文:小松信夫
普通の林道では物足りない!? ガレ場も楽に走れそうな「モンテッサ4ライド」
イギリスとかスペインとか、ヨーロッパのホンダWebサイトを見てると、「スーパースポーツ」とか「スクーター」とか「ストリート」とかに分類されてるラインナップの中に「モンテッサ」というカテゴリーがあるんですよ。モンテッサっていえば、元々はスペインのオートバイメーカー。
今はホンダの子会社になって、トライアル世界GPで走るHRCのマシンを筆頭に、昔から得意としてきたトライアルバイクを手掛けてるのはよく知られてるところ。ちょっと前はホンダ名義で売られる一般的な市販車の生産もしてたような気もするけど、どうやら今はそれもないみたい。
市販車に関してはモンテッサ・ブランドのトライアルマシンに専念してて、それがヨーロッパではホンダ系ネットワークで売られてるということ。まあエンジンはホンダ製だしね。
世界GPを走ってるマシンのレプリカみたいな「モンテッサ コタ4RT 301RR」とか、普通の街乗りオートバイとはかけ離れたスタイルで、シートも保安部品も付いてないシリアスな競技用トライアラーが、モンテッサというとまず思い浮かびますが。しかしそんな中に、普通のオートバイっぽいモデルが1台だけある。
それがこの「モンテッサ4ライド」。一見すると普通のオフロード用のオートバイ寄りなんだけど、スペックを見ると排気量260ccなのに車重がなんと82kgしかない。なんだそれ? 国内向けのオフロードモデル「CRF250L」が装備で140kgだから、乾燥重量だとしても驚異的な軽さなのが分かる。それはなぜかというとですね。
ガワは普通のオフ車っぽくしてるけど、よくよく見るとね、中身はまんまトライアルマシンなの。ベースになってるのは「モンテッサ コタ4RT 260R」って、モンテッサ製市販トライアルマシンの中では「梅」なモデルだけど。無理やり保安部品をくくりつけてナンバーが取れたとしても、とても街中を走る気にはなれないバリバリの本気モデル。
「モンテッサ4ライド」は、ホンダ製の水冷単気筒エンジンも、独特な形状のフレームも、基本的には「モンテッサ コタ4RT 260R」に限りなく近い。そりゃあ82kgで収まるワケだ。走りだってほぼトライアルマシンだから、オフロードで扱いやすいし、乗る人が乗ればとんでもないパフォーマンスを発揮する。
要するに「モンテッサ4ライド」は、競技としてのトライアルじゃなく、道があるのかよく分からないような山の中のハードなオフロードで、普通のナンバー付きマシンではできないような走りを楽しむためのオフロード・ファンバイク。トライアルマシンに自走での移動がある程度できるように保安部品を付けて、普通のオフ車っぽいシートも付けて、ハイ出来上がり。10年くらい前、似たようなモデルをあちこちのトライアルマシンのメーカーがこぞって出して日本にも入ってたけど…ヨーロッパではまだ需要あるんだね。
燃料タンクも「モンテッサ コタ4RT 260R」だと1.8Lしか入んないから、大きくされて4.3L。これなら軽くツーリングできるかな? 近代トライアラーの特徴である低ーいフレームを埋めたシートの下の空きスペースを「小物入れに使えます!」ってアピールしてるとこが、ちょっといじらしい。
「モンテッサ4ライド」のベースモデルの「モンテッサ コタ4RT 260R」って、現在もHRCが競技用に国内販売してる「RTL260R」とほぼ同じモデル(だよね?)。どうせなら国内でも「モンテッサ4ライド」を、ホンダが売ればいいのに! とか思っちゃいますが。
でもね、なんせもとが競技用だからお高いのよ。そもそもRTLだって税込110万円もするんだけど、「モンテッサ4ライド」のイギリスでの価格6899ポンド、今の為替レートの日本円換算で約115万円! もする。うーん、面白そうなんだけど、ちょっと浮世離れしすぎかね。
文:小松信夫