文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸、ホンダモーターサイクルジャパン
ホンダ「XL750トランザルプ」インプレ(宮崎敬一郎)
優しさと快適さを武器に臆せずどこにでも行ける
トランザルプは1987年にオールラウンドツアラーとして600のVツインで登場。一時国内市販もされたが、最終的には輸出モデルだった2008年登場の700Vを最後に一旦市場から姿を消したものの、今回このXL750として名前が復活した。
幅広いトルクバンドを得るのに有利とされるユニカム式のパラツインエンジンは新設計。車体まわりでは衝撃吸収性と走破性を睨んでスポークホイール+21インチフロントタイヤや、頑丈なアフリカツインのリアアームを転用するなど、酷路走破能力にかなり力を入れたレイアウトになっている。メインフレームレイアウトとエンジンを共有するスポーティなネイキッドのCB750ホーネットの兄弟車だが、その車体構成に抜かりはない、本気のアドベンチャーモデルだ。
そのキャラクターだが、ホンダらしく、全ての応答が人に優しい! 武器はこの「優しさ」だと言っていいかもしれない。
まず、オンでもオフでも乗り心地がかなりいい。特に高級なサスというわけではないのだが、減衰の立ち上がりが滑らかで、それが様々な衝撃吸収時の衝撃の角を丸める。サスストロークは長めだが、オンロードでそのピッチングの大きさや、スポーティな機動をした時の車体の落ち着きのタイムラグなどは全く気にしなくていい。強力な旋回性ではないが、足まわりは即座に落ち着き、素直にリーンし、よく踏ん張る。
ライディングモードを「スポーツ」にしていても、エンジンのツキ、吹け上がりは意外なほど穏やか。操作は気楽だ。だがスロットルレスポンスはリニアで力がスゴい。なにしろ、ライバルたちより10~20馬力も強力なのだから。速度の乗りはその分元気がいい。
この扱いやすさによって、オフでも力を自在に制御できる。ライディングモードにある「グラベル」は、ダートで積極的にマシンコントロールを楽しむためのものではなく、確実なグリップで誰でも踏破できるような設定。アグレッシブに走りたいなら「ユーザー」を選んでパワーはスポーツと同じ4、トルクコントロールはオフ、ABSもリアを解放するオフにするといい。
どこでも快適で扱いやすいのがトランザルプの魅力。この武器を活かしてどこにでも行く気にさせる。ツーリングエリアは乗り手次第で大きく拡張可能だ。