オートバイのドライブチェーンで世界No.1のシェアを誇る日本の企業を知ってる? それは石川県加賀市に本社を置く大同工業の「D.I.D」チェーンだ。今回は、D.I.Dのマイスターにバイク用ドライブチェーンの疑問質問を答えていただいた。広大な工場も見学してきたよ。MotoGP用チェーンの秘密から純正チェーンの舞台裏まで! 知ってトクするチェーンのウンチクを大公開!
まとめ:オートバイ編集部/写真:関野 温
  1. 【Q&A】二輪用チェーンに関する23の質問・疑問

Q.13 チェーンの張りすぎはなんでいけないの?

A.張りすぎるとサスペンションの動きを邪魔する

サスペンションがストロークすると、ドライブスプロケットの中心とスイングアームピボット、アクスルシャフトの3点が同一線上に重なった地点でチェーンが一番張る。この時、チェーンを張り過ぎていると、サスペンションが自由に動かなくなる。スプロケットとの正常な噛み合いのためにもチェーンには適切なたるみが必要なのだ。

画像: Q.13 チェーンの張りすぎはなんでいけないの?

Q.14 チェーンの寿命はどのように判断するの?

A.シールチェーンなら通常1万5000km~2万km以内で交換

新品の状態からチェーンアジャスターで約1cm引っ張ったくらいが使用限度。シールチェーンなら通常1万5000km~2万km以内、ノンシールチェーンなら5000kmでの交換が望ましい。チェーンが伸びると操作性や乗り心地、燃費が悪化するだけでなく、チェーンの騒音も大きくなる。チェーンは劣化スピードが遅いのでライダーはその悪状況に慣れてしまっていることが多い。なので距離を目安に定期的に交換しよう。

画像: チェーンが曲がった状態は、シールが破れてグリス漏れをおこしサビが発生していることが多い。またピンの削りカスが溜まって固着することもある。

チェーンが曲がった状態は、シールが破れてグリス漏れをおこしサビが発生していることが多い。またピンの削りカスが溜まって固着することもある。


Q.15 チェーンをつなぐときのクリップの向きがわからない…。

A.クリップの口を進行方向とは逆に向けるのが正解

チェーンをジョイントする方法は、「カシメ」と「クリップ」のふた通りある。簡単なのはクリップなのでこれを使う人は多いのだが、クリップの向きを間違えている人も多いそうだ。正解はクリップの口を進行方向に向けない。もし口の開いた方を進行方向に向けると、クリップがなにかに接触した場合クリップが外れる可能性があるからだ。

画像: ジョイントはカシメが一番強度が高いので、シールチェーンならクリップよりもカシメの使用を推奨する。

ジョイントはカシメが一番強度が高いので、シールチェーンならクリップよりもカシメの使用を推奨する。


Q.16 チェーンカバーが付いてると寿命は伸びるの?

A.チェーンカバーの効果は絶大で耐久性に貢献する

カブ系に使用されているチェーンはノンシールタイプなので、まめにメンテナンスしないとすぐに伸びてしまう。しかし、カブ系の車両にはチェーンカバーが装着されていることが多いので、ダストや雨からチェーンを守ってくれる最適な環境なのだ。とは言えノンシールチェーンの寿命は約5000kmとシールチェーンよりも短いことを覚えておこう。

画像: チェーンカバーには清掃用の蓋がついているので、そこからチェーンルーブを吹くことができる。

チェーンカバーには清掃用の蓋がついているので、そこからチェーンルーブを吹くことができる。

画像5: バイクの「チェーン」について知っておきたい23のこと|メンテナンス方法・交換時期・おすすめの選び方をプロに聞いてみた!

Q.17 シールチェーンはメンテナンスしなくていいの?

A.チェーンルーブがシールの劣化を抑制してくれる

「シールチェーンはピンが削れないようにグリスを入れてシールで栓をしているので、メンテナンスの必要はない」と言うのは大きな間違い。シールチェーンもメンテナンスは必要だ。シールはゴムでできているので、雨風にさらしたままにするとひび割れが発生し、劣化してしまう。それらを予防するためにチェーンルーブにはシールを保護し、活性化する成分が入っている。これにより塗布後はチェーンがスムーズに回転するようになるのだ。

画像6: バイクの「チェーン」について知っておきたい23のこと|メンテナンス方法・交換時期・おすすめの選び方をプロに聞いてみた!
画像7: バイクの「チェーン」について知っておきたい23のこと|メンテナンス方法・交換時期・おすすめの選び方をプロに聞いてみた!

Q.18 灯油やパーツクリーナーでチェーンを洗浄していいの?

A.シールチェーンをパーツクリーナーで洗浄してはダメ!

シールチェーンの場合、灯油やパーツクリーナーで洗浄するとシールを傷める可能性があるので専用のチェーンクリーナーを使おう。どんなにチェーンがピカピカでも、シールが破れてしまったら交換するしかないのだ。またホイールに飛散したチェーンルーブはチェーンクリーナーではなく、パーツクリーナーで洗浄する。チェーンクリーナーには油分が入っているので使わない方がいいそうだ。

画像: パーツクリーナーでチェーンを洗浄したくなる気持ちはわかるが、シールチェーンに使用するとゴム製シールの劣化を早めてしまう。灯油も使わない方が賢明だ。

パーツクリーナーでチェーンを洗浄したくなる気持ちはわかるが、シールチェーンに使用するとゴム製シールの劣化を早めてしまう。灯油も使わない方が賢明だ。


Q.19 チェーンのメンテナンス方法を教えて!

A.チェーンメンテは走行直後に行うのがベスト!

チェーンは走行中、外気温の+20~30℃くらいまで発熱するので、走行直後にメンテナンスを行うと溶剤の浸透性が良くなる。さらに次の走行までには溶剤が乾燥しているので飛散を抑えることもできるのだ。

画像: D.I.Dのチェーンルーブとチェーンクリーナー。清掃時はこの他にウエスとブラシも用意しよう。

D.I.Dのチェーンルーブとチェーンクリーナー。清掃時はこの他にウエスとブラシも用意しよう。

【メンテナンス方法】

チェーンのクリーニング

画像: チェーンを清掃するときは走行後のチェーンが熱をもっている状態がベスト。洗浄液が浸透しやすいからだ。

チェーンを清掃するときは走行後のチェーンが熱をもっている状態がベスト。洗浄液が浸透しやすいからだ。

画像: 清掃するときは毛の柔らかいブラシを使う。金ブラシ(上)を使うとシールが破けるので要注意だ。

清掃するときは毛の柔らかいブラシを使う。金ブラシ(上)を使うとシールが破けるので要注意だ。

画像: クリーナーを撒布するときは、タイヤにかからないようにウエスやペーパータオルでカバーする。

クリーナーを撒布するときは、タイヤにかからないようにウエスやペーパータオルでカバーする。

画像: 清掃後はウエスでタイヤを回しながら拭き取る。この時スプロケに手を挟まないように進行方向とは逆に回す。

清掃後はウエスでタイヤを回しながら拭き取る。この時スプロケに手を挟まないように進行方向とは逆に回す。

チェーンのグリスアップ

画像1: 給油するときもチェーンが熱をもっている走行直後に行うのが望ましい。グリスが浸透しやくなる。

給油するときもチェーンが熱をもっている走行直後に行うのが望ましい。グリスが浸透しやくなる。

画像2: 給油するときもチェーンが熱をもっている走行直後に行うのが望ましい。グリスが浸透しやくなる。

給油するときもチェーンが熱をもっている走行直後に行うのが望ましい。グリスが浸透しやくなる。

画像: タイヤを少しずつ回しながら先に述べた3カ所に給油する。タイヤにグリスがかからないように注意。

タイヤを少しずつ回しながら先に述べた3カ所に給油する。タイヤにグリスがかからないように注意。

画像: チェーンルーブが全体にいき渡ったら、余分な油をウエスで拭き取れば終了。スプロケに指を挟まないように!

チェーンルーブが全体にいき渡ったら、余分な油をウエスで拭き取れば終了。スプロケに指を挟まないように!


Q.20 サビたチェーンでもメンテナンスすれば使えるの?

A.プレートの点サビはチェーンが曲がったときにシールを攻撃する

サビが発生する状態になると、当然内部のピンやブシュも同様の状態であることが考えられる。メンテナンスして一時的には使える可能性はあるが、安全上、多量にサビが発生しているチェーンは使用しない方がいい。特に内プレートの点サビはチェーンが曲がったときにシールを痛める原因となる。

画像: ローラーのサビは走行すればスプロケットによって削り取られてしまうが、シールまわりの点サビはチェーンが曲がった時にシールを攻撃するので要注意。

ローラーのサビは走行すればスプロケットによって削り取られてしまうが、シールまわりの点サビはチェーンが曲がった時にシールを攻撃するので要注意。


Q.21 雨天走行したらメンテナンスしたほうがいいの?

A.雨天走行後は必ずメンテナンスしよう

雨の日に走るとチェーングリスが流れてしまうので、サビを予防するためにも必ずメンテナンスしよう。濡れたままにしておくとあっという間にサビが発生してしまうぞ。その他にサーキット走行や長時間高速走行したときもメンテナンスを行った方が望ましい。

画像: 雨天走行したら面倒でも必ずグリスアップをしよう。これをするのとしないとでは後々チェーンの寿命が大きく変わってくる。

雨天走行したら面倒でも必ずグリスアップをしよう。これをするのとしないとでは後々チェーンの寿命が大きく変わってくる。


Q.22 長期間乗らないときはどうやって保管したらいいの?

A.乗っても乗らなくてもシールチェーンの寿命は約5年

チェーン表面とシール部分を保護するために必ず保管前にメンテナンスしよう。シールチェーンの寿命は約5年ほどなので、5年以上経過したチェーンはシールが劣化して本来の性能を発揮できない可能性があるそうだ。

画像: 冬季はバイクに乗らない人も多いだろう。サビの発生を抑制する上でも保管前にチェーンをメンテナンスしよう。

冬季はバイクに乗らない人も多いだろう。サビの発生を抑制する上でも保管前にチェーンをメンテナンスしよう。


Q.23 スプロケットの丁数を変更するとチェーン長も変わるの?

A.ドライブチェーンの継ぎ足しは安全上推奨していない

一般的な車両であれば、基本的にスプロケット1丁の変更であればチェーンアジャスターで調整できるが、2丁以上増やす場合はチェーンの長さ変更が必要となる場合が多い。リンク数の計算は、D.I.Dのホームページにあるチェーンリンク計算表で計算することができるので利用してみよう。

画像: Q.23 スプロケットの丁数を変更するとチェーン長も変わるの?

まとめ:オートバイ編集部/写真:関野 温

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