文:丸山淳大/写真:関野 温
クロスカブ110に電装パーツを装着
なんでもやります! 教えます! こちら新橋モーター商会
皆様はじめまして。フリーライターの丸山と申します。前職ではバイクメンテ専門誌という超絶ニッチな雑誌の製作に約10年も携わり、しっかり潰しの効かないおじさんに仕上がったところで、事情によりフリーランスとなりました。
今回、わけのよくわからぬまま「作業ツナギ着用の上、某所に来い」とハチ黒さんに指令を受け「お前はバイク屋、俺は客だ! 」などと、無茶苦茶な言動に押し切られて、結局ハチ黒さんの旧車コレクションを整備するという職を与えられました。
ハチ黒って名前からしてブラック労働の臭いがするのですが、無職とフリーランスのボーダーを往く限界フリーライターの身の上にNOはありません。まな板の上の ''マル'' として頑張っていく所存です!
さて、今回のお題である電装パーツ取り付けですが、キモは電源の確保です。ここで取り付ける「無線充電機能付きスマホホルダー」と「グリップヒーター」は、プラスとマイナスの2本の配線だけ車体から取れば良いわけで、あまり難しく考える必要はありません。ただし、プラス線はバイクの「アクセサリー電源」から取るのが重要なポイントです。
バイクの電気の流れを確認しよう
アクセサリー電源とボディアースとは!?
バイクの電装は車種や年式で様々な違いはあるが、主流となるのが上の図の方式。エンジンに固定されたステーターコイルの外周をクランクシャフト直結のフライホイールが回転することで、コイルに交流電気が発生。
それをレクチファイヤで交流から直流に変換、レギュレーターで電圧を12Vの一定値に調整してバッテリーを充電している。そのバッテリーから灯火類やセルモーターなどの電装品、点火のための電力が供給されている(発電した交流電気でヘッドライトや点火を行う機種もあり)。
エンジンがかかってさえいれば、常に発電が行われているので、バッテリーが上がる心配はない。しかし、逆にエンジンが停止している状態でバッテリー電力を消費すれば、それはバッテリー上がりを招く。
つまり、エンジンがかかっている状態で使用する電装パーツのプラス(+)の電源は、バッテリーから直で取るのではなく、メインキーONと連動して電気が流れるアクセサリー配線から確保する必要があるのだ。
【オートバイ電装の基礎知識】
電装パーツはアクセサリー電源に繋ぐのが基本
アクセサリー線とは車体メインスイッチをONにすると電気が流れ、OFFにすると電気が流れないプラスの線。これを後付け電装パーツの電源にするのが基本。
メインキーから出るアクセサリー線から分岐させるのが確実だが、それだと配線処理が大掛かりになるので、車体各電装品に繋がる線から分岐させて確保するのが作業効率的に正解だ。
一方のマイナス(−)はボディに落とす(つなげる)のが基本となる。バイクやクルマの電装では、車体をマイナスの電気の通り道として使っており、これを「ボディアース」と呼んでいる。
バッテリー端子をマイナスから先に外す理由は、このボディアースによるもの。プラスから先に外した場合、端子を緩めるドライバーが誤って車体に触れると、そこでプラスとマイナスが直接つながることになり、ショートしてしまうからだ。
ただし、ボディのどこでもアースが取れるということではなく、塗装部品は塗膜で絶縁されているし、ラバーマウントされた部品には電気が流れないので、アースを取ることはできない。
配線加工に使用する工具と部品を5つ紹介
電装パーツの取り付けには、一般的なハンドツールとは異なる専用工具や部材が必要となる。以下で紹介するものを揃えておけば、基本的な電装パーツの取り付けやメンテに困ることは無いだろう。
すべてバイク用品店やホームセンターで手に入る。見えない電気を可視化するためのテスターは、簡易な検電ペンタイプでも事足りる。
配線加工が簡単なおすすめアイテム
1.デイトナ「ワイヤレスチャージャー スマートフォンホルダー +e」
ケーブルとサヨナラ! 置くだけ充電マウント
スマートフォンのワイヤレスチャージャーとスマホマウントが一体となった電装アイテム。スマホがワイヤレス充電「Qi」に対応していることが条件となるが、マウントに固定したら即充電の手軽さは最高だし、ハンドルまわりがスッキリするしで、良いことづくめ。スマホマウントは、ハンドル固定タイプで、首振りと360度回転できて、見やすい位置に固定でる。
肝心の装着に関しては非常に簡単。ブレーキスイッチからアクセサリー電源を確保する配線と、ボディアースを取るための配線が同梱されており、電工ペンチやギボシなども基本的には必要なし! ただし、配線の長さを車体に合わせたりと、よりスマートな装着を目指すなら配線加工が必要となる。
プラス電源を取るブレーキスイッチは本体を設置するハンドルと一緒に動くので、配線をどこかに挟み込んだりする心配もなく、配線の取り回しにあれこれ頭を悩ます心配もなかった。
一方のマイナスはブレーキパイプをフレームに固定するボルトにクワ型端子と共締めにして確保した。車体側配線を無加工で装着できる配線が付属しているので、DIYでも簡単にできる。
面倒な配線加工は必要なし! 付属のギボシ端子付き配線をブレーキスイッチに接続するだけでOK!
2.キジマ「GH08 グリップヒーター」
配線の取り回しに気を使いたい!
ひと昔前のグリップヒーターと言えば、グリップが不自然なほど太くなってしまい、操作に違和感が出ることも多かったが、近年では純正グリップとそれほど変わらない太さのものが多くなってきた。
キジマのGH08は、ウインターグローブでも握りやすいスリムタイプで、操作性は純正グリップとそん色なし。3種のグリップ長が用意されており、装着できる車種も非常に幅広い。
真冬でもしっかり暖かい発熱能力を発揮するが、最大消費電力は34.8Wとなり、小排気量車のヘッドライト分ぐらいの負荷となるので発電量の少ない小排気量車は注意が必要。
取り付けに関しては、車体アクセサリー電源を確保する必要があるが、サービスコネクターのある車両の場合、別途カプラー接続の電源取り出しハーネスを用意すれば、作業難易度は普通レベル。
ただし、ハンドルは左右に動くし、スロットル側グリップは回転するので、グリップヒーター全般、配線の取り回しには注意が必要。
電源取り出しハーネスを使ってオス側ギボシ端子を取り付ければOK! でも配線の取り回しに工夫が必要!
【オートバイ電装の基礎知識】
なぜギボシにはオスとメスがあるのか?
車体側プラスの配線は、ギボシ端子がすべてカバーで覆われるメスギボシを使用すれば、万が一ギボシが車体に触れてもショートしない。
一方、車体マイナス配線はオスギボシにしておけば、配線のプラスとマイナスを間違えて繋ぐ作業ミスを防ぐことができる。
3.デイトナ「HOT GRIP 巻きタイプEASY」
何もいじらなくて良し! 巻くだけでホットなグリップ誕生
一方、一切面倒な作業はしたくないけど、手だけは温めたい! というわがままライダーは、USBから電源を取るデイトナのホットグリップ巻きタイプがおすすめ。
その名のとおり、グリップに巻いてUSBを差し込むだけなので、出先でちょっと手元を温めたい時にも気軽にさっと装着できちゃうのが魅力。
USBに差し込むだけの簡単グリップヒーター!
文:丸山淳大/写真:関野 温