2023年11月19日、MotoGP第19戦カタールGPがロサイル・インターナショナル・サーキットで行われた。チャンピオン争いを繰り広げているフランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)とホルヘ・マルティン(Prima Pramac Racing)のポイント差は14。僅差の戦いが続く中、マルティンの勢いがなくなりつつある。一方、バニャイアはチャンピオンらしく着実に決勝に合わせ込み結果を残している印象だ。最終戦前の天王山、チャンピオンシップにおいて重要な1戦の行方やいかに。

マリーニがポールポジション!去就に注目が集まるディ・ジャナントニオが2番グリッド獲得

画像: レコードを樹立したマリーニがポールポジションを獲得した。

レコードを樹立したマリーニがポールポジションを獲得した。

ナイトレースのカタールGP。予選は日没前に実施され、気温27度、路面温度34度のドライコンディションの中で行われた。

予選Q1では中上貴晶(LCR Honda)が序盤に転倒。場所が最終コーナーだったこともありピットに戻った中上は、セッション後半にタイムを出さなければならなくなった。

各ライダーが続々とタイムを縮めていき、なんとレコードタイムを更新し合う展開に。Q2進出をかけた戦いはハイレベルなものとなった。

最終的にQ2進出を決めたのはヨハン・ザルコ(Prima Pramac Racing)とアレックス・マルケス(Gresini Racing MotoGP)のドゥカティの2台。ワークスチームであり、前戦マレーシアGPを制したエネア・バスティアニーニ(Ducati Lenovo Team)はタイム更新を狙うも、イケル・レクオナ(LCR Honda)に走行ラインを防がれてしまう不運もあり5番手止まり。無念のQ1敗退となってしまった。

転倒後、再スタートを切った中上はタイムを伸ばすことができず12番手。スプリントでは最後尾からのスタートとなった。

予選Q2はQ1同様にレコードタイムが更新されていく高速バトルとなった。まずトップに立ったのは ファビオ・ディ・ジャナントニオ(Gresini Racing MotoGP)。ルカ・マリーニ(Mooney VR46 Racing Team)が続き、大方の予想どおりドゥカティ勢が上位を占める。

ポールポジションが決まるQ2後半でもディ・ジャナントニオの勢いは止まらない。自己ベストをさらに更新する1分51秒829までタイムを縮めると、タイトルを争うバニャイアが1分52秒036を出し2番手につける。

各ライダー、セクターごとに全体ベストを刻むも最終的にはディ・ジャナントニオを上回ることができない中、ラストアタックでマリーニが1分51秒762を叩き出し土壇場でトップタイムを更新。カタールGPのポールポジションを獲得した。

2番手はディ・ジャナントニオ、3番手にはアレックス・マルケス。バニャイアが4番手、マルティン、ザルコが続き、ドゥカティ勢がトップ6独占となった。

画像: グレシーニレーシングが2-3グリッド獲得。トップ3にはドゥカティのサテライトチームが顔を揃えた。

グレシーニレーシングが2-3グリッド獲得。トップ3にはドゥカティのサテライトチームが顔を揃えた。

マルティン復活!得意のスプリントを制しバニャイアとの差は「7」にまで接近

画像: 持ち前のスピードが復活したマルティンがスプリント8勝目を挙げた。

持ち前のスピードが復活したマルティンがスプリント8勝目を挙げた。

陽が落ちた現地時間午後8時、気温23度、路面温度26度のドライコンディションの中、11周のスプリントレースがスタート。

ポールシッターのマリーニがトップでターン1を通過。一方、タイトルを争うバニャイアとマルティンは両者肘を当てながらの競り合いをしながらオープニングラップを消化していく。

オープニングラップのターン6ではバスティアニーニ、アレイシ・エスパルガロ(Aprilia Racing)、ミゲル・オリベイラ(CryptoDATA RNF MotoGP Team )が絡む多重事故が発生。レースはいきなり波乱の幕開けとなった。

上位勢はトップのマリーニとアレックスが若干抜け出す中、バニャイア、マルティン、ディ・ジャナントニオが3位争いを展開。なんとしてもバニャイアの前に出たいマルティンは2周目にギリギリの飛び込みでバニャイアをオーバーテイクし3位に浮上。

そこから直接対決が見られるかと思ったが、マルティンに抜かれたバニャイアはペースが上がらず、その後ディ・ジャナントニオにもパスされ5番手に後退してしまう。

バニャイアを攻略したマルティンとディ・ジャナントニオはペースを上げ、先頭の2台に接近。そして残り7周の最終コーナーでマルティンがトップに浮上した。

先頭に立ったマルティンはファステストラップを記録し逃げにかかる。終盤には2番手に上がったディ・ジャナントニオが迫るもマルティンがトップでゴール、スプリントでは8勝目となった。2位はディ・ジャナントニオ、3位はにマリーニが続いた。

思いのほかレースペースに苦しんだバニャイアが5位でフィニッシュ。マルティンが優勝したことにより、両者のポイント差は14から7に縮まった。ここにきて、決勝の結果次第ではランキング首位が入れ替わる可能性が出てきた。

画像: マルティンに続いたのはディ・ジャナントニオ。来季のシートに繋がる結果となるのだろうか。

マルティンに続いたのはディ・ジャナントニオ。来季のシートに繋がる結果となるのだろうか。

ディ・ジャナントニオが最高峰クラスで初優勝!マルティンはまさかの失速

画像: バニャイアのペースについていき、終盤に勝負をかけたディ・ジャナントニオ。

バニャイアのペースについていき、終盤に勝負をかけたディ・ジャナントニオ。

決勝レースは気温26度、路面温度28度のドライコンディションの中、22周で争われた。スタートで一気のトップに躍り出たのはバニャイアだった。4番グリッドから鋭い加速を見せたバニャイアがチャンピオン争いを有利に進めるべくレースをリードしていく。

一方、5番グリッドスタートのマルティンはリアを滑らせハイサイドしかけるなど大失敗。なんと8番手でターン1を通過することになってしまった。

バニャイアが先頭を走る中、マルティンのペースが上がらない。5周目にはマルク・マルケス(Repsol Honda Team)をオーバーテイクするも、先頭集団との差は徐々に開いていく。

安定したペースで逃げるバニャイアだったが、2番手に上がってきたディ・ジャナントニオを振り払うことができないでいた。3位以下が遅れ出したことにより、優勝争いはレース中盤にしてバニャイアとディ・ジャナントニオに絞られる。

バニャイアの背後にピッタリつけていたディ・ジャナントニオには『Mapping 8』という指示が飛ぶ。チャンピオン争いの渦中にいるワークスチームのバニャイアを抜くなというチームオーダーなのかは定かではない。しかしディ・ジャナントニオは残り4周でバニャイアをオーバーテイクしついにトップに立った。

マルティンが苦しんでいる中、少しでもポイントを稼いでいきたいバニャイアはディ・ジャナントニオ攻略に動く。残り3周のターン1で首位の座を奪い返そうとするが、ブレーキを遅らせすぎたバニャイアがオーバーラン。あわや接触かという状況だったが、バニャイアのオーバーランにより、ディ・ジャナントニオは思わぬ形でマージンを得ることになった。

ディ・ジャナントニオはバニャイアとのギャップを守り切りトップチェッカー。最高峰クラス初優勝を挙げた。2022年のカタールGPではバスティアニーニがグレシーニ・レーシングで初優勝を挙げており、それを彷彿とさせる新しいウィナーの誕生となった。

優勝は逃すもチャンピオン争いで俄然有利になったバニャイア。チャンピオン決定は最終戦にもつれ込んだが、21ポイントという大きなアドバンテージを得て翌週のバレンシアに臨む。3位にはポールポジションからスタートしたマリーニが入った。

画像: イタリア人ライダーが表彰台を独占。ディ・ジャナントニオは初めて自分に向けて流れるイタリア国歌に笑顔を見せていた。

イタリア人ライダーが表彰台を独占。ディ・ジャナントニオは初めて自分に向けて流れるイタリア国歌に笑顔を見せていた。

ペース不足のマルティンは最終的に10位でゴール。チャンピオンの可能性は残っているが、優勝は絶対条件であり、尚且つバニャイアの結果次第という厳しい条件となる。

中上は流れに乗れず19位。入賞とはならずノーポイントに終わっている。

2023 MotoGP 第19戦 決勝結果

画像: resources.motogp.com
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レポート:河村大志

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