※本企画はHeritage&Legends 2023年11月号に掲載された記事を再編集したものです。
物理的ロックとの併用で重層的防御を実現!
バイクユーザーなら誰にとっても他人ごとではない盗難問題。警察庁の犯罪統計によれば、令和4年1〜12月の間に全国の警察が認知したバイク盗難件数は8000台あまりで、一日平均22台が被害に遭遇。検挙率が18.4%と低調なのも深刻だ。任意の自動車保険には盗難補償が選べるものもあるが、こだわりが詰まった旧車や絶版車、カスタム車となれば金銭的補償以上に心理的なダメージが大きい。
盗難防止に不可欠な自衛手段には、地面のアンカーにつなぐチェーンやU字ロック、警報音を発するアラームなどがあるが、IoT時代ならではの新世代グッズとして注目したいのがPOLARISS.NETだ。既存の盗難対策アイテムが「停車・駐車場所から移動されない」ことを目的としているのに対して、「停車中も移動された後も、常に位置情報を把握できる」というのが大きな違い。
名刺サイズ程度のコンパクトなPOLARISS.NETには、①GPS、みちびき、GLONASSの衛星信号を同時受信して常に正確な位置情報を把握する、②観測した位置情報を大手キャリアの通信網を利用してユーザーに知らせる、③ユーザー自身が直接POLARISS.NETを操作できる、という3つの特長がある。
GPSはカーナビやドライブレコーダーにも搭載されている一般的な技術だが、POLARISS.NETは自ら位置情報を発信できる通信機能を内蔵することで、万が一の盗難後にも愛車の居場所を追跡できるのが重要なポイント。同様の位置情報把握デバイスBluetoothを活用したGPSトラッカーもあるが、これは使用範囲が限定されている。
一方、NTTドコモ4GLTE通信網を使用するPOLARISS.NETは日本全国津々浦々まで電波が行き渡るので、人里離れた山中や輸出拠点となることが多い港湾地区でも正しく機能する。
セキュリティ企業が提供する同様のサービスの場合、位置情報の把握などは企業側が行うのが原則で、自宅から離れたガレージで盗難された際に認知が遅れ、結果的に位置情報の把握にタイムラグが生じる場合がある。
これに対してPOLARISS.NETは、ユーザー自身がスマートフォンの通信アプリ「LINE」で直接操作でき、異常発生時もスマホが知らせてくれるため、初動対応が重要な盗難に対して有効な手立てが打ちやすい。またGPSによって得られた位置情報や移動軌跡はリアルタイムにGoogle Map上に表示されるので、警察に捜査を要請する際にも強力な手がかりとなるはずだ。
さて、そんなPOLARISS.NETはインターネットやスマートフォンの普及がもたらしたIoT=Internet of Things時代ならではの盗難対策グッズだが、端末の破壊や遺棄のリスクもあり万能ではない。防犯にとっては物理的なロックや車体カバーといった視覚的なアピールも重要。盗難対策には重層的な防御が有効だから、ユーザー自身が愛車の行方を把握できる機能は効果的な一手となるはずだ。
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複数台で使い回しできるバッテリー内蔵のスタンドアローンタイプ
OWL-TY POLARISS.NET
●価格:本体 1万6500円/月額通信費 2178円/カモフラージュケース+電源コード 1万780円
●本体サイズ:約83×49×13.8mm ●電池容量:1500mAh ●位置情報:GPS/GLONASS/みちびき
▲OWL-TYがサービスを提供する「POLARISS.NET」は、日本の大手電気機器メーカー・京セラが製造した端末を使用する。内部バッテリーにより、一般的な使用条件で実働1カ月以上も作動することから、取り付け時の配線作業が不要で、車両間の移設も容易に行える。スマホとの通信には日本向けに最適化した。
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さりげなく搭載するためのカモフラージュケースもラインナップ!
▲POLARISS.NETが見つかってしまっては元も子もないので、バイク用部品のようなケース(右・画像はプロトタイプ)、取り外しが難しい場所に設置した際の充電用コード(下)をオプション設定。上記通り、内部バッテリーが1カ月以上持続するから、常時接続しても車両側の負担は小さい。
誰もが利用するLINEで操作ユーザビリティも良好だ
▲GPSによる監視範囲「ジオフェンス」の設定や監視開始と監視解除などすべての操作は、スマートフォンのLINEにインストールしたソフトで行う(上および下右の写真)。
▲自宅や出先、自走やトラックによる運搬によらず、愛車がジオフェンス外に動くと即座にLINEに通知されて異常を把握できる(写真、中)。移動中の軌跡はGoogleMap上に記録されるから、万一の盗難後の追跡ができて、捜査依頼時の具体性が大きく向上するのが既存の盗難対策用品との最大の違いなのだ(左)。
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設置場所は自由自在だが、見つかりづらい場所ならなお良し!
▲配線作業が不要で、シート下部や車載工具トレイなどどこにでも収まるのがスタンドアローンタイプ(独立型)の利点だ。一方で、POLARISS.NETの搭載を警戒する窃盗団対策のためには、なるべく見つかりづらい場所に設置することが重要になる。ガソリンタンクとエンジンの隙間やカウルの内側、シート下に置く場合はカモフラージュケースを併用するといいだろう。