文:丸山淳大、石神邦比古/写真:関野 温
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【Q&A】ブレーキディスクに関する9の質問・疑問
Q.1 ブレーキディスクにはどんな種類あるの?
A.1 ソリッドとフローティングの2種類があります
ブレーキパッドと接するアウターと、ホイールに固定されるインナーに分かれ、両者が専用のピンで締結される2ピース構造になっているのが「フローティングディスク」。一枚板のワンピース構造のものを「ソリッドディスク」と呼んでいる。ブレーキディスクをフローティング構造にする最大の理由が熱対策だ。制動時の熱で発生するアウターの膨張や歪みを許容するだけのクリアランスを設けるのが目的である。
[フローティングディスク]
スポーツモデルを中心に主流となっているフローティングディスク。サンスター製のディスクはアウターとインナーの締結部にEクリップが使われており、分解、部品交換が可能。一方、純正のフローティングディスクはピン部が非分解となっている。
制動による力を面で受け止めることでインナーの摩耗を抑えるエプタステージ0の締結部分(下写真)。ディスクの進化は続いている。
[ソリッドディスク]
ステンレス一枚板構造のソリッドディスクは、小排気量車やリアディスクなどに採用例が多い。コストに優れるが、熱による歪みが発生しやすい。リアブレーキは走行風が当たりづらいので熱的に非常に厳しい環境下にある。
[リベットカシメツーピースタイプディスク]
1970年代の旧車では、アウターとインナーの2ピース構造となっているが両者が動かないようにガッチリとリベットで固定されているタイプのものも存在し「リベットカシメ」と呼称されている。カワサキZ1用などがこれに当たる。
Q.2 ブレーキディスクを交換すると効きが良くなるってホント?
A.2 材質や形状の違い、熱容量の向上などにより効きが向上します
実際に体感したレビューを述べると、交換してすぐに明確な違いが実感できた。初期制動から確実に減速し、レバーを握り込むほどに効力が増してくる。効きだけでなく、コントロール性も確実に良くなっており、思ったままに減速ができてしまうのだ。バイクを操る喜びはコーナーリングや加速感こそすべてと信じて疑わなかったが、実はブレーキングもこんなに楽しいものだったのかと初めて感じることができた!
重量の比較
アウターがステンレスでインナーがアルミ製なのは純正ディスクも同じだが、左の「Works Expad」は0.23kg軽くなった。バネ下重量も低減するし、ドレスアップ性も高い。さらに、ブレーキフィールも効きも大きく向上したのだ。
[Works Expand]
[純正品]
ブレーキパッドも同時に交換‼
今回使用したブレーキパッドはデイトナのゴールデンパッドX。新品ブレーキディスクとの組み合わせで制動力は倍以上も向上した!(石神)
愛車「FZR750」の課題のひとつがブレーキでした。特に効かないこともなかったので「古いバイクだからこんなものか」と諦めていましたが、今回ブレーキディスクを換装したことでブレーキング性能が激変。制動力が上がったことが確実に体感でき、何よりコントロール性が格段に向上しました! 同時にブレーキパッドも交換すると以前のバイクとは全く別物に。現行のツーリングバイクに負けないブレーキング性能を発揮でき、ライディングがより楽しくなりました!
Q.3 フローティングディスクの種類を教えて
A.3 フルフローティングとセミフローティングに大別される
レースの世界では時にアウターディスクが500℃以上の高温となることもあり、大きく熱膨張する。それを許容するため冷間時にはアウターとインナーがカチャカチャ動くほどの大きなクリアランスが設けられているのが「フルフローティング」だ。一方のセミフローティングはピン部のウェーブワッシャーにより、インナーとアウターのガタが制限される。フルフローティングよりクリアランスは少ないが、ピン部分の摩耗が少ない。
[フルフローティング]
[セミフローティング]
Q.4 ブレーキディスクのホールやスリット、ウエーブ形状は何のため?
A.4 放熱性の向上とパッド表面をクリーンに保つため
アウターに開けられた穴が「ホール」、掘られた溝が「スリット」、外周が波型形状になったディスクが「ウェーブ」と呼ばれている。これらは放熱性の向上や軽量化だけでなく、制動時にパッド表面を清掃し、効きを安定させる役目を果たしている。特にブレーキシステムの限界性能が問われるレースシーンでは大きな効果を発揮するが、公道メインの使用であればデザイン優先でブレーキディスクを選んでもまず問題はない。