文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸、島村栄二
BMW「R 12 nineT」インプレ(宮崎敬一郎)
上質な仕上げで美しく走りも楽しい魅惑の1台
このR12 nineTは様々なカスタムテイストが魅力のネオクラシック「ヘリテイジ」ファミリーに加わったニューモデル。その名の通り、R nineTの後継モデルで、オマージュしているのは往年の名車・R90だ。
仕上げは上質で、美しく造形されたホンモノのアルミタンクを装備し、ノスタルジックなスポークホイールを採用している。そのタイヤサイズ選択も最新のスポーツバイクの定番だ。フロントフォークはフルアジャスタブルだし、リアショックもプリロードと伸び減衰が調整可能となっている。
しかも、このバイクの魅力は美しいルックスだけでなく、走っても結構面白いのだ。
空油冷のDOHCボクサーエンジンは基本的に前モデルを踏襲。R12も同じユニットを搭載するが、その味付けは異なっており、こちらのnineTは109PSを発揮。R12より14PSも強力だ。ライディングモードもパワフルに応答する「ダイナミック」、万能性に富んだ「ロード」に穏やかな「レイン」がセレクトできるようになっている。
「ダイナミック」と「ロード」モードはどちらも非常に従順な上に、レスポンスタッチにもそんなに大きな差がない。違いがあるとすれば、ダイナミックモードで5000回転以上回した時の力強くダイレクトな応答性。それもワイドオープンした時だけ違う。
さすがにダイナミックモードは強烈なのだ。8000回転強まで素直に力強く吹け上がるが、常用域ではロードモードとあまり変わらない。この特性で、どちらも街中から峠道でのスポーティな走りまで、ストレスなく使える。これはダイナミックモードの中回転域での味付けがマイルドに設定されているから。
車体全体の構成は、基本的にサーキットでスポーツライディングを堪能するようなコーディネイトではない。例えば、スポーティな走りで言うと、R1250RやRSよりもはるかに雰囲気優先。峠身での快活な走りを気楽に愉しむのが正しい。
取り回しを重んじるファミリーなのか、サスの動きを抑え気味にすることで乗り心地は幾分硬めだったりするが、そのストロークが許容するところまでの衝撃吸収力はかなり優秀。良路では快適な上に、高荷重のかかるスポーティな走りでのスタビリティもかなりいい。
ハンドリングも素直なので、クイックな峠道からそこそこの高速コーナーでもナチュラルな応答をする。ひとつ間違うと大変なことになる、カリカリのスポーツモデルではないから、いろいろ調整できるサスをイジりながらその変化を平和に楽しむのもいい。
とはいえ、このR12 nineT、カタチだけのファンバイクと括ってしまうのは少し乱暴だ。姿だけでなく、乗り手の「走りゴコロ」に応える素直な走りや、その気になれば元気に応答するエンジンなども持っている。節度をもってスポーツするには丁度いい走りも魅力と言っていいだろう。