法人向けではなくコンシューマー向けとしてはホンダ製品初の電動スクーターとなるEM1 e:(イーエムワン イー)の発売日、価格、スペックなどが公表された。なお29万9200円(税込)という価格は、交換式バッテリー(Honda Mobile Power Pack e:、以下HMPPe)と充電器(Honda Power Pack Charger e:、以下HPPCe)の価格を含むものだ。
文:宮﨑健太郎
※この記事はウェブサイト「スマートモビリティJP」で2023年5月22日に公開されたものを一部編集し転載しています。

インドネシア仕様は2500万ルピア以上≒23万円以上と明かされていたが・・・

EM1 e:は欧州、インドネシア、そして日本での市販が予告されていた、ホンダ初のコンシューマー向け電動スクーターである。分類は原付一種(〜50cc)なので、4輪普通自動車免許で運転することも可能だ。母体となるのは中国などで販売されている五羊ホンダの電動スクーター「U-GO」であり、後輪ハブモーターを採用するU-GOを、交換式バッテリー仕様に設計変更したモデルといえる。

画像: EM1 e:のカラーリングは、「パールサンビームホワイト」と「デジタルシルバーメタリック」の2色を設定。動力用電源の交換式バッテリー、HMPPeはシート下に1個が配置される。切り替え可能な「ECONモード」を採用し、スロットル操作に対するモーター出力を抑制することで、省エネ走行ができる。 www.honda.co.jp

EM1 e:のカラーリングは、「パールサンビームホワイト」と「デジタルシルバーメタリック」の2色を設定。動力用電源の交換式バッテリー、HMPPeはシート下に1個が配置される。切り替え可能な「ECONモード」を採用し、スロットル操作に対するモーター出力を抑制することで、省エネ走行ができる。

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画像: フロント部内側には、500mlペットボトルも入るフロントインナーラックを用意。また携帯電話などのガジェット類の充電に便利な、USB Type-Aソケットを標準で装備する。ブレーキシステムは前後輪に適切な配分で制動力配分するコンビブレーキを採用。ブレーキはフロントがディスク式、リアがドラム式だ。 www.honda.co.jp

フロント部内側には、500mlペットボトルも入るフロントインナーラックを用意。また携帯電話などのガジェット類の充電に便利な、USB Type-Aソケットを標準で装備する。ブレーキシステムは前後輪に適切な配分で制動力配分するコンビブレーキを採用。ブレーキはフロントがディスク式、リアがドラム式だ。

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画像: リチウムイオン電池のHMPPe(左、Honda Mobile Power Pack e:)と、充電器のHPPCe(右、Honda Power Pack Charger e:)。バッテリー電圧は50.26Vで、容量は26.1Ahであり、ゼロから満充電までの所要時間は約6時間とのこと。 www.honda.co.jp

リチウムイオン電池のHMPPe(左、Honda Mobile Power Pack e:)と、充電器のHPPCe(右、Honda Power Pack Charger e:)。バッテリー電圧は50.26Vで、容量は26.1Ahであり、ゼロから満充電までの所要時間は約6時間とのこと。

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過去記事ではインドネシア仕様のEM1 e:予定価格が明らかになったことを紹介したが、注目の日本市場でのメーカー希望小売価格は29万9200円だった。EM1 e:はU-GO同様に中国の五羊ホンダで製造されるが、日本の車両レギュレーションや日本市場のユーザーの品質に対する厳しい目にたえられる製品にするため、日本仕様のEM1 e:には「その分」のコストが加算されていると思われる。

この希望小売価格の内訳は、車両本体が15万6200円、HMPPeが8万8000円、そしてHPPCeが5万5000円となる(いずれも税込)。昨年秋からホンダの技術を導入してスタートした交換式バッテリーステーションサービス業のGachaco(ガチャコ)を利用すれば、30km/h定地走行テスト値53kmという航続距離に対する不安が解消するだろう。しかしこの分野の先進国である台湾ほどには、現時点では日本のステーション網は充実していない(5月19日現在、Gachacoステーション設置場所は東京19ヶ所、埼玉県1ヶ所、大阪府5ヶ所)。

ちなみにGogoroが台湾全土に整備した、現在のGoステーションのサイト数は2513ヶ所、交換機のラック数は1万2407個におよぶ。そのライバルであるアイオネックス(Ionex、台湾スクーター大手のキムコの電動車ブランド)は過去2年間で1日平均2.5ヶ所というペースでステーション網の整備を進めており、現在その数は2000ヶ所を超えるに至っている。

Gachacoのステーション整備のスピードが今後どれほど加速するかは定かではないが、現状台湾ほどのステーション網の充実を望めない日本では、個々のユーザーがHPPCeを家庭や仕事先で使って、HMPPeを充電してEM1 e:を利用する・・・という付き合い方が当分は続くことになるのだろう。

ICE(内燃機関)搭載の既存モデルとの価格差は約7〜12万円

現在ホンダは、日本市場向けにタクト(17万9300円〜)ジョルノ(20万9000円〜)、ダンク(22万9900円)という3機種のICE搭載原付一種スクーターを販売している。それらに比べての、EM1 e:の価格は約7〜12万円高ということになる。

また実質、現状唯一の国内市場でのライバルといえるヤマハの電動原付一種スクーター「E-Vino」は、31万4600円である(※価格はいずれもメーカー希望小売価格、税込)。EM1 e:が高価に思えるか、お手頃価格に思えるかは、購入を考えるユーザーの電動原付スクーターに求めるもので変わってくるだろう。

画像: HMPPeの重量は10.3kg。気兼ねなく老若男女が持ち運びできる重量としては、ギリギリの水準といえるだろう。HPPCeの設置場所としては、EM1 e:を駐車する場所の至近が好ましい。なお某番組でその充電光景がおなじみのヤマハE-Vinoの50Vリチウムイオンバッテリーは6kgで、約3時間で充電することができる。 www.honda.co.jp

HMPPeの重量は10.3kg。気兼ねなく老若男女が持ち運びできる重量としては、ギリギリの水準といえるだろう。HPPCeの設置場所としては、EM1 e:を駐車する場所の至近が好ましい。なお某番組でその充電光景がおなじみのヤマハE-Vinoの50Vリチウムイオンバッテリーは6kgで、約3時間で充電することができる。

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導入コストの安さ、燃料補給のしやすさ、航続距離の長さなどからICE搭載原付一種スクーターを選ぶ人のなかには、エンジン特有の鼓動感を愉しみたいという愛好家的視点の持ち主も多いだろう。しかし排出ガスがなく、エキゾーストノートの騒音がないというメリットは、EM1 e:のような電動スクーターのみが享受できるものであり、そのメリットに魅力を感じる人は今後増加すると思われる。

米国で自動車ブランドに関する消費者行動調査を行なっているGfK AutoMobilityの2020年の分析によると、米国のY世代(1980〜1980年代生まれの、幼少時にIT革命を経験したデジタルネイティブ世代)とZ世代(1990 〜2000年代に生まれた世代で、生まれた時点でインターネットが利用可能)のうち、EVテクノロジーが自動車 購買の必須条件と考えている人はこの2年間で2.5倍に増えたという。

米国に限らず、先進国のY世代とZ世代はダイバーシティ(多様性)やサスティナビリティ(持続可能性)に関する教育を受けていることから、SDGsや環境問題に対する意識が高い傾向にある。2輪EVに関する同様の調査は現状では見当たらないが、おそらく4輪EVに対する意識と同じような傾向にあると想像できる。

なお数日前にYouTubeに公開されたEM1 e:のプロモーション動画には、#generationwhynot(何故しないのか? の世代)というハッシュタグを用いて、ストレートに電動車を選ぶ意義を訴えているのが非常に興味深い。

画像: www.honda.co.jp
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はたして今夏から日本市場で販売されるEM1 e:が、多くの人からどのように評されることになるのか・・・。それが明らかになるのを楽しみに待ちたい。なおEM1 e:は、全国のHonda二輪EV取扱店で販売されることになっている。購入を考えている方は、その店舗が対象かどうかを確認する必要がる。

ホンダ EM1 e: 主要諸元
◾️車名・型式 ホンダ・ZAD-EF16 ◾️全長×全幅×全高 1,795×680×1,080mm ◾️軸距 1,300mm ◾️最低地上高 135mm ◾️シート高 740mm ◾️車両重量 92kg ◾️乗車定員 1人 ◾️一充電走行距離 53km(30km/h定地走行テスト値)◾️最小回転半径 2.0m ◾️原動機形式・種類 EF16M・交流同期電動機 ◾️定格出力 0.58kW ◾️最高出力 1.7kW(2.3PS)/540rpm ◾️最大トルク 90Nm(9.2kgfm)/25rpm ◾️タイヤサイズ フロント 90/90-12 リア 100/90-10 ◾️ブレーキ フロント 油圧式ディスク リア 機械式リーディング・トレーリング ◾️懸架方式 フロント テレスコピック リア スイングアーム ◾️フレーム アンダーボーン式 ◾️動力用バッテリー Honda Mobile Power Pack e: x 1個

画像: 2023 EM1 e: Generation Why Not www.youtube.com

2023 EM1 e: Generation Why Not

www.youtube.com

文:宮﨑健太郎
※この記事はウェブサイト「スマートモビリティJP」で2023年5月22日に公開されたものを一部編集し転載しています。

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