12月号、ってことはもう月号の上では2023年、おしまいですね。もうすぐ2024年!
そこで、Webオンリーの新企画、スタートしてみます。
題して「あの時きみは若かった~名車列伝」です。今回がPart01_Vol.03です。
本誌でも何度も取り上げている名車列伝ですが、時系列じゃなくて、車種とブランドで切り揃えていきましょう、って企画。
その時々の切り口をフックに、数ある名車をブランドごとに、タテ軸ヨコ軸を揃えていきます。
2ストローク250ccウォーズ激化!
RG250Γが火をつけたレーサーレプリカブームは、もう少し絞り込むと、2ストローク250ccクラスで起こった嵐だった。「打倒RZ」を旗印に生まれた250Γと同じく、ライバルメーカーも打倒RZを目指し、そこに負けじとヤマハも対抗作を発表する。これが2ストローク250ccクラスに留まらず、他の排気量にも飛び火し、これがHY戦争やバイクブームを牽引していったのだ。いわば2ストローク250ccクラスが、レーサーレプリカの発火点だった。
RG250Γ発売の少し前には、ホンダが2ストロークV型3気筒という、考えられないようなハイメカエンジンを搭載したMVX250Fを発売、ヤマハはRZ250に排気バルブを追加したRZ250Rを発売していた。
84年にはRG250Γがマイナーチェンジ、ホンダは販売が不振に終わったMVX250Fをたった1年で諦め、V型2気筒エンジン搭載のNS250F/Rを発売、カワサキもタンデムツインのKR250を発売する。85年にはRG250Γが3代目にフルモデルチェンジし、この年末にはレーサーレプリカ第2章と呼ばれることがある、ヤマハTZR250が発売されるのだ。TZRは86モデルと呼ばれることが多いけれど、実際には85年11月発売だった。
このヤマハTZR250が、RG250Γよりもさらにレベルが高い商品完成度、そしてポテンシャルを発揮していた。ヤマハはスズキと違い、250ccにTZ250という市販レーサーをラインアップしていたから、この「レーシングマシンTZ250と同時開発」という禁断のキャッチフレーズをもっての衝撃の登場だったのだ。
TZRは、80年のRZ250がそうだったように、このクラスの標準値をことごとく塗り替え、アッという間に販売ランキングトップの座を奪取。あれだけセンセーショナルな登場だったRG250Γが、どれだけ売れてもVT250Fのベストセラーの座に届かなかったのに、そのVTをTZRがストップしたのだ。
今度はホンダの番。TZR登場の翌年、86年10月にNSR250Rを発表するのだ。まさかのワークスレーシングマシンと同じネーミング(レーシングマシンはNSR250、市販モデルはNSR250R)で、市販レーサーRS250Rと同時開発という最後の一手を打ってきた。クラッチカバーには、それまでレーシングマシンにしか許されなかった「HONDA RACING」という刻印も入っていたほどの力の入れようだった。
この頃には、ストリートバイクの頂点だった2ストローク250ccのレーサーレプリカは、実際にサーキットで市販車ベースのレースに出場するベースマシンとしても人気となり、戦闘力という点で、レーサーレプリカブームは、TZRとNSRの一騎打ち。RG250ΓとKR250は、やや蚊帳の外に置かれてしまう。この両モデルの発売は、TZRが85年11月、NSRは86年10月だが、これは発売→レーシングマシンへのモディファイの猶予期間をもって、翌シーズンからレースに使用できる時期だったのだ。
88年には1月にNSR250Rが早くもフルモデルチェンジし、同じく1月にカワサキがタンデムツインを並列ツインに一新したニューKR-1を発売。3月にはV型エンジンを使用したRGV250Γが登場し、RGV250Γもいよいよ本格的にレースに参入するが、この頃にはNSRが実力面はもちろん、チューニングパーツやレーシングショップのケア環境で抜きん出ていて、89年にはヤマハが前方吸気後方排気エンジンを搭載するオールニューTZR250を発売するも、徐々にNSR一強といったレースシーンにつながっていく。91年にはヤマハはTZRの第3世代といえるVツインエンジンのTZR250Rを発売するが、サーキットでのNSRの『優位性は変わらなかった。レースで速ければ市販モデルも良く売れる――そんな時代に、市販車の販売台数でも、徐々にNSR一強となっていくのだ。
レーサーレプリカの元祖といっていいRG250Γは88年にRGV250Γへフルモデルチェンジし、90年にもマイナーチェンジ、92年には250ccの最高出力規制で45ps→40psとなったモデルも発売し、96年に最後のフルモデルチェンジを敢行。そのまま生産終了となり、2ストロークレーサーレプリカは、97年に最後のマイナーチェンジを受けたNSR250Rで終止符を打つことになる。
写真/モーターマガジンアーカイブ 文責/中村浩史