文:太田安治、小松信夫、オートバイ編集部/写真:森 浩輔
ヤマハ「Xフォース ABS」インプレ(太田安治)
ライダーを飽きさせないスポーツ性も魅力
取り回しと機動性に優れたコンパクトな車体、高速道路走行OKの利便性で人気を高めているのが排気量150cc程度の軽二輪スクーター。ヤマハはマジェスティS、NMAX155、トリシティ155でニーズに応えてきたが、新たにXフォースが登場。既存モデルとの違いをチェックしてみよう。
フロント周りのボリューム感と高めにセットされた幅広ハンドルで、ルックスはタフなSUVイメージ。着座位置が高いので跨がるとモタードモデルのような開放感がある。ライダーを含めた重心位置が高めなのでハンドリングもモタード的で、フロントからスパッと向きが変わって切り返しも軽快。フロントブレーキの強力な制動力と高いコントロール性、遅めのABS介入タイミングもスポーティな走りを生み出すポイントだ。
エンジンは新世代の水冷155cc。停車中は振動を感じるが、走り出してしまえば単気筒とは思えないほどスムーズ。クラッチミートのタイミング、繋がり方も穏やかで、極低速域でも走りやすい特性。全開加速では最大トルクを発生する6500回転近辺を保ち、80km/hあたりまでグイグイ加速する。
VVA(可変バルブタイミング機構)は約6000回転で切り替わるが、切り替え時に音やショックはなく、加速性能が急に変化することもない。基本的にNMAX155と同じエンジンだが、Xフォースのほうが全回転域で力強い。おそらくVベルト変速レシオを少しショート(加速型)に振っているのだろう。
それと引き換えに、100km/h時は7300回転を超えるので、高速道路クルージングではやや騒々しいが、このクラスの現実的な使われ方を考えるとストリートでの扱いやすさ、力強さを優先した変速設定は正解だと思う。
乗り降りのしやすさなど、コミューター適性の高いアンダーボーンフレームを採用しているのも特徴。さすがにハードブレーキングからそのまま寝かし込むような走り方だと縦方向と捻れ方向にフレームのしなりが出るが、タイヤのグリップ限界に近い領域でのことで、街乗りでは気にならない。
応答性のいいハンドリングと、生産国の台湾でタンデム頻度が高いことを考慮したのか、前後サスはやや硬め。一人乗りならリアのプリロードを弱めに調整するといいだろう。
街乗りメインのスクーターであっても、ライダーを退屈させないスポーツ性を備えるのがヤマハ車らしいところだ。