現代人の首は非常に負担が大きい
最近スマホ首なんて言葉をよく聞くんですよ。ストレートネックともいうらしいんだけど、どうやらその名の通りスマホの見すぎで首の骨がまっすぐになるとか。
首は横から見ると背骨を含めたS字の弧を描いてて、そのアーチで頭部の重量を支えてる。
スマホやパソコンを注視する姿勢とか猫背が日常的に続くと、アーチがなくなっちゃうってことらしい。
で、ストレートネックになると、頭部を支える際の負荷が大きくなって、頸椎にダメージが発生しやすくなるとか。
つまり現代人は、ストレートネック傾向によって、頸椎にダメージを負いやすくなってるともいえるらしいのね。これがまず前提ね。
さまざまな業界で頸椎保護の動きは出てる
さて。
首、つまり頸椎は、なにせ超重要な部分なので、損傷したりヘルニアになったりすると重大なダメージにつながってしまう。というわけで首を守る保護具がいろんな業界で発達してるのよ。
たとえばアメフト。
ネックロールという防具の登場で、重大な頸椎損傷が大きく減少しているとか。アメフトってめっちゃ当たるし吹っ飛ぶもんね。ネックロールの構造はシンプルで、ヘルメットとショルダーパッドの隙間を埋めることで、衝撃を首ではなく体に逃がすことが出来るってわけ。
お次は四輪業界。
JAF公認レースで装着義務化されているHANS(Head And Neck Support)が有名。読み方はハンズね。ちなみにハンズは商標になってるので、FHRシステム(Frontal Head Restraint systems)という方が正確かも。
肩に載せたショルダーサポートとヘルメットを、テザーと呼ばれるベルトで接続することで、クラッシュ時に頭部が前傾するのを防止する方式。
かなり高額だし、首の自由度が大きく制限されるので、レース専用装備って感じね。
ネックブレースとネックカラー
じゃあバイク用はどうなんだろう。
オンロードレースだと革ツナギの背中上部に頸椎保護パッドがついてたりするけど、普通のツーリングで革ツナギってのはちょっと敷居が高い。
そこでネックブレース。オフロードレース業界では頸椎保護が早い時期から考えられていて、今でも進化し続けてるのよ。
理屈としては、事故などでヘルメット(頭部)が大きく動いた際、頸椎が損傷しないよう、ヘルメットを支えてくれるっていうワケ。
で、今回試してみるのは、ATLAS(アトラス)社の「エアー」。
アトラスエアーは、その名の通りネックブレースの中でも軽さにこだわったモデル。具体的には580g。軽量だけど、最新設計のフレームで衝撃を広範囲に分散してくれる。
ただ、オフロードレースなどで活用されてるアイテムなので、軽いとはいえ見た目はゴツイ。あと、SSとかで極端に前傾がきついモデルだと、首の動きが阻害されるかも。
そんな中、注目を集めてるのが同じくアトラスから出ている「ヴィジョン」これはネックブレースじゃなくて、ネックカラー。
ネックカラーというのは、頸椎への圧迫軽減にターゲットを絞った、新しいスタイルの頸椎保護具。
積極的にヘルメットを支えてくれるネックブレースに対して、動きを阻害せず頸椎保護が出来るという画期的なもの。。
特長としては、首の可動範囲が広い。それこそセパハンでも楽勝じゃないかな。
あと、見た目がスマートで装着してる感がほとんどない。
装具自体の高さも低いので装着したら普通に服に埋もれちゃう、というかツーリングの際に装着してても気づかれないかも。
アトラス ヴィジョンを装着してクロスカブでSSTRを走ったSKTさんに、そのときの印象を聞いてみた。
2021年のSSTR参加したときにアトラス ヴィジョンを装着していたんですが、違和感は一切ないですよ。正直いって、走り始めたら装着したこと自体忘れてました。
下道で往復500km以上走りましたが、宿についた時や帰宅して服を脱ぐときに「ああ、付けてたな」っていうくらいです。
違和感なさすぎて、コメントがしづらいですね。
なんか「長距離だと~」とか「休憩したときに~」みたいなコメント期待したけど、なんもストレスなかったみたい。いや、良い事なんですけどね。
エアーもヴィジョンも、オフロード業界で知名度の高いアイテム。じゃあオンロードのフルフェイスでもちゃんと支えてくれるのかが気になるところ。
こればっかりは実際にやってみるしかないので、試してみよう。
使用ヘルメットはNOLAN N80-8
さて、実際に試すにあたって選んだオンロード用フルフェイスヘルメットがこちら。
NOLANのN80-8。
NOLANといえば2022MotoGP最終戦バレンシアGP で優勝したスズキのアレックス・リンス選手をはじめ、さまざまなライダーに愛されるイタリアの高性能ヘルメットブランド。
インナーバイザー、ピンロック、緊急時のリリースシステム(NERS)を装備したフルスペックモデルですよ。
さらにインカム取り付け可能な内装形状や配線通し用のホールなども設けられてて、死角ナシ。グラフィックモデルやソリッドモデルがラインナップされてるんだけど、自分はこのソリッドのスレートグレーがお気に入り。
アトラスエアーとNOLAN N80-8を組み合わせた首の可動範囲
さてやってみよう。ヘルメットはN80-8で、服はインナープロテクターの上にTシャツを着てます。
アトラス エアーを装着したときの見た目はこんな感じ。見た目はゴツイけど、装着してると意外なほどに違和感ナシ。軽いのもそうなんだけど、体に接する部分がうまいこと荷重を分散してるのね。
あと、個人的な感想だけど、このゴツさ、良いよね。強そうだしカッコ良い。
今回は省略したけど、このクリップ部分にストラップを通すことでしっかりと体にホールドさせることができるぞ。
前側の可動範囲
前側一杯まで首を倒すとこんな感じ。正直、予想よりも可動範囲が広い。思い切り真下を見ようと思うとちょっと厳しいかな。
後ろ側の可動範囲
後側いっぱいまで首を倒すとこう。こちらも真上を見るとかでなければよっぽど問題なさそう。
横方向の可動範囲
横方向はこんな感じ。結構傾けないと当たらない。ヘルメットつけて首を横に傾ける場面ってあんまなさそうだけど、事故の時は頭がどう動くかわからないからね。
聞いた話によると「転倒時にヘルメットの縁で鎖骨を折る事故が結構ある」そうな。
もっと窮屈な感じだと思ってたんだけど、正直そこまでじゃなかった。
それよりも安心感のが大きい。
動画も撮ってみた
アトラスヴィジョンを装着するとこんな感じ
さて、想像以上にエアーが良い感じだったので、ヴィジョンはさらに快適なんじゃないかな。
見た目からしてスマート。こちらもインナープロテクター+Tシャツの上に付けてるけど、見た目はネックスピーカー程度のスマートさ。
こちらも本来は、こういうストラップで体にフィットさせる。これがないと高速道路とかで浮き上がりそうだし、よく考えられてる。
前側の可動範囲
エアーと違ってほぼ真下まで見える。
印象としては、「積極的に支えるエアー」に対して、「やばい角度にならないようにするヴィジョン」という感じ。
後ろ側の可動範囲
後側いっぱいまで首を倒すとこう。前側以上に自由度は高くて、わざと当てにいかない限り当たらないレベル。停止時にヘルメットをかぶったまま空を見上げても大丈夫。
横方向の可動範囲
横方向もちゃんとサポートしてくれる。横方向に関してはエアーと同じくらいかな。
エアーと比較した場合、特に前後方向の可動範囲が広い。なによりエアー自体が目立たないのも良いね。正直、これだったら普段でも出がけにさくっと装着して走れる。
動画で見るとこんな感じ
まとめ
エアーは見た目以上に窮屈さがなく、安心感がすごい。外した時に「今は守られてないのか」みたいな不安を感じるくらい。
ヴィジョンについては、ほんと負担なし。全然気にならない。
ちなみに四輪カートなんかでも、ネックブレースなどの導入は進んでいるそうな。HANSはかなり高額だからね。
頸椎損傷は本当に怖いし、そもそも現代人の首はかなりストレスにさらされてるので、頸椎保護はもっと広まって欲しいな。
レポート:若林浩志