文:小松信夫
カブのよさとスクーターのよさをミックス? ブラジルのホンダ「Biz125」
こないだ、3年ぶりに開催されたカフェカブ in 青山に行ってきましたが、ま〜あ人気ありますねスーパーカブって。百人百様、まさに1台1台異なるカブ愛の形が集まっておりました。ただでさえ人気あったのに、ここ数年さらに加速した感がありますな。
当日の会場には現行モデルのスーパーやクロスやCTはもちろん、新旧さまざまのスーパーカブが集まっておりまして、結構海外モデルなんかも見かけたんですけどね。ただ…こいつは居なかった(と思うんですけどね。もし居たのなら御免なさい)なぁ。ブラジル生まれの超モダンデザインなカブ的モデル、「Biz125」は。え? カブじゃないよこんなもん、だって? カフェカブには「Wave125」とかも参加してたから、これもカブ一族のうちでしょ。
ほら、こんなハイホイールスクーターみたいなナリしてますが、ちゃんとチェーンドライブですよ。決してスクーターではありません。まあ、フルカバーチェーンケースじゃないから、原理主義者的にはアウトって言われそうだな。
エンジンだってねぇ、この通り空冷の横型の単気筒ですよ。もちろん遠心クラッチでペダル操作のみで変速OK。これは125ccだからまさにWave系ってことなのかな。アンダーボーンな車体形状だし、まあ「カブの要件」は満たしているでしょう。
でも、ブラジルで「Biz125」を求めるユーザーは、このモデルのカブ的な部分の中でも、利便性や信頼性、経済性という面にフォーカスしてるんですね。だから長い伝統で磨かれたカブのメカニズムを支持しながら、一方でメーターはこんなに現代的なデザインの液晶メーターがイイ! ということになる。
車体後半部分も、やっぱり今時のスクーター風。というかこのシートのデザインなんてスクーターそのものだね。こいつは最早、スクーターの車体にカブのエンジンを載せたモデル、というべきなんだろう。
前ヒンジの大きなシートをカパっと開ければ、そこにはヘルメットが収まる収納スペースと、その後方に燃料タンクが現れる。ここだけ見せられるとカブ一族とはとても思えない。ちなみに、ヘルメットの入ってない画像がないんで、どれほどの収納力があるのかいまいち良く分からないんだけど。
おまけにスペース内には充電用のUSBポートまで用意されてますよ。これも日本向けのスーパーカブでは今の所まだ装備されてないよね。便利だし実際にカブのカスタムとしては良く見かけるから、メーカーが付けちゃえばいいのにと個人的には思うけど。しかし、日本のカブユーザーはこういう利便性を、カブたるものに積極的に求めてない。カブの本質から乖離してると思ってるのかなぁ。
要するに日本のカブ支持者のかなりの部分は保守的というか、侘び寂びを愛でるかのように「カブらしさ」への情緒的なこだわりがあるのは間違いない。一度はヘッドライトが角形になったのに、LEDなんだけど丸型へ回帰しちゃったというのも、初代C100の呪縛ということなんでしょうか。
一方日本を遠く離れたブラジルの地では、100%道具としての利便性を求められ、日本的な感覚では異形な「Biz125」へたどり着いたと。そいうや、実用とは逆方向に触れた「POP110i」なんてのもありますね。しかし、そういうさまざまな要求を一手に引き受ける、懐の深さというのがカブの魅力の一つなんでしょうか。
文:小松信夫