アップデートに加え体制も強化! 20年ぶり未勝利からの復活を狙う
2月1日から3日にかけて行われたシェイクダウンテストに参加したMonster Energy Yamaha MotoGP。プレシーズンテストを前に今季のマシンカラーリングを公開した。
今季のYZR-M1のカラーリングは2023年のものを踏襲した青と黒の配色で大きな変化はなし。2019年からタイトルスポンサーとなっているエナジードリンクメーカー「モンスターエナジー」のロゴが大きくペイントされている。
2023年シーズンはヤマハにとって厳しい1年だった。最高峰クラスでは20年ぶりの未勝利に終わり、2021年のチャンピオンであるファビオ・クアルタラロですら3回の3位表彰台にとどまり、タイトル争いどころか、優勝争いにすら食い込むことができなかった。
2023年の大不振を受け、ヤマハは2024年から新たに導入されるコンセッション(優遇措置)の受けることになった。
ライバル勢に比べ、開発やテストの実施回数が優遇される。プレシーズンテストの直前に行われたシェイクダウンテストは本来テストライダーやルーキーライダーのために用意されたテストだが、コンセッションの恩恵を受けているMonster Energy Yamaha MotoGPとレギュラーライダーの2名もテストに参加。新しいシャシーや空力パーツのテストを行った。
また、Monster Energy Yamaha MotoGPは後述するライダーラインナップの変更だけでなく、復活に向けて体制強化に努めている。
2023年、圧倒的な強さを見せ、2年連続で3冠を達成したドゥカティ。そのドゥカティからマルコ・ニコトラとマッシモ・バルトリーニの2名を引き抜き、巻き返しを図る。
ドゥカティのエンジニアだったバルトリーニは、今季はヤマハに移りテクニカルディレクターに就任。ニコトラは数値流体力学の専門家で、ドゥカティに加入する前はF1で5年間働いていた経歴を持つ。ドゥカティ躍進の要因の一つである空力部門で活躍したニコトラの加入は、ヤマハにとって強力なサポートになるだろう。
エースであるクアルタラロを繋ぎ止めるために早急な改善が求められるヤマハ。今回の体制強化、そして優遇措置の恩恵を受けて躍進を狙う。
ホンダからA.リンスが移籍! F.クアルタラロと強力なラインナップに
なんとしても優勝争いに加わりたいヤマハはライダーラインナップを変更。エースであるファビオ・クアルタラロに加え、ホンダからアレックス・リンスが移籍した。
ヤマハのワークスチームであるMonster Energy Yamaha MotoGPに移籍した初年度でチャンピオンに輝いたクアルタラロ。他を寄せ付けない圧倒的な速さを誇るクアルタラロとヤマハの組み合わせは一躍GP界を席巻したが、ディフェンディングチャンピオンとして挑んだ2022年はドゥカティのフランチェスコ・バニャイアに競り負けチャンピオンを奪われた。
以降はマシンのポテンシャル不足に苦しめられ優勝争いに加わることができておらず、苦しい戦いが続いている。ライバル勢に直線で差をつけられているヤマハに対し、クアルタラロは直線スピードの改善を常に訴えてきた。しかし、ストレートスピードを伸ばすことで、ヤマハの持ち味であるコーナリング特性が失われ、武器を失ったヤマハは下位でレースを終えることが多くなっていた。
クアルタラロの契約は2024年までとなっている。エースであるチャンピオンであるクアルタラロの残留のためには、今年の好成績が必要不可欠。クアルタラロとヤマハ、両者にとって2022年ドイツGPが最後の優勝となっている。2021年にMotoGPを席巻したタッグが復活できるのかに注目だ。
そんなエース・クアルタラロの相棒を務めるのが今季ヤマハに移籍したアレックス・リンスだ。2017年の最高峰クラスデビュー以降、2022年までスズキのエースとして活躍してきたリンスは、スズキのMotoGP撤退を受けホンダに移籍。ヤマハ同様、苦戦を強いられていたホンダからの参戦ということもあり、厳しい1年を送ったリンスだが、第3戦アメリカズGPでは優勝するなど持ち前の速さを見せてくれた。
ハマった時の速さは手のつけられないリンスの走り。2023年の優勝のみならず、スズキのラストレースだった2022年の最終戦バレンシアGPでの優勝など、記録にも記憶にも残る印象的なレースで魅せてくれるのもリンスの魅力だ。
成績にばらつきがあるのがリンスの改善点の一つだが、今季は2022年以来のワークスチームからの参戦。強力なバックアップを受けてヤマハを上昇軍団に引き上げることができるのだろうか。
シェイクダウンテスト、そして現在行われているプレシーズンテストではクアルタラロ、リンスとも24年型YZR-M1に一定の評価を下している。
やはりエンジン面ではまだライバル勢に劣っているという見解だったというが、加速、そしてコーナリングの両面において重要なのが空力だ。
無理にエンジンパワーを上げるのではなく、空力デバイスによる解決方法が適しているのではないかと思うが、2024年は空力部門でも体制強化が図られている。
開幕戦は直線スピードがものを言うロサイル・サーキット(カタール)ということもあり、ヤマハにとっては厳しいスタートになるかもしれない。そんな中でも持ち前のコーナリング性能を活かせるサーキットでは確実に勝ちたいところ。
強力なラインナップなだけに今季のヤマハには2022年以来の優勝、そして欧州勢に一矢報いてもらいたいものだ。
レポート:河村大志