それは影響してないの?
「今年のマシンはね、シーズンオフにたくさんテストをして、僕もたくさん意見を言って決まった仕様なんだよ。最新のエンジンは、たしかにアグレッシブだったけど、僕はそこをアジャストしながらシーズンインしていけばいいと思ってたんだ。でも、それはドゥカティの決定。僕が使っているエンジンだって強いし、それはペッコが証明してるよね。1レースをコンスタントに走ろうとするなら、僕のエンジンの方がいいと今でも思うよ」
今シーズン、ジャックはここまでの15戦で、ミザノでのポールポジションを含んで予選フロントロウが6回、レースでは優勝はなく、表彰台が5回。悪くはないが、21年に2勝したことを考えると、本人も納得はしていないだろう。
――もてぎでは誰が敵になりそう?
「ペッコだね。あとはエネア、それにマルク(マルケス)だってもてぎは速いんだよ。タカ(中上貴晶)は右手をケガしちゃってるから心配だよね。結局、日曜の朝にはみんな速くなってるんだよ(笑)」
ここで中上の名前を出してくれるところが、ジャックの気配りなのだ。イケイケでヤンチャだって思っててごめんよ、ジャック。
「僕も今年がドゥカティのラストシーズン、自己最高の結果を持ち帰りたいよ。来年からは新しいプロジェクトに参加するから、それも凄い楽しみなんだけどね。まずは自分のベストの結果で今シーズンを終わりたい」
――もてぎの表彰台に上がるジャックさん、期待してます! そういえばさ、表彰台でブーツにシャンパン入れて飲むパフォーマンスするじゃない? あれってなーに?
「わははは、あれも最近やってないなぁ。あれはね、まぁちょっとノリというか、悪ふざけっていうか、オーストラリアでパーティやって最後には盛り上がってあれをやる、ってことが多いんだ。もてぎであれ、やりたいなぁ!」
オレはやるぜ、ふふふふなんて不敵にニヤリ、ってジャックを思い描いていたんだけど、それはなし(笑)。
実に気遣いのある態度で、誠実に、日本人ジャーナリストのへたくそな英語に付き合ってくれる好青年でした。やっぱりこうやって話しすると、すぐ好きになっちゃうね。がんばれジャック! また週末、もてぎで会おうね!
写真/川元浩二・中村浩史・motogp.com 文責/中村浩史