文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ホンダ「レブル1100T DCT」インプレ(太田安治)
威力抜群のカウルでクルージングが超快適
「クルーザー」は前輪に大径ホイールを装着した低く長い車体に、低回転域でのトルクと鼓動感を重視したエンジン、という組み合わせが主流。こうしたアメリカンスタイルは淡々とクルージングを楽しむ走り方に適しているが、市街地やツーリング途中の峠道など、鈍重に感じてしまうシーンも少なくない。
だがレブル1100は従来のクルーザーとは様相がまるで異なり、ホイール径やキャスター角、ホイールベースといった車体ディメンションはロードスポーツモデル寄りの設定。エンジンも大排気量のイナーシャを感じさせず、レッドゾーンの8000回転まで軽々と回る。これほどオートバイとライダーの一体感が深く、高い運性能を秘めたクルーザーは他になく、幅広い層から支持されているのも当然と言えるだろう。
そして今回追加されたのが「レブル1100T」。専用設計の大型フロントカウルとサドルバッグを標準装備し、精悍なバガースタイルにまとめたツーリングモデルだ。
外気温一ケタ台での試乗で威力を発揮したのがフロントカウル。スクリーンが短いので防風効果はさほど期待していなかったのだが、高速道路クルージングでは胸元から下に風圧を感じず、両手も不思議なくらい冷えない。標準装備のグリップヒーターを最強にセットすれば、冬用グローブでは汗ばむほど。
スクリーンが視界を邪魔することも、巻き込んだ風が背中を押す不快感もない。このカウルはフレームではなくフロントステム回りに固定されているが、走行風圧によるハンドリング変化は気にならないレベル。カウル形状、重量、マウント方法を入念に作り込むことで大型カウルのネガ要素を解消している。
もうひとつメーカー純正のメリットを感じたのがサドルバッグ。デザイン的な一体感はもちろん、車体にピタリと沿わせることで張り出し量を抑え、取り付け部分の剛性バランスを最適化してグラ付きと振動も抑制。左は19L、右はマフラーとの干渉を避けた形状の16Lという容量で、泊まりがけのツーリングでも不足はないだろう。サドルバッグの重量が加わったためかリアからの突き上げが減り、乗り心地全体が優しくなっていることもツーリング適性の向上に貢献している。
足着きの良さ、電子制御デバイスの充実を含め、乗りやすさも抜群。大型初心者や小柄なライダー、ベテランまで、ユーザーを問わない仕上がりだ。