文:オートバイ編集部/写真:関野 温
Q.9 スプロケットの丁数を変えると加速や燃費・最高速が変わるのはホント?
A.フロントの丁数を1丁増減すると、リアスプロケットを2〜3丁増減したことになる
スプロケットはエンジンの動力をホイールに伝える役割を担っている。この伝える力を前後スプロケットの丁数を変えることで「加速重視型」、または「燃費・最高速重視型」のどちらかに変化させることができる。
たとえば加速を良くしたいのなら、フロントスプロケットの丁数を「減らす」、またはリアの丁数を「増やす」。燃費・最高速を伸ばしたいのなら、フロントの丁数を「増やす」、またはリアの丁数を「減らす」ことで好みの方向性にセットすることができる。しかし、どちらも一遍に良くすることはできない。加速力を取るか、燃費・最高速を取るか、二つにひとつしか選択できない。
加速力を重視 | 燃費・最高速を重視 | |
フロントスプロケット | 丁数を減らす | 丁数を増やす |
リアスプロケット | 丁数を増やす | 丁数を減らす |
実験
Q.前後スプロケットを1丁増減すると、エンジン回転数はどれだけ変わるのか!?
実験方法:XR250モタードの純正スプロケットの歯数は、前13丁、後39丁。この丁数で60km/h、6速ギアで走行したときのエンジン回転数は2500rpm。そこで純正丁数の前13丁のままで後を38丁と40丁に交換したときと、純正丁数の後39丁のまま、前を12丁と14丁に交換したときにエンジン回転数がどれだけ変化するかを検証した。
スプロケットの丁数と重量の変化
フロントスプロケット | リアスプロケット |
---|---|
12丁→120g | 38丁→200g |
13丁→140g | 39丁→240g |
14丁→160g | 40丁→260g |
結論
A.フロントスプロケットを交換した方が費用対効果は大きい
リアスプロケット1丁変更では、変化を感じない
リアスプロケットを1丁変更すると100rpm増減したのに対し、フロントスプロケットを1丁変更すると200rpm増減した(後掲の比較表参照)。先にも述べたが、フロントスプロケットを1丁増減するとリアスプロケットを2〜3丁増減することを証明した結果となった。つまり、コストをかけずに大きな効果を期待するなら、フロントスプロケットの交換がベストな選択ということになる。
60km/h・6速でのエンジン回転数
フロントスプロケットを変更 | |||
---|---|---|---|
前12丁 | 後39丁(純正歯数) | 2700rpm | |
前13丁(純正歯数) | 2500rpm | ||
前14丁 | 2300rpm |
リアスプロケットを変更 | |||
---|---|---|---|
前13丁(純正歯数) | 後38丁 | 2400rpm | |
後39丁(純正歯数) | 2500rpm | ||
後40丁 | 2600rpm |
Q.10 純正のスプロケット丁数から何丁くらいまで増減できるの?
A.純正指定の歯数から変更するときは注意が必要
純正指定のスプロケット丁数から歯数を変更するときは注意が必要だ。たとえばフロントスプロケットの丁数を2丁増やすとスプロケットが大径化したことで、チェーンとエンジンケースが干渉して装着できないことがある。逆に2丁減らすとチェーンラインが下がるのでチェーンスライダーに干渉しやすくなるので、アジャスターでチェーンを張る必要がある。
もし調整できないほど伸びた場合はチェーンを短くするしかない。これはリアスプロケットを2丁減らしたときも同じことが言える。その反面、リアスプロケットを2丁増やしたときは、チェーンが張りすぎてアジャスターでは調整できないこともある。この場合はチェーンのコマ数を増やすしかない。たとえスプロケットメーカーのカタログに純正指定の歯数が変わる商品が記載されていても装着できるという保証はないので注意しよう。
Q.11 スプロケットの交換は前後セットで行った方がいいの?
A.前後スプロケットとチェーンの3点セットでの交換が望ましい
新車の場合、一般的にスプロケットの寿命よりもチェーンの寿命の方が早く訪れる。この場合、チェーンのみを交換する人がほとんどだろう。しかし、Q.5で述べたようにスプロケットとチェーンは密接な関係にあり、どちらかの状態が悪ければ、その一方にもダメージを与えてしまうのだ。つまり新品チェーンに摩耗したスプロケットを組み合わせるとチェーンの寿命を早めることになる。
この逆も同じ、前後新品のスプロケットに摩耗したチェーンを組み合わせるとスプロケットの寿命を早めることになるので、総合的に判断して3点セットでの交換が望ましいのだ。交換時はハブダンパーが摩耗してガタついていないか、チェーンラインがズレていないか、適切にチェーンは張ってあるのかを必ず確認しよう。これらのうち一つでも問題があるとスプロケットとチェーンの寿命を早める原因になる。
Q.12 チェーンのサイズをコンバートしたらスプロケットも交換するの?
A.チェーンサイズが変わればスプロケットも適したサイズへ変更
近年はチェーンの性能が大幅に向上したため、純正指定のチェーンサイズから細いチェーンに変更する「コンバート」が一般的になった。たとえば525から520サイズへの交換。この場合チェーン幅が細くなるのでスプロケットも細いタイプに変更する。丁数はそのまま。
代表的なのはCB400SFの525チェーンから520へのコンバート。チェーンとスプロケットがサイズダウンするのでコストダウンできるが、耐久性は若干下がる。SR400はその逆で純正の428チェーンから520へサイズアップするカスタムが人気。当然サイズ・丁数も変わる。
Q.13 スプロケットに裏表はあるの?
A.刻印が見えるように装着するのが基本
基本的には「SUNSTAR」の刻印が見えるように装着するのが一般的だが、一部の車種は刻印をエンジン側に向けて装着する場合もある。よってスプロケットを外すときは装着してあるスプロケットの向きを必ず確認しよう。サンスターはそのような車両のスプロケットには注意書きが同梱されている。
【Short break】
スプロケットメーカー「サンスター」が監修したバイク専用チェーン
スプロケットの耐久性はチェーンの性能に大きく左右される。そしてチェーンの耐久性もスプロケットの性能に大きく影響する。つまりオートバイの駆動系はチェーンとスプロケットの相互作用によって機能しているのだ。60年以上もスプロケットを生産してきたサンスターは、そのノウハウを惜しみなく投入して開発したチェーンを2021年に発売。
シールチェーンのキモと言えるブッシュ内へのグリス封入を最大化する独自方法を開発したことで、ブッシュとピンの隙間に余すことなくグリスを充填できるようになった。これにより摩耗を抑制し、耐久性が飛躍的に向上した。サイズは520/525/530をラインアップする。
ゴールドチェーン
シルバーチェーン
スタンダードチェーン