文・写真:山ノ井敦司
オーナーが高校生の頃に初めて買ったモンキーがベースになっているこのマシン。所有して21年間、様々なパーツを組んでは外し、また新しいパーツを組みと、何度も姿・形を変えカスタムを楽しんでいたそう。
今回紹介しているマシンになるきっかけ、スタートは約10年前の2013年の時。自分が思い描くバイクの形と、使いたい部品を使う、収めたい場所にパーツを収めるなど、様々なテーマをかかげ、フレームから製作することに。オーナー自身が工業製品の製造業を営んでいるということで、仕事の後や、休みの時などに莫大な時間と手間をかけ製作された。
もはや純粋にモンキーの純正品として残っているのは、メインキーとタンクキャップぐらい。とことん追求された車体はミニバイクとしてはもちろん、バイクとして素晴らしいスタイリングとなっている。オーナーこだわりの各部を細かく紹介していこう。
モンキーとしてのフレームはもはやネック部分となり、ビッグバイクのようなダウンチューブを搭載し、スイングアームも挟み込みようなスタイルに。メインフレームは鉄で、取り外し可能となっているダウンチューブ部はアルミで製作されたハイブリッド仕様。あるとないとではマシンの印象を変えるサイドカバーも自作品。
オリジナルフレームに搭載されるエンジンはデイトナ製フィンガーフォロアーDOHCボア&ストロークアップキットを組み込み124.8cc化。クラッチには武川製スペシャルクラッチキットを装着し、カバーをオリジナルで製作。オイルラインやフィッティングなどに派手な色味を使わずブラックとアルミでまとめたことでシックな装いに。
異形のサイレンサーは車体に合わせてイチから製作することで、サイドへの張り出しも少なく限りなく車体に近づけたレイアウトに。エンドピースはアルミ削り出し、サイレンサー・エキパイはチタンで軽量に作られている。エンジン下で巻くトグロも、普段工業製品を作っているため、変な曲がりや歪みが許せず、キッチリとした直線、曲線になるようにこだわって製作。リング溶接の荒々しさ、機械感がたまらない。
ヘッドライトステーにはウインカーの取り付け穴も用意することで、フォークがステーだらけにならないようになっているのも細かいながらも注目してほしいポイント。他にも車体のサイドやネック下に取り付けるのが定番のステアリングダンパーは、あえてヘッドライト下、見せるように装着。ステーの素材にはチタンを使い、焼きを入れることでドレスアップパーツの1つとして両立させている。
ガルウイング形状を採用したトップブリッジ。自ら設計しただけあって、メーターなど各部とのクリアランスも素晴らしい。トップナットは「FULL BRIGHT」の頭文字をデザインした「FB」のロゴが入れられる。メーターはデイトナから発売されるVELONA電気式スピード&タコメーターで140km/hまで表示可能。ワイヤー、配線類の処理も見事。
GクラフトからリリースされるZ2アルミタンクをベースに、上面は素材を活かしたヘアライン仕上げとし、シートの前側と同じ高さだけ下側を塗装で仕上げた。タンクサイドに入る「FULLBRIGHT」はオリジナルブランドのネーム。タンクキャップがモンキー純正品というのは演出なのか、たまたまだったのか、ニクい仕上がりとなっている。
フロントフォークのボトム部もアルミ削り出しで製作。ゲイルスピードから発売されるこのラジアルマウントキャリパーをどうしても装着したかったということで、自分でデザイン、設計。ここまでのフルカスタムマシンだとダブルディスク化にしがちだが、オーナーさん的にはホイールも見えなくなるし、オーバースペックになってしまうということで、シングルディスクのままにしてある。
往年80〜90年代のビッグバイクのような無骨なスイングアームもオーナーが製作したもの。コチラもタンクと同じくヘアライン仕上げにすることで、ミニバイクというより、オートバイらしさが感じられる。ホイールは前後ともにOVER製GP-SIXで12インチ化。タイヤはVee Rubber製でフロントは110/60-12、120/55-12を履かせた。
テールランプはカワサキのZ900RSの純正を流用。あの車体のテールランプを流用と考えると大きすぎるのでは? と思ってしまうかもしれないが、実際に車体を見てもそんなことは感じなかった。シートカウルの被り具合など、相当計算したのではないだろうか。モンキーでロングスイングアームを装着したときにできるシート下、奥のスペースにはオイルキャッチタンクを装着。
こちらはSNSなどで少量だが一般に販売しているというフルチタンマフラー。見事な溶接にうっとりしてしまう。撮影当日も購入した方がその場で実際にマシンに装着しており、音を聞くことができたが、ありがちなバリバリ音、割れた音ではなく、低音で心地良いサウンドを奏でていた。
文・写真:山ノ井敦司