2023年8月6日、MotoGP第9戦イギリスGPがイギリスのシルバーストン・サーキットで行なわれた。クラシカルなサーキットであるシルバーストンを舞台に、イギリスらしい不安定な天候の中、刺激的なバトルが繰り広げられた第9戦。チャンピオンシップにも動きのあったイギリスGPを制したのは今季苦戦を強いられていたアプリリアとA.エスパルガロだった。

第8戦に続きM.ベッツェッキがポールポジション獲得

画像: 雨中のシルバーストンを最速で駆け抜けたベッツェッキ。

雨中のシルバーストンを最速で駆け抜けたベッツェッキ。

土曜日に行われた予選はあいにくの天候で気温、路面温度とも低いコンディションで行われ、Q2進出をかけたQ1では、フランコ・モルビデリ(Monster Energy Yamaha MotoGP)が速さを見せた。

早々にトップタイムを叩き台sたモルビデリは周回を重ねるごとにファステストラップを更新。2分15秒884という2位以下に1秒以上の大差をつけ、トップで予選Q2への進出を決めた。アウグスト・フェルナンデス(GASGAS Factory Racing Tech3)はラストアタックに2番手に食い込み、こちらもQ2進出を決めている。

マルク・マルケス(Repsol Honda Team)、ファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP)といったチャンピオン経験者、日本人ライダーの中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)もQ1敗退となってしまった。

予選Q2は天候は雨。ウェットコンディションを得意としているジャック・ミラー(Red Bull KTM Factory Racing)がターゲットタイムをマーク。難しいコンディションの中でのアタックということもあり、ランキング首位のフランチェスコ・バニャイヤ(Ducati Lenovo Team)をはじめ、アレックス・マルケス(Gresini Racing MotoGP)、ルカ・マリーニ(Mooney VR46 Racing Team)と転倒者が相次ぐ。

そんな中トップタイムを更新したのはランキング3位のマルコ・ベゼッキ(Mooney VR46 Racing Team)。ベッツェッキもタイム更新直後に16コーナーで転倒してしまうも、その後ベッツェッキのタイムを更新するライダーは現れず、2分15秒359を記録したベゼッキがポールポジションを獲得した。

2位にはミラー、3位は転倒がありながらもアレックス・マルケスが入っている。

画像: ドゥカティ勢に加え、ウェットコンディションが得意のミラーが2番手に食い込んだ。

ドゥカティ勢に加え、ウェットコンディションが得意のミラーが2番手に食い込んだ。

A.マルケスがベッツェッキを抑え込みスプリントレースで初優勝!

画像: ベッツェッキの追い上げを振り切ったA.マルケスが初優勝。

ベッツェッキの追い上げを振り切ったA.マルケスが初優勝。

土曜日のスプリントレースは、ウェットパッチがところどころに点在し、レコードラインは乾きつつあるというリスキーな路面の中で行われた。

ポールポジションスタートのベゼッキがホールショットを奪うもミラーが3コーナーでトップに浮上する。ホルヘ・マルティン(Prima Pramac Racing)、そしてアレックス・マルケスもトップ争いに加わり、アレックスが2周目にトップに浮上し逃げにかかる。

ファステストラップを刻みトップを快走するアレックスに対し、これまでスプリン地で圧倒的な成績を残していたバニャイアが失速。11位まで転落しペースを上げることができない。

バニャイアが苦戦しているレースでなんとかポイントを稼ぎたいベッツェッキはトップのアレックスに離されずについていく。その後方ではペースがよくないミラーをマーベリック・ビニャーレス(Aprilia Racing)とアレイシ・エスパロガロ(Aprilia Racing)のアプリリア勢が立て続けに攻略し、3位と4位に浮上。

ベゼッキがラストスパートをかけ、ファイナルラップで一気にアレックスとの差を詰める。しかしアレックスがトップの座を守り切りスプリントレース初優勝を挙げた。ベゼッキは2位に入りランキング2位に再浮上。3位にはビニャーレスが入り、こちらもスプリントで初の表彰台獲得となった。

画像: A.マルケスにとって最高峰クラスで初の優勝。次はメインレースでの優勝を狙う。

A.マルケスにとって最高峰クラスで初の優勝。次はメインレースでの優勝を狙う。

ファイナルラップで決着! A.エスパルガロが今季初優勝!

画像: イギリスGPは週末を通して天候に左右される展開となった。

イギリスGPは週末を通して天候に左右される展開となった。

決勝日もイギリスらしい天候に。レース前まで天候は落ち着いていたが、サイティングラップ直前に軽い雨が降り始める。各チームはウェットでのレースに備え、サイティングラップでウェットタイヤの皮剥きを行うなど対応に追われることになった。

しかし各車グリッドにつくと雨は止み、一転して晴天となった。20周の決勝レースは、スプリント同様、2番グリッドスタートのミラーがホールショットを奪う。その後ろではベッツェッキとバニャイアによる2位争いが勃発。

2位に上がったバニャイアはトップのミラーも捕らえトップに浮上。バニャイアを逃したくないベッツェッキもミラーを攻略しトップを追う。

6周目、波乱が立て続けにおこる。オープニングラップで他車との接触していたアレックスがスローダウン。自力でピットに向かったものの、リタイアとなってしまう。そして同じ6周目のストウコーナーの飛び込みでなんとベッツェッキが転倒。ハンガーストレートのブレーキングで転倒を喫し、痛すぎるノーポイントとなってしまった。

ライバルが消えたに思えたバニャイアだったが、2位に上がったアレイシがハイペースでバニャイアに猛追。

さらに3位のブラッド・ビンダー(Red Bull KTM Factory Racing)にビニャーレス(アプリリア)もトップ争いに追いつき4台での優勝争いとなる。

そんな中、レースも終盤に差し掛かったところで、雨を知らせるレッドクロスが掲示される。これでマシンチェンジが可能となったが、当然先頭集団はピットに向かうことなくバトルを展開していく。

雨が強まる中、マルク・マルケスやエネア・バスティアニーニ(Ducati Lenovo Team)が転倒。転倒者が相次ぐ中、予選16番グリッドのミゲル・オリベイラ(CryptoDATA RNF MotoGP Team)が驚異的な走りを披露。一気に3番手まで上がり、表彰台圏内に入ってきた。

テールトゥノーズのままファイナルラップに入ったバニャイアとアレイシ。アレイシが一瞬の隙をつき、高速3連続コーナーのひとつ目、マゴッツの飛び込みでバニャイアをオーバーテイク。残りのコーナーでもバニャイアを防ぎきり、今シーズン初優勝を挙げた。

2位にはバニャイア、3位にはオリベイラとのバトルを制したビンダーが入っている。

画像: ディフェンディングチャンピオンとの一騎打ちを制したA.エスパルガロが今季初優勝!

ディフェンディングチャンピオンとの一騎打ちを制したA.エスパルガロが今季初優勝!

2023 MotoGP 第9戦 決勝結果

画像: resources.motogp.com
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次戦はレッドブルとKTMのお膝元オーストリアGP

次戦は第10戦オーストリアGPは2週間後の8月18日から20日にかけて開催される。サーキットの名称の通り、レッドブルが買収したサーキットであるレッドブル・リンクは全長4.32km、右コーナー8、左コーナー3、626mのストレートを持つ、全長の短いサーキットである。

エンジン全開率が高く、高いエアロ効率が求められるサーキットであるため、今回もドゥカティやアプリリアといったイタリア勢が強そうだ。

しかし高低差のあるサーキットで1周をまとめ上げるのは至難の業。トラックリミットも多くとられるサーキットであるため、予選から厳しく油断できない戦いが繰り広げられるだろう。

レポート:河村大志

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