注意
本記事ではブレーキホース交換について紹介していますが、重要保安部品ですので、認証工場での取り付けを推奨します。また自分で作業する場合も、不安があれば無理をせずプロに依頼をしてください。
ステンレスメッシュホースでブレーキタッチをダイレクトに
今回はこの2本。SWAGE-LINE PROのハンターカブ用フロントホースキットとリアホースキット。
そもそもステンレスメッシュホースに交換するとどんなメリットがあるかというと、ブレーキを握ったり踏んだときの感触がわかりやすくなるのよ。それっぽくいうと、ブレーキタッチがダイレクトになる、ってこと。
ブレーキの制動能力自体はパッドやディスク、タイヤとかで決まってくるんだけど、その制動力をよりコントロールしやすくするためのものね。握ってもどこで効いてるかわからないブレーキだと操作しづらいじゃん。あくまで感触の話なので、人によって違いはあるけどね。
じゃあなんでタッチがダイレクトになるか。
ブレーキレバーを握ったら、その力でブレーキがかかるわけじゃん。下の図でいう黄色い矢印みたいなイメージで動いて欲しいわけ。
でもホースが膨張する素材だと、ブレーキレバーを握った力が、ホースを膨張させることにも使われちゃうのよ。赤い矢印の部分ね。
上の図は、あくまでイメージね。本来のフルード内の力の動きとしては、均等に力がかかるからこういう感じ。
ブレーキレバーを握った力が全部パッドにいけば良いんだけど、ブレーキホースを押し広げようとする方向にも力が働いちゃうのよね。例えば握った力の内、80%がパッドを押して、20%がホースを広げるのに使われちゃうと、20%分損失してる、つまりダイレクト感が失われてるってこと。あ、数値はテキトーだよ。
そこでステンレスメッシュホースの出番ですよ。
見るからに膨張とかしなさそうじゃん。ステンレスが巻き付けられてるし。
ステンレスメッシュが印象的だけど、実際には内部のテフロンチューブが低膨張の主役。ゴムホースと違ってほぼ膨張しないので、ダイレクトに力を伝えてくれるのよ。
こういう感じ。
SWAGE-LINEの場合は、ホースはテフロン引抜成型チューブで、それを守るのがステンレスメッシュ被膜。さらに特注PVCコーティングでステンレスメッシュも保護されてるってワケ。
この構造により、低膨張率と柔軟性、さらに耐久性も実現させてるのね。
ちょうど良い画像なかったからお絵かきしたけど、簡単に言うとこんな感じ。
さらに膨張率が低いだけじゃ無くて安全性にも凄くこだわってるのよ。
なんせブレーキに関わるパーツだからね。万が一があるとしゃれにならない。
そこでホースと先端金具をカシメることで、純正ホース同様の永久結合方式になってる。さらにカシメが露出してると破損リスクがあるので、独自のスカート&ダンパー構造でカシメ部を保護。
その結果、日本工業規格、いわゆるJIS規格も取得してるくらい信頼性の高い構造になってるのよ。もちろん車検にも適合してるよ。ハンターカブには車検はないけど。
くわしくは公式サイトを参照してね。
ちなみにSWAGE-LINEって名称は、swage=カシメから来てるらしい。
SWAGE-LINEとSWAGE-LINE PROの違い
ちなみに、SWAGE-LINEとSWAGE-LINE PROの2種類があるんだけど、簡単に言うと無印のSWAGE-LINEはシンプルな最低限の組み合わせで、PROはABS搭載車種にも対応した車種専用パッケージで、細かい取り付けパーツの付属したもの。ハンターカブとか最近のバイクは、ABS搭載してるのでPRO一択。
カラー選択について
カラーはホースがクリアとブラックの2種類。で、さらにアダプター部分がレッド&ブルー、ステンレス、ステンレスブラックの3種類。レッド&ブルーはアルミ製ね。SWAGE-LINE PROは全てステンレスバンジョーを採用してるので性能の違いはないんだけど、降雪地帯や海岸地帯の場合はステンレスがオススメとのこと。
個人的には、ブラックホースにブラックステンレスがまとまりが良い気がするけど、せっかくの高性能パーツだし、ちょっとアピールしたいじゃん。というわけで、クリアホースにステンレスで目立たせてみようかと。
見た目の効果もかなり大きい
左がノーマルホースで、右がプロトのデモ車でレッド&ブルーにクリアホース。ハンドルがEFFEXのシルバーだったりその他にも色々カスタムされてることもあるけど、ブレーキホースの存在感が全然違うのよね。
プロトのデモ車を試乗してSWAGE-LINEの効果をチェック
せっかくなので、プロトのデモ車に試乗させてもらって、スウェッジの効果を体感してみるよ。
これがプロトのデモ車、CT125 HUNTER CUB LAID-BACK ADVENTURE STYLE。
リアキャリアのサイドには、プロフェストのサイドマウントキットを使って、ロトパックスを装備。ロトパックスってのは、四駆のクロカン界隈やアウトドアでも人気のコンテナ。この赤いのはウォータータンク。多彩なカラーが用意されてるし、ほかにもストレージコンテナとかもあるよ。
シートにはゲルザブC。カブザブなんて呼ばれ方をすることも。ただのシートカバーじゃなく、ゲルザブを内蔵してて、日常使いやロンツーでのお尻の負担を大きく軽減してくれる。カブのゲルザブでカブザブってことね。
バーエンドはEFFEXで、レバーはBIKERS。ミラーはアドベンチャー界隈での人気アイテム、ダブルテイク。ラムマウントを利用したミラーで、めちゃくちゃ便利だし、相当タフよ。
詳しくは公式サイトを見てね。
さて、デモ車のチェックも完了したので、ちょっくらそこらを走り回ってきたよ。
で、最初に感じたのはリアブレーキがめちゃくちゃ使いやすい。自分のハンターカブだと、踏み具合とブレーキの効き具合が把握しにくかったのよね。効きがわからないからどこまで踏んでいいかわからない、みたいな。
転じてデモ車では、踏むとぐいっと効く。こういう言い方が良いかわからないけど、カブ90のリアブレーキタッチに近づいた感じ。古いカブってフロントがボトムリンクってこともあって、リアブレーキの依存度が高いのよね。大げさに言うと、リアブレーキだけで大体何とかなるってくらい良く効くのよ、古いカブは。
その感触に凄く近い。踏み具合と効き具合がダイレクトにリンクしてる感触だから、少し効かせるとかも余裕。これは効果絶大。
フロントに関しては、握ったときのふにゅっとした遊びが減少してる。今まではリアが使いにくかったから、フロントだけでコントロールしようとして、微妙におつりが出たりしたけど、リア同様にコントロールしやすくなってるからおつりも出にくくなってる。ブレーキで気を遣わなくなるというか、凄く楽になるね。元々制動力に不満はなかったので、操作のストレスが減ったってイメージ。
なんとなく、走りを求める人のパーツみたいなイメージあったけど、逆に普通に町乗りやツーリングで差が出る気がする。こりゃ楽だわい。
実際に装着してみよう
効果も体感したので、どんな風に取り付けるのかをチェックしたい。自分のハンターカブで取り付け工程を見せてもらうよ。
ただ、重要保安部品なのであくまで目安ね。実際に作業するときは、くれぐれもSWAGE-LINE PROの説明書に従って作業してね。
注意
記事制作のため、プロト社内にて特別に作業工程の撮影を行っています。
プロトでは業務としての取り付けは行っておりません。持ち込みなどにも対応できませんので、取り付け依頼については、最寄のオートバイショップやオートバイディーラーなどの認証工場を擁する店舗で取り付け依頼をしてください。
使用した工具
・トルクレンチ+13mmソケット
・13mmコンビネーションレンチ
・12mmコンビネーションレンチ
・10-12mmフレアナットレンチ
・8mmコンビネーションレンチ
・Tハンドル
・8mmソケット
・10mmソケット
・5mmヘキサゴンソケット
・#2スタビドライバー
・内装外し
※マフラーによっては19mmスパナも必要
だいたい普通の工具だけど、フレアナットレンチだけ初めて見る工具だ。
フレアナットレンチは、ホースの脱着においてかなり重要な工具です。スパナだと舐めてしまう可能性があるので、くれぐれもスパナで代用せず、しっかりとしたメーカー製のフレアナットレンチを使用してください。
ブレーキフルードも必要ですよ。
そうですね、せっかくだから新品にしたいですよね。そういえば、古いブレーキフルードはどうやって処分すればよいんですか?
ブレーキフルードについては、布などにしみこませて燃えるごみとして処分するパターンが多いようですね。ただ、行政区によってルールが違う可能性がありますので、居住地域のルールに従って処分してください。
ブレーキフルード交換のための道具はどんなものが必要ですか?
リアのエア抜きならば、こういうものとフルードを受ける容器があれば簡単に作業できますよ。
意外とハードル低そうですね。あれ、リアってことは、フロントは難しいんですか?
フロント側については、エアーコンプレッサーにブレーキブリーダーを装着して、エア抜きを行います。フルードを抜く時もこれを使用します。
コンプレッサーというとこういうやつですね。ハードル高いような。
ABSのない昔の車両なら問題ないんですが、ABSユニットによりホースの全長がかなり長くなっているんですよ。
エアツールなしでも、理屈の上ではエア抜きは可能ですが、かなり作業難易度が高いので、できればエアツールを使うかプロに任せた方が良いかと思います。
作業の流れ
作業の流れをざっくりと解説していくよ。PLOTのナオさんも言うように、ブレーキだけに失敗は許されないので、不安な人は認証工場のあるショップやディーラーに依頼してね。SWAGE-LINEはなんせ車検適合なので、どこのディーラーでも問題なく作業してくれるはず。
作業の前に外装を外そう
まずはセンターカバー。ハンターカブカスタムでは大抵ここからはじまるね。
5mmの六角棒レンチで真ん中のキャップボルトを外して、あとはクリップリベットを外したら、爪を折らないように気を付けて外すだけ。あとは六角棒レンチと10mmソケットで右のメインパイプカバーを外していくよ。ここまでは、ハンターカブカスタムだと定番の流れよね。
割と活躍するのが内装剥がし。
さて、右側だけどサイドカバーを外してからメインパイプカバー。右のメインパイプカバーを外すことはあんまりないと思うんだけど、ここの脱着にはマフラーも外す必要あり。
この時はタケガワのノーマルルックマフラーだったので、サイレンサーを外すだけで作業できた。
外装を一通りはずしたら準備完了。
リア側
なんでリア側からかというと、あくまで主観だけど、個人的にオススメなのがリア側だから。リアが使いやすくなることで、走行のスムーズさが格段にあがるし。あくまで自分がそう感じたってだけなので、人によって違いがあるとは思うけど。
あと、リア側は作業が楽なのよ。ハンターカブのABSはフロントにしかついてないからね。
リアはシンプルにマスターシリンダーとキャリパーを繋いでるだけ。なのでエア抜き難易度も低め。まずはリアをお勧めしたいな。とはいえ、リアだけステンメッシュホースにしても、フロントもやりたくなっちゃうとは思うけど。
まずはリザーバータンクの蓋を開けておくよ。ここはプラスネジ。
そしたらキャリアパー横にあるブリーダーボルトからフルードを取り出すよ。今回はブレーキブリーダーで。機械の力は凄いねェ。
これ、エアツールがない場合はどうやってブレーキフルードを抜けばいいんですか?
エア抜きポンプやシリンジといった名称の注射器みたいなアイテムが各社から出ていますので、それを使えばエアツールがなくても大丈夫です。
マスターシリンダー内のフルードを吸い取ってから、キャリパーのブリーダーボルトに接続して抜き取るという感じです。
フルードを抜いたら、ホースを固定してるクランプを外していくよ。ボルトの二面幅は8mm。
クランプ部分は2カ所あるよ。
次はブレーキマスターからホースを外すよ。二面幅12mmね。
キャリパー側も12mmで外そう。
ホースを外したらゴミが入るといけないので、こういう専用のフタをしておくと良いよ。
プロトではブレーキフルードストッパーセットとして販売してる。ホース交換だけじゃなく、キャリパーのメンテナンスとかする人にはぜひ。
ステンレスメッシュホースを装着する前に、SWAGE-LINE PRO付属の説明書に従って、クランプ位置をマーキングしておこう。これ大事。
SWAGE-LINE PROならではのこだわりとして、車種に合わせた最適な取り付け位置の数値を載せています。スイングアームの動きなども考慮して数値を出していますので、必ず説明書の数値にマーキングをして取り付けてください。
マーキング位置に合わせてクランプを締結していくよ。ノーマルホースはD型断面になってるけど、ステンレスメッシュホースは丸断面なので、そのままだと固定してもズレちゃうのよ。
そこで、SWAGE-LINE PROでは、クランプにしっかりと固定するためのパーツも同梱されてるよ。
SWAGE-LINE PROの取付は13mmで。取り付け時には、トルクレンチを使って規定トルクで締結しよう。トルク値は説明書にのってるよ。
あと、クランプ部の締め忘れがないように再度確認もしておいてね。
取り付けたら、ブリーダーボルトの付け根に8mmのメガネを取り付けてから簡単エア抜きツールを取り付けよう。矢印の方向にワンウェイなので、キャリパーから外に出る矢印方向で取り付けてね。
そしたらリザーバータンクに新品フルードを入れよう。こぼれない程度、8割くらい。
そしたら、あとはレンチを緩めて、ブレーキペダルを何度も押し込んでいくとどんどんフルードが出てくるので、気泡が出なくなるまで繰り返すだけ。
コチラも参考になるよ。
ちなみに、簡単ブレーキエア抜きツールがない場合はこんな感じ。
レンチを緩める→ブレーキペダルを押し込む→フルードが入っていく→レンチを締める→ブレーキペダルを戻す
これを1セットとして、気泡が出なくなるまで何度も繰り返すのね。
さらに繰り返していくと、泡がなくなるのでそしたらエア抜き完成。目安としてはこれくらいね。
これでリア側は完成。意外と簡単でしょ?
フロント側
ハンターカブのフロントブレーキでは、ホースがフロントマスターシリンダーから、タンク下のABSユニットに向かうよ。これがマスターからABSユニットに向かうホースね。
メインパイプカバーを外すと、黒い金属の四角いパーツにつながってるのがわかる。マスターシリンダーから。四角い部分までをSWAGE-LINE PROに置き換えるよ。
ちなみに、黒くて四角いパーツの先からつながるABSユニットはタンク下。見えないけど。
ABSユニットから戻ってきたホースがここ。
こちらも黒い金属のパーツにつながってる。ここから先をステンメッシュホースに交換するのだ。
さて作業開始。
まずはリザーバータンクのふたを開けるよ。
そしてリアと同じくブリーダーボルトから、フルードを抜こう。
フルードを抜いたらホースの取外し。フロントの場合は、黒い金属ブロックを外す必要があるので、フレアナットレンチで、画像で見てブロックの左側、配管になってる方を外そう。
外したらブロックの固定ボルトを8mmソケットで外そう。
こんな感じ。
マスターシリンダー側を12mmで外したら、慎重に抜くのだ。
次はキャリパー側。クランプ部は8mmソケットで。
クランプは2カ所ね。
そしたらフレーム左側にあるブロック部をさっきと同じように外そう。
で、キャリパー側も。工具は12mmね。
リア同様にマーキング。
リアの時も言いましたが、ホースの取付位置については必ず説明書の指定位置でお願いします。
特にフロントはサスのストロークやハンドルの切れ角などがありますので、適当に装着してしまうと干渉する可能性が高まります。
普通になんとなく装着すると、意外と干渉してしまうんですよ。
なるほど、雰囲気で適当に装着すると危険なんですね。
無事に外したら、SWAGE-LINE PROを取り付け。取り付け時には、トルクレンチを使って規定トルクでね。
ノーマルだと黒いブロックだったけど、SWAGE-LINE PROのはインゴットみたいでカッコイイ。
画像左側の黒い配管部分は、フレアナットレンチを使ってね。
キャリパー側も取り付けていこう。
ホースを取り付けたら、マーキング位置に合わせてクランプを固定していくよ。
純正の取付金具と、付属のパーツを組み合わせて締結。
センサーケーブルもまとめておこう。
最後にクランプ部とかの締め忘れがないか確認をしたら、取付完成。
あとはエア抜き。
フロントはホースが長いので、エアツールでエア抜きをします。
エアツールを使ってフルードを最後まで通したら、最終的にはブレーキレバーとレンチで最終のエア抜きを行って完成です。
完成
というわけで無事完成───。
クリアホースが遠目にもさりげないメカっぽさを演出してて最高にっかこいい───。
ブレーキタッチの向上はもちろんだけど、運転してて視界にステンレスメッシュホースとメカメカしいバンジョー部分が見えて、ものすごく気持ちいい。
まとめ
昔からカスタムの定番なだけあって、性能・スタイル両面でものすごい満足感。特にリアの操作感向上の効果は自分の場合はほんと絶大で、街乗りからツーリングまで、ものすごく楽になった。
あらゆる人にオススメよ。かっこいいし。
レポート:若林浩志