文:横田和彦、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
カワサキ「Ninja e-1」インプレ(横田和彦)
ついに登場した電動スポーツは未体験の走行フィーリング!
一見、普通のミドル・ニンジャだが、マフラーがなくリアまわりがスッキリしている。これは量産車初のEV(電動)スポーツバイクなのだ。軽量・高剛性のトレリスフレームにブラシレスモーターを装備し、エンジンのシリンダーにあたる部分に最大の重量物であるリチウムイオンバッテリーを2個搭載。ガソリンタンクにあたる部分のカバーを開くことでアクセスすることができ、バッテリー残量も細かく確認できる。
メインキーをオンにするとメーターが点灯。ここからの操作はEV独自のものになる。サイドスタンドを上げてキルスイッチ部にある「Drive Ready」ボタンを押すとギアポジションインジケーターがD表示に。そこでアクセルを開けると無音のままスルスルスルッと走り始めるのだ。
モーターは回転しはじめから100%のトルクを発生させるためスタートダッシュはなかなか力強い。スタンダードの「ROAD」モードだと体感的には125ccのスクーターより少し速いくらいだろうか。そのままギアチェンジせず超スムーズに車速がどこまでも伸びていく感覚は、ガソリンエンジンでは体感できないもの。アクセル操作に対するトルクの立ち上がりもリニアで爽快なフィーリングだ。
そしてニンジャe-1にはEVならではの特別な機能「e-boost」が搭載されている。ハンドル右のボタンを押している間パワーアップするという、まるでゲームのようなメカニズムだ。全域でパワーアップするので、ゼロ発進ではより力強くダッシュ。幹線道路でも交通の流れを余裕でリードでき、ワインディングで使うとコーナーリングスピードや立ち上がり加速が向上する。かなり面白い機能だといえよう。
ただし「e-boost」の使用時間は最大15秒。しばらく通常モードで走っていると徐々にゲージが回復していき、フルになると再び15秒間使えるという仕組みなのだが、多用するとバッテリーの消費量は確実に増えてしまう。パワフルでキレのある走りと航続距離のどちらを選ぶかという判断が必要になる。
ちなみに節電できる「ECOモード」ではかなりパワーダウンする。加速力も落ちるので正直、実用性は低いといわざるを得ない。ただし「ECOモード+e-boost」ならば交通の流れに乗ることも可能。上手く使えば航続距離を稼ぐことができそうだと感じた。
ニンジャと同等の車体や足まわりを使っているので、バイクとしてのバランスは優れていて挙動も自然。一般的なバイクに乗っている人であれば違和感なくライディングできるであろう。そうなるとネックはやはり航続距離だ。現在のフル充電で約50kmだと使用用途がかなり限られてしまう。とはいえこの分野のバッテリーは日進月歩で進化しているし、街中の充電設備といったインフラの整備も進んでいる。それを考えると数年後には大きく化けるかも知れない。
ニンジャe-1の走りにはエンジンでは得られない独特の爽快感がある。アクセル操作だけで延々と生み出され続けるクリアでスムーズなパワー感は、未来への可能性を感じさせてくれるもの。これが主流になる世界も悪くないと感じさせてくれる存在だった。
Z e-1
ニンジャe-1と同時発売されたのがネイキッドのZ e-1。車重はニンジャより5kg軽く、クイックなハンドリングが楽しめる。
補助金を使えばe-1がグッと身近になる?
このニンジャe-1とZ e-1は、次世代自動車振興センターの補助金(CEV補助金)対象車。東京都に住民票がある人の場合、2023年12月8日現在、CEV補助金が12万円、東京都電動バイク普及促進事業補助金が46万円となり、計58万円の交付を受けることができ、実質的な購入価格がガソリンエンジン搭載の125ccスポーツにかなり近いものになる。このほか、独自に補助金制度を適用している自治体もあるので、詳細は各地方自治体に確認してみよう。