文:太田安治
自然給機から過給機時代へ!? 国内4社のターボ大戦勃発!
当時のオートバイ編集部も購入したCX500ターボ
1980年代のライダーは「ターボ」と聞くだけでドキッ! としたはず。『排気ガスの流れる力でタービン(羽根車)を回し、吸入空気の密度を高めて多くの酸素を燃焼室に送る』と説明されても何のことやらだけど、同じ排気量なら最高出力も最大トルクも大きくなるから、「ターボチャージャー付きエンジンは自然吸気エンジンより偉い!」といったイメージはみんなが持っていた。
だから二輪量産車初のターボエンジンを搭載したCX500ターボが1981年に市販されたときは、業界騒然。でも輸出専用車だから簡単には乗れない。そこで逆輸入車の1台をモーターマガジン社が買って、オートバイ編集部の管理に。ワクワクしながら乗らせて貰ったんだけど、「……?」というのが第一印象。
まず車体がズッシリ重い。乾燥重量で239kgだから、今風の装備重量にすれば260kg程度。パワーは82馬力で、自然吸気の750cc車よりちょっと速いかな? くらい。ターボラグを抑えて扱いやすくした結果とはいえ、高回転まで引っ張ってもエキサイティングさはない。でも中回転域のトルクは1000ccエンジン並みに太くて乗りやすさは抜群。走れば車重も感じなかった。
ターボ以上に印象的だったのがウインドプロテクション性能。大きなフロントカウルに角度の立ったスクリーンで、走行風がまったくと言っていいほど体に当たらない。面白がって雪がチラつく真冬に東京から御殿場までの東名高速を半袖Tシャツ1枚で走ったけど、体のどこも冷たくならず、横を走る自動車のドライバーは唖然として見ていた。それだけツアラー特性に振った設計だったんだ。
逆に夏は地獄。エンジン発熱量が大きいからラジエターファンが頻繁に回って熱風が襲いかかってくるし、走っても走行風が当たらないんだから。編集部の夏休み期間中に1週間預かったとき、高速道路のSAとかに毎日通って見せびらかそうと思ってたのに、夜に1回乗っただけで降参した。
ヤマハXJ650ターボもツアラー的なキャラクターは同じ。スズキXN85はコンパクトな車体でデザインもスポーティなのに、走ると意外におとなしい。2台とも排気量が650ccある分、CXターボより速いけど、それでも1000ccエンジン程度。ただ、カワサキ750ターボは112馬力で1100cc車並みに力強く、配線をチョイと加工すると『幻のレースモード』になって130馬力超えという話もあった。
4車(CX500ターボ進化版のCX650ターボを入れれば5車)ともスロットルレスポンスとエンジンの発熱量、車重、価格がネガ要素になっていたし、自然吸気エンジンに対してのパワー優位性も言われていたほどじゃない。でもカワサキがH2にスーパーチャージャーを採用したように、過給システムにはまだ可能性があると思う。「ダウンサイジングターボ技術を使って400ccで100馬力、装備重量180kg台」みたいなオートバイが出たら、乗ってみたいと思わない?
文:太田安治